タクシーと御所梅椿とラブホテル。
昨日、朝の話。
嫁がチャリンコの鍵を仕事場に持っていってしまった。それに気づいた瞬間、曇天を仰ぎ、ジーザスとつぶやいた。
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朝のバタバタを乗り越え、あとは娘2人をチャリンコに乗せて、鼻歌でも歌いながら保育園に向かうだけだった。
行こうとしたら、鍵がねぇ。
くそう、チャリンコが使えない。
・・・ま、仕方ねぇ。
幸い時間の余裕はある。
それほど今日の時間配分は理想に近かった。
気持ちを切り替えてタクシーで保育園行く。
鍵が手元にあるか、確認のLINEを嫁にいれる。
四条通りに出て、タクシーを捕まえる。
娘たちは、思いがけぬ非日常に少し楽しそうだ。
僕自身、今はちょっと楽しい。
無事、保育園に娘たちを送り出した。
ミッションクリア。
これは、これでネタになった。
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その後、徒歩で会社に向かう。
たまにはゆっくり御所の中を歩くもよし。
昨晩の雨は深夜のうちに止んだみたい。大きい水溜まりもなく、ひかる砂利の上をじゃっじゃと歩いていく。
雨と雨の隙間時間、見上げると、一面真っ白な空。
雨雲レーダーを見なくともわかる。
おそらく、まだ雨は降らない。
ひんやりと涼しく、冷や気持ちいい空気だ。「ええ感じに寒いなぁ」と「寒い」の間くらいの温度を感じながら歩く。
いつもの景色をゆっくりと楽しむ。不思議なものでスピードが変わるだけで見えているものは同じでも感じ方が違ってくる。
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松林の緑を背景に、最近咲いた紅梅の赤や白梅の白が綺麗に映えている。
朝早起きをした真面目な観光客が、スマホで景色を撮っては、スマホで確認している。要するに景色を見ているというより、スマホを見ている。
はい。脳内とはいえ、余計な口出し、余計なお節介をしてすみませんって気持ち。
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最近できた新しいトイレの横に椿の木が2本。枝に咲いている椿と枝から落ちて影になっている椿では色味が違う。
枝に止まっている椿は、初々しく可愛げのある赤色だ。葉っぱのギンギンが多少のギラつきを出してはいるが、決してウザくはない。これはこれで美しく、綺麗だ。
落ちている椿は、大人の柔らかさがある。連日の雨で濡れた花びらは、光沢があり、艶っぽい。色気があり、どこか悲しげで妖艶にうつる。これもこれで美しく、綺麗だ。
これ。
どこかで見たことがある色だ。
あぁ、初めていったラブホテルの天井か。
いや、あれは天井が鏡のタイプだった。
だとすると、ぐしゃぐしゃになったテロテロのベッドシーツの色か。
なるほど、初めていったラブホテルの思い出は、濡れ落ちた椿色だったのか。
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静寂の御所を抜ける。
朝の烏丸通りを走る車の忙しい音が一気に現実に引き戻してくれる。
さて。
仕事仕事。
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