note短歌

【35歳②】 だんだんと母に似てきて母になりやがて私はだれだろう 雪/柴田葵

こんにちは、柴田葵です。2月ってバグが起きたみたいに短いですね。

先日、子供が「おかあさんは何さいなの」と尋ねるので、正直に「35歳」と言いました。それ以降たびたび、ブルゾンちえみの口調で「35歳」と振り向いてきます。

私が15歳のころ、25歳と35歳はあんまり変わらないような気がしていました。ある程度成熟していて、かといって年でもなくて、内面的にも外見的にも社会的にも、なんていうか同じような範疇かなって。

15歳の私の視界はドット絵だったんでしょうか。

25歳と35歳はかなり違いました。少なくとも、私にとっては。

私はその10年の間に結婚し、出産し、退職し、アメリカでの生活を含めて5回ほど転居し、再び出産し、義祖母を含む祖母を3人亡くし、短歌をはじめ、書く仕事をはじめ、生活環境が大きく変わりました。

そして何より、似合う服が全く変わりました。身長体重はほとんど変わらないのに、20代のころの服や鞄は絶妙に似合わなくなってしまって、私は私の20代をたくさんたくさんメルカリで売りました。

日常的にメガネで過ごすようになり、ふと鏡を見れば、若かった頃の母にそっくりな人間が映っています。

「お母さんなの?」私は聞きます。

「お母さんだよ」私は言います。

私は一体、これから何になるんでしょう。私の母は老いてしまったものの、実在して元気に生きています。私は私の母になる必要はありません。同じ道を辿っているわけではありません。

子を産んだ後の35歳の私は、私を産みなおす必要があるようです。


◇短歌◇

だんだんと母に似てきて母になりやがて私はだれだろう 雪

/柴田葵


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