見出し画像

〜難病とはりきゅう〜その37〜「2021年12/1 第80診 月のウサギ」

前回の記事から1年以上が経ってしまった。


言い訳をいっても仕方がないが、少し思いを残しておきたいので書かせて欲しい。

①日々の臨床に影響が出てしまった。

②正直、心苦しところがあった。


日々の臨床への影響

2021年に入り、自分の鍼灸院の移転を考えながら臨床に立ち

夏に移転を終えたのだが、体力などほとんど残らないほどの時期だった。自分自身で決めた事なので、こんな事をいっても「サブいやつ」に見えるかもしれない。


けれど、往診で感じた全てを文章に起こすのはそれ相応の体力を必要としていて、

治療院での治療

+治療院を営む事業主としての作業

+学校での講師業とそれに伴う準備

+Youtubeなどでの発信

+往診

+noteを含めたSNSでの文章作成

となるともはや体力は残っておらず、治療への影響がで始めてしまった。治療の日に、体調を崩したり。パフォーマンスが落ちることが目立ってきたのだ。


このプロジェクトは、関わるすべての人を元気にするための物であり


希望に向けて、継続的に行っていくことに意味が有った。日々の治療でパフォーマンスが落ちることは、その思いと反する事で何かを諦めざるを得なかった。



そのため、noteでの更新を諦めた。

「支援のない状態であることをキタムラさんには伏せ」自分のポケットマネーでも継続していこうと決めた。



プロジェクトとして不完全なものになるが、治療を中断する気はさらさらなかった。あの日の涙から、誓って支え続けようと決めている。

プロジェクトの成功よりも、キタムラさんに寄り添うこと。これを第一に考えた。合っているのかなんて考える暇もなかった




もどかしい心苦しさ

キタムラさんは、この一年でほとんど体が動かなくなってしまった。


首を上下左右に軽く動かしたり、左手が肘から先動くような状況。

昨年末に胃ろうの手術をし、今年に入り呼吸補助器をつけることも増えた。2ヶ月前には息苦しくて入院した。今ではほとんど呼吸補助器を利用している。


両足や体幹はあまり動かず、手先には痛みも出ているそう。

冷えるストレス、痛みストレス、動かないストレス。

とにかくストレスを感じて仕方がない様子です。


ちょっと当たりが悪くて枕を動かしたくとも動かせない。ちょっと膝を曲げたい・伸ばしたいけど動かない。ちょっと鼻をかきたいのに手が届かない。それらを頼みたくとも、言葉で伝わらずもどかしくなる一方


