義祖父(88)と義父(64)と私(35)で一緒に仲良く温泉に入ったお話。
カレンダーに予定を書き込んだときは、まだ夏になりかけの頃だった。時が経つのは、早いものでもう紅葉の季節になりかけている。
嫁側の祖父が88歳になるというので、米寿のお祝いにみんなで福井のあわら温泉に行こうということになった。
参加者は、以下の通り。
義祖父(88)義祖母(87)
義父(64)義母(60)
私(35)嫁(35)長女(3)次女(1)
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16時頃旅館に到着し、皆でゾロゾロと部屋に移動する。ドサっと荷物を置き、少しばかり腰を下ろす。「どれどれ?いい部屋ですな〜」「ふへぇー。。。運転疲れたー。。。」の時間を過ごす。
とはいえ、18時の夕食までに温泉に入りに行かねばと、各々お風呂に行く準備を整える。
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今回の部屋は大部屋だ。どかっと12〜15畳くらいの和室、その横に祖父母用のベッドが2台置いてあるお部屋。
鍵は2つ。男性陣、女性陣で一つずつ管理することになった。
というわけで、おじいちゃん、お義父さんと一緒に大浴場に行く。こんな機会そうそうない。どんな感じになるのだろうと不安もありつつ、仲良く移動。
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部屋から大浴場に行く途中、義父(64)が口を開く。
おじいちゃん、明らかに不安な顔になった。「ワシでええんか?」とは言えず、「お、おおぅ。。。。」と戸惑いながら答える。
おじいちゃん、元気は元気だ。しかし、あくまで88歳である。大浴場から部屋に無事戻れるかどうかは、未知数である。鍵の管理は荷が重い。
脱衣場に着く。
お義父さんは、マイペースにサッサとお風呂へ行ってしまった。このタイミングで、おじいちゃんに一言かけて、鍵を渡してもらう。ひとまず一安心。少なくとも部屋に帰れそうだ。
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ワイは、おじいちゃんにペースを合わせノロノロと脱衣。スッポンポンになったおじいちゃんと一緒にお風呂に行く。
一緒に、と言っても、並んでいくわけではない。おじいちゃんにもプライドがある。ピッタシと横について、介護っぽくなるのは、嫌だろう。自分のペースでお風呂を楽しみたいだろう。
なので、ボクは、そっとおじいちゃんの背中をとり、お風呂に入室。シャワーもおじいちゃんのところから2つくらい空けた場所に陣取る。
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その間、お義父さんは、瞼を閉じ、あぐらをかいて大風呂にドップリとつかっていた。さながら修行僧である。全身全霊を持って温泉と向き合い、温泉から湧き出る全ての栄養持って帰ってやるとばかり貪欲に温泉を感じていた。
マイペースなのは、ご愛嬌なので何とも思わないが、旅先でも自分のスタイルを貫き通すところ、さすがお義父さんだなぁ。。。と天晴感心である。
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もちろんボクには、自分がゆっくりお風呂を楽しむよりも大事なミッションがある。おじいちゃんが無事、何事もなく、温泉を楽しむのを見届け、一緒に部屋に帰るというミッションである。
入室と同時に気づいた。床が思ったよりもツルツルだ。実際、知らないおっさんが露天から内風呂に帰ってくる際、ド派手にすってんころりんしていた。その様子を見たボクは戦々恐々である。
おっさんだから、笑い話で済んだ。しかし、おじいちゃん(88)がすってんころりんしてしまうとそんなことでは済まない。常に死と隣り合わせ、恐怖の大浴場である。
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かくして、ワイは、おじいちゃんを常に横目で見守りつつ、何かあればすぐに駆けつけられるような距離感を保ちつつ、たまにお義父さんの動向に心の中でツッコミを入れながら、温泉を楽しんだ。
おじいちゃんが大浴場から出るとき、ぼくも一緒に出た。いかにも偶然出るタイミングが一緒だったかのように装って、脱衣所に戻った。
お義父さんは、すでに着替え終わっており、先に部屋に戻っていった。部屋の鍵はボクが持ってるから、入れないのになぁと思ったが、声はかけなかった。
その後、おじいちゃんと一緒にゆっくりと部屋に戻った。少しのぼせたのか、おじいちゃんは、ポケ〜っとしていた。大丈夫かと心配になったが、ちゃんと受け答えできてたので大丈夫そうだ。
部屋階のエレベーターを降りたところでお義父さんに会った。お義父さんは、エレベーター前のベンチに座り、一足先に缶ビールを飲んでいた。
・こぼれ話
いやはや、いい思い出が作れました。おじいちゃんはもちろん、家族みんなが楽しそうで、素敵旅でした。53年後、自分が88になったときに、自分の娘たちに米寿のお祝いをしてもらえるようになりたい。
その前にまず来年、おばあちゃん。
次、23年後、お義父さん。
その次、28年後は、お義母さん。
皆、元気に米寿を迎えたいなと思いました。
・最後に一曲
最後までお読みいただき、ありがとうございます!サポートしていただいたお金はビールかスーパーカップかおむつ代に使わせていただきます。 これからもゆるく頑張らせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。