せがや ようそ(Segaya Youso)

文筆家。執筆の幅を広げたいので本名でなく活動名に改名しました。東京日本橋蛎殻町、小さな…

せがや ようそ(Segaya Youso)

文筆家。執筆の幅を広げたいので本名でなく活動名に改名しました。東京日本橋蛎殻町、小さなワイン輸入会社社員としても活動。

最近の記事

クのつく抒情詩|親友Nとの往復書簡より

19才からの親友の男の子が27才で結婚した時、しばらく往復書簡を交わしていた。 私とNにおいては男女の友情は成立していて、どちらかがどちらかに淡い気持ちを抱くようなことも一切なかった。 とてもドライな関係だった。 ただ、演劇という創作の場で知りあった仲だから心の結びつきがとても強く、Nが結婚するときにああ、何かが終わったな、と思いすごく淋しくなった。 向こうもそうだったのだろう、新橋の焼き肉屋で2人で飲んだ帰り道にNが「往復書簡をやらないか?」と持ちかけてきた。 あ

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    • Mが潰れない本当のワケ|食物礼賛

      9月である。 連日降り続く長雨のせいで不眠に陥り、深夜から早朝にかけてずっと起きているという日々が続いた。 私は仕方なく、徒歩3分の場所にあるコンビニに出かける。 道路は湿っているが空気は冴えざえとして心地よい。 深夜のコンビニには私の他に客はいない。 すでに顔なじみとなった外国人店員にヱビスビールのロング缶を差し出して、会計を済ませる。私はそれだけを持ってまたとぼとぼと歩きだす。 正直に言ってしまおう。 死にたい気分でいっぱいだったのだ。 何かうまくいっていない

      • 焼いたエンダイブの味から|Italiagrismo

        イタリアワインを扱う上で、私が絶対にお茶を濁したくないと思う話題がある。 本当はワインを売る上でこんなことは必要ないのかもしれないし、お客様も求めていないかもしれない。 でも、書かずにいられない。 私は締め切りギリギリまで迷ったがついに書いてしまった。 短いから、どうか最後まで読んでいただきたい。 VinoHayashiイタリアワイン頒布会「Italiagrismo(イタリアグリズモ)」7月お届け冊子内「サルデーニャ、不思議の国のヴェルメンティーノ 」巻頭コラムより

        • 汚くても、とにかく心を震わせて生きる

          今の会社には、2017年12月に入社した。 イタリアワイン専門の小さな輸入会社だ。 それまでは大手のワイン輸入会社にいて、ただぼんやりと生きていた。「中途のアルバイト入社だし、どうせ出世することもないんだろうな」とか考えながら。 放っておくとぼんやりと生きがちな自分にはあまり珍しいことではない。とにかく毎日怒られないようにカウンターに立って、時間をやり過ごす。 いや、はじめから仕事にやる気がないわけではないのだ。 自分で言うのもなんだが、私はけっこう閃きタイプで、棚

        クのつく抒情詩|親友Nとの往復書簡より

          親友Nと27才ぐらいの時に往復書簡を交わしていた話

          ニューヨークにNという親友が住んでいる。 彼とは大学の演劇サークルで知り合い、仲良くなった。いつも早稲田の戸山公園で長時間無駄話をしたり、大隈講堂の前の広場で不健康な弁当を一緒に食べたり、彼の家で酒を飲んだりしていた。 そんな関係が18の頃から随分と長く続いたが、ある晩を境に大きく変わった。新橋だったか、新宿だったかは覚えていないが居酒屋で二人で飲んでいる時に「俺、今度結婚するんだ」と打ち明けられた。 なんだか、ここまで書くと失恋か?と思われるが全くそうではない。第一、

          親友Nと27才ぐらいの時に往復書簡を交わしていた話