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美少女になりたいと呟く俺の瞳はあの日のドパーズみたいに澄んでいた

 美少女になりたいです、もしも美少女になりたいという思いの力で発電ができるなら今すぐ我が国のエネルギー問題が解決するぐらいには。突然としてこんなことを書いているのだが、別に俺は狂ってしまった訳ではないし、全く進捗が産まれない就職活動のせいで病んでしまった訳でもない。ただ俺は心からの願望として一日か二日ぐらいだけ美少女になりたいと本気で考えている。

 確かに俺はポケットモンスターリーフグリーンをプレイすれば女主人公を選択していたし、おいでよどうぶつの森をプレイすれば最初は男主人公を選択したものの、気付けば女の子っぽい服を着せて髪型はツインテールにしていた。つまり小学校の頃から美少女になりたいという願望は無意識下において抱いていたと考えられる。しかし、この思いが胃の中で大きくなり喉を通って口から出るようになったのはつい最近のことだ。

 その理由を挙げようと思えば無限に挙げられるが、その中から1つ挙げると、周りの人々の自分に対する視線が理由として挙げられる。

 俺は散歩が趣味なのだが、昼間に近所の大きな公園を散歩していると、子供達とその両親が遊んでいる場面に出くわすことが多い。そのような時、往々にして親御さん、特に母親は俺に警戒の目線を投げ掛けてくる。まあ、訳の分からないパーカーと訳の分からないどっかの高校の体操ズボン、起きたままの髪型に眼鏡とマスクといった訳の分からない不審者Styleで平日の昼間に公園を闊歩している俺にも責任の一端どころか大部分、下手したらほぼ全てあるのは認めるが、それにしたって視線が痛い。そもそも公園は皆の場所であり、俺だって税金を払っているのだから公園を利用する権利はあるはずなのだが、現状として子供達とその両親に出くわす度にタイルにこびりついた汚れに向けるような視線を叩きつけられまくっている。

 このような扱いを食らっているのは俺の装いが浮浪者チックであることに原因があるものの、もし俺の容姿が可憐な美少女であれば、多少浮浪者チックな装いをしていても警戒されないどころか "あえて" そういうファッションをしている洒落た人間であるとプラスの評価を頂ける可能性すらある。そもそも平日の昼間から大の男が不審者ファッションで公園を散歩しているのは不自然に感じられるかもしれないが、平日の昼間から美少女が不審者ファッションで散歩している場合、まず誰しもが美少女という要素に目が行くので平日の昼間という要素と不審者ファッションという要素は完全に捨て置かれることとなる。少なくともタイルにこびりついた汚れに向けるような視線を投げつけられることは無いだろう。

 もちろん、美少女に投げ掛けられる視線の全てが好意的なものであるとは思っていないし、美少女には美少女なりの苦労があるのは重々承知している。それでも一回限りで全然構わないので、平日の昼間にうろうろしていても周りの人々から警戒の目線を向けられないという経験をしたいなあと思うばかりである。これが俺が美少女になりたい理由である。

 嘘です、ここまで全部嘘。第一周りの人々から警戒の目線を投げられても普通に鈍感すぎてそれに気づけない。本当の理由として、大学の1年の頃綺麗な先輩に何のバイトをしているか聞いたところおじさんを殴って一万もらう仕事と回答され、顔立ちがいいとおじさんを殴るだけで一万もらえるのかと感心したことが挙げられる。マジで羨ましすぎる、バイトとして割りが良すぎるだろ。俺もおじさんを殴るだけで一万貰いたいし、何なら美少女よりも腰の入ったパンチを打てる自信があります。ていうか美少女にならなくてもいいのでおじさんを殴るバイトがしたいです、ストレスも貯まってるし。誰か!俺に殴られたいおじさんいませんか?小中高野球してたのでパンチには自信がありますよ!!美少女なんかよりよっぽどパンチ力もあります!給料は一万とかじゃなくてもいいんで!ご応募!お待ちしております!!!!!!!!

 そう言い残し、おじさんを殴る未来に向かってとりあえずランニングを始めたドレスデンであった………………fin

 

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