見出し画像

読書記録002「リアルワールド」桐野夏生

ミミズと呼ばれる男子高校生による母親殺しを中心に、四人の女子高生が関わって、巻き込まれていく。巻末の解説にある精神分析医である斉藤環が、桐野夏生の作品を『関係文学』と称しているのだが、まったくもってキャラ設定と全体の場面設定にこの作品の妙が息づいている。トシ、ユウザン、きらりん、テラウチという仲良し女子高生。それにミミズという異端者が割り込んでいくことで、彼女たちの日常の顔ではない裏の側面が見えてくる。女の子も、はしゃいでいないときだってある。ほかの女の子が疑わしく見えるときもある。嫉妬と羨望、そして孤独。それぞれの女の子にキャラ付けがなされている、ということや、ミミズが警察から逃げていくことの時間の経過とともに、女の子のエピソードが深められる。そういった骨子のしっかりした構成だからであるか、桐野夏生の本をはじめて読んだからか分からないが、リーダヴィリティが非常に高かった。どのキャラも考えてることは浅くて読むに堪えないものだが、逆にその「浅さ」がリアリティをかもしている節もある。とにかくお勧めするわけではないが、読みやすさをうまく活用した本と言うことは言える。高校生の女の子が読んだらもっとリアルに感じられるのかもしれない。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?