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白庭ヨウと

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今の私を作った素敵な人々事々について書きました。かなり私的な記事なので気になった方のみご覧ください。
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2020年3月の記事一覧

等式をこぼれるもの

等式をこぼれるもの

前置き SNSに友人と楽しそうに写る彼女を見て、楽しそうだなと思うときと私は彼女にいろいろと背負わせてしまったのかもしれないなと思うときがある。大抵前者は私自身が好調なとき、後者は不調を感じているときである気がする。

 つまり私は自分の不調を彼女に対する負い目へと変換することで補足可能な問題へ落とし込み、そして「妹を慮る」善良な存在として再起を図ろうとしているのである、と今更ながら気づいた。そこ

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恩送り

恩送り

 父のいない私にはそれを補うように大人の人々との関わりが多かった。私はだから自分の人生を語るとき、家族だけを取り上げるのでは到底足りず、もっと先へ手を広げ網を手繰らなければならない。今日は私の恩師の一人を紹介したい。ここでは彼の名を“高山”と呼ぶことにする。

高山さん 高山さんは私が小学校、中学校に通っていたときのランニングクラブのコーチである。当時中学校には陸上部がなかったので部活終了後に近く

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“アダチさん”はいつも

“アダチさん”はいつも

まえがき 直近の二回を私の両親の紹介に費やしたので、今回は少し私と距離を置いて書いていこうと思う。これは私の職場で名物となっているお客さんのある一日の記録である。

“アダチさん” 通称“アダチさん”(本名は当然知らない)は70に入ったかどうかという年齢の男性である。薄緑色をした作業服にフード付きの上着をいつも着ている。上着は羽毛入りをうたったふんわりしたタイプではなく、薄いポリ生地の間に綿を詰め

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バケモノの“母”

バケモノの“母”

 私の町で私の母のことを知らない人間は少ない(と思う)。母は誰かと尋ねられ私が答えると大抵「ああ、〇〇ちゃんの」と笑いかけてくれることが多いからだ。(もちろんこれはオウム返しが可能で、そうでも言わないと気まずくなるからかもしれない。田舎で気まずい雰囲気を作るのはご法度だ。狭いコミュニティで暮らしていくには角を立てないことが肝要なのだ)

 特段偉業を成し遂げたわけでもない母が少しばかり有名なのは恐

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