「感じるのに、解決できない。」


そんな底の深い沼のような怖さを持つのがALSという病。

キタムラさんは、一年前と比べてQOLの低下が大きく、旦那さんや看護師さんに頼ることが多くなっている。



その上に、痛みや動きづらさや「ストレスを感じやすい・感じない」などもあるので、頼ることが増えている。


自分でできること>他人に頼ること

が当たり前の状態だったのが

自分でできること<他人に頼ること

に変化をしていく。



その変化も、毎週ドンドン現れていて

部屋中に

「〇〇の際は、□□に気をつけてください」とか

「2時間に1度は、▲▲してください」など、多くの人間がチームとして1人を支えるためのフォロー内容が貼られていて、毎週増える。



週に一度、1時間程度行くだけでは状況を全て把握ができない。

この機材は何なのか

なぜこの姿勢なのか

空調の状況はどうか

水分補給のタイミングはどうか。



全てを聞くには相手の時間を奪いすぎるし、ストレスを与えてしまう。

理解したところで治療に影響がない場合も多い。


ただ、治療以外でも何かの役に立てればとも思っていた。

分からないなりに、観察をして治療に臨む。そんな日々だった。



時折、「なんの役に立てているのだろう?」

自問自答した時間も少なくない。むしろ邪魔になっているのでは?とすら思ったこともある。



こんな葛藤をはじめとする「自分の心の動き」を文章に起こそうとすればするほど、悩んだ。

細かいディティールまで伝えようとするほど、どこか痛みを伴った



「毎週更新しよう!」と意気込んでいたnoteの更新からも少しずつ手を遠ざけていた。



誰かからのギフトである。ということを一旦横に置くことにはなる。


けれど

自分の納得できる働きをまず目指そう。と思って一年間往診に通った。



それでも

キタムラさんの体調はだんだんと落ち込んでいった。


が、理解できることも多くなった。

体幹を治療して終えると、少し咳きこむこと

頭部への刺激が多くなると、暑がりやすいこと

一点への刺激を3分以上しても、暑くなりやすいこと

全身的な軽刺激をしていくことで、眠りやすくなること


など、治療をしていて分かることだった。


眠れない

暑がる・寒がる

唯一動く左手が、動きづらいことが増えた

あちこちが痛い


一つでも解決できるように思いを込めて鍼を立てる。

旦那さんや、看護師さんに比べれば何をできているのか分からない。


でも、キタムラさんの微妙な表情の変化や、伝えようとしてくれることなど微細に受け取ろうと集中しながら鍼を立てた。




月のウサギ

治療をしながら「ブッダの兎の話」を思い出した。

小学生の頃か、何かのマンガか何かで読んだ記憶がある。



ブッダが、前世でウサギとして生きたことが有った。

サル、キツネ、ウサギの3匹が、山の中で力尽きて倒れている旅人に出逢った。3匹は旅人を助けようと考えた。サルはくだものを集め、キツネは川で魚をとり、それぞれ老人に食料として与えた。しかし兎だけは、どんなに苦労しても何も採ってくることができなかった。自分の非力さを嘆いた兎は、何とか老人を助けたいと考えた挙句、猿と狐に頼んで火を焚いてもらい、自らの身を食料として捧げるべく、火の中へ飛び込んだ。その姿を見た老人は、帝釈天としての正体を現し、ウサギの捨て身の慈悲行を後世まで伝えるため、ウサギを月へと昇らせた。月に見えるウサギの姿の周囲に煙状の影が見えるのは、ウサギが自らの身を焼いた際の煙だという。 byWikipedia


この話は、昔「何てかわいそうな話なんだ」と思っていたが、最近はそういう見方でなく「とても真理をついた話なんだ」と理解ができるようになった。


すべての存在は、何か大きな歯車の中で役割をおっている。

石一つ、草一つ。どんなに小さくとも関係なくみな等しく尊い役割を持つ。

その役割を最大限にこなそうとした時、一つ全体が前にすすむ。そんな印象がある。



旅人に物をあげられたサルやキツネは、

旦那さんや看護師さん、そしてドクターの方々。


何もできない自分はウサギなのだと思う。


ただ、目の前に火になる物もなく、身を捧げることできない現状で月に上がれるはずもない。



捧げるものが見えずに、分からない今

出来ることは、とにかく自分の臨床としての腕をフルに活かすこと。

考え続けること、行動をやめないこと。


火に飛び込むわけではない、けれどウサギのその思いは痛いほど分かる。



哀れな話に向かうつもりは、ない。

最後まで一縷の望みを信じ、探し続けハッピーエンドへ向かう。



月のウサギになったって仕方がない、皆で喜びたいだけだ。

今度こそ、そう思って毎週長距離の車を走らせる。



頑張る、頑張る。

絶対に前を向き続ける。


治療はギフトになりうるんだ。




ー支援についてー


閲覧ありがとうございます。
この活動は「治療をギフトに」というプロジェクトです。

安心して治癒に向けて専念していただくために
治療者は一切の費用をいただかず「サポーター」の方からの寄付のみで活動を継続しております。

治療者とその施術が「ギフト」になる。
そんなプロジェクトです。

本プロジェクトではALSという難病の治療を行なっています。
徐々に身体の動きができなくなるという難病で、いまだに治療法が確立されていません。
今回、その症状に対して「東洋医学」とくに鍼灸治療で治癒を狙っていきます。

積聚(シャクジュ)治療という治療法を行なっていますが、東洋的な発想に基づいて体系化された治療で、「古傷」も含めて治療をします。過去、この治療法でALSと向き合った症例は無いのでは無いかと思います。前例が無い挑戦です。
原因不明、治療不可となっている現代医学とは違ったアプローチで、何かしらの糸口を見つけるためにも「継続的な施術」が必要になります。ご本人やご家族にしか分からない負担も多いものです。

その為ご支援くださるサポーターの皆さんから私の治療を「ギフト」として送ってください。

ご本人:受取人
施術者:ギフト
サポーター:送り主

としてそれぞれの役割の中で、全員が笑顔になっていければ嬉しいです。
ただ、読み物として共感した。という思いもとても嬉しく思っています。

ご協力下さる方は、下記の口座にお振込をお願いできませんでしょうか?
(note内でのサポート機能では手数料などで引かれてしまう為、継続性が減ってしまうと判断しました)

支援金の金額は皆様にお任せします。
※noteでは500円からサポートがあります。
※一度の往復で2,000円ほど交通費が掛かるので、2,000で一回の治療と思っていただいて構いません。今は、継続性を優先している為治療費ではなく交通費や物品代などに充てています。


三菱UFJ銀行 鶴見支店 (普通) 口座番号0184252】
太鼎堂鍼灸院 髙橋洋輔(タイテイドウシンキュウイン タカハシヨウスケ)


支援は「コメント」や「スキ機能」でも嬉しく思います。
文章を書く気力になります。

どうぞよろしくお願いいたします

【全て治療費に充てます】 ここで書かれる「難病患者」さんからは治療費をいただきません。皆さんのサポートは全て治療費に充てます。全て「ギフト」になります。 この記事では治療のドラマをリアルタイムでお伝えします。 サポーターとして継続的な難病への治療の為、応援してくだされば嬉しいです