スクリーンショット_2020-02-21_18

No.79 『ロイヤルHD』 業績予想に見る優れたリスク対応力

新型コロナウイルス感染症の影響を業績予想に織り込む企業を初めて見た。2月18日に決算説明会を開いたロイヤルホールディングス(HD)である。2020年12月期の業績見通しは売上高1,390億円(前年比▲1%)、営業利益40億円(同▲14%)。このうち、現時点で想定しうるマイナスインパクトとして売上高で22億円、営業利益で11億円をそれぞれ織り込んでいる。

スクリーンショット 2020-02-21 20.00.51

ロイヤルHDの主な事業別の売上高構成比は、外食事業42%、ホテル事業(リッチモンドホテル)20%、機内食事業6%、コントラクト事業(空港・高速道路、事業所内レストランなど)23%。ロイヤルと言えば、それこそ『ロイヤルホスト』を始め、『天丼てんや』や『シズラー』など外食企業のイメージが強いが、実際には外食レストラン以外で売上高の過半を稼ぎ出す構造となっている。このうち、インバウンド需要に収益が左右されやすいホテルや機内食、空港レストランを中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大による客数の減少は避けられないと見ているようだ。

なぜ、売上高で22億円、営業利益で11億円のマイナスなのか。前提条件が気になるだろう。会社側ではSARSの影響が半年に及んだことを参考にしたようだ。東京オリンピックまでには収束すると想定している。ただし、事業別の影響度合いについては具体的に言及されなかった。

ロイヤルHDの判断には賛否が分かれるかもしれない。先行きの不透明感が非常に強い中で、定量的なリスクを業績予想に敢えて織り込む姿勢をポジティブに捉える意見もあれば、前提条件に関する具体的な開示がなければ、そもそもリスクの妥当性を評価することができないとのネガティブな声も聞かれるだろう。ただ、株式市場にとって今や最大の関心事と言える新型コロナウイルスのリスクを、期初の段階で業績予想に反映したロイヤルHDの対応は評価できると個人的には考えている。マイナスのインパクトを敢えて織り込むことにより、マネジメントの危機意識を社内外に表明することになるし、業績の下振れリスクに対してスピード感のある打ち手を講じることができるのではないかと思うからだ。

新型コロナウイルスはあくまで外部要因であるが、ロイヤルHD固有の主な課題と言えば外食事業の収益力の改善だろう。特に『てんや』が同社にとっては悩みの種と言っていい。外食事業の2019年12月期の業績は売上高626億円(前年比+1%)、経常利益24億円(同▲14%)。『ロイヤルホスト』は増益を確保したが、『てんや』の赤字転落がなにより痛い。他のファストフード業態との競合や中食の拡大、人件費や材料費の上昇などが損益悪化の要因としている。

ただ、これらは何も『てんや』に限ったマイナス要因ではないだろう。多かれ少なかれ『ロイヤルホスト』も影響を受けているに違いない。にもかかわらず、『てんや』の苦戦が相対的に鮮明なのは、あっさりと言えば他社と差別化できていないからではないかと思う。そもそも、料理の質に割とこだわりたいロイヤルHDの注力業態として、早さや安さが求められやすい『てんや』が果たして相応しいのかどうか疑問に感じるのだがどうだろう。

業績予想に見られるリスク対応力は、外食事業における業態の選択と集中にも応用されるべきではないかと思う。



無名の文章を読んでいただきありがとうございます。面白いと感じてサポートいただけたらとても幸いです。書き続ける糧にもなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。