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詩集「揺曳」

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「緑風橋 吹田」より「断層」までの二十七編。
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2023年6月の記事一覧

(脚韻詩三編) 「夏へ向かって」

ヒペリカムヒデコート 初夏の虫たちにあふれ 近づいた雨を聞こうと 町を染む赤き実に触れ ※ …

臨  機清
1年前
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(詩) 「季節の余韻」

五月と夏の境界は 影の谷のように沈む 道々を支えた杖が 手の中でくずれ 土に環る たたまれ…

臨  機清
1年前
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(詩) 「Into Konrad Inhaへ捧ぐ」

あなたの唄をきこうと あなたの記憶を辿ろうと もう開く事のない扉の鍵を探し 歩いてまわった…

臨  機清
1年前
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(詩) 「荒野にて」

五月はその顔に覆いをかけて ひとつの気配を残して去った 足元に酸が撒かれている それは わ…

臨  機清
1年前
35

(詩) 「緑風橋 梅雨期」

季節の大気は影をもこもらせ 何もかも壜越しに見渡すようにした そして裏路地を白くくすませて…

臨  機清
1年前
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(詩) 「無題」 (作品16)

帰る道を見失った 晩秋の荒涼 空をひとつの兆候が覆う 立ち尽くしたわれわれを 変わらずに見…

臨  機清
1年前
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(詩) 漂泊のフォルム

割れたガラスの欠片に立つ時 ただことりと響いた羽の量感 空中をしなやかに舞いながら 体を尖らせて 風を屈折する 鳥のフォルム 彼の真下で溶けた湖畔 青く濁った水面に線が引かれ その示された道を飛んでゆく 宿命のように 羽の中にしまい込んだ 二つの小石を落とした 音を立てずに広がる記憶 地平線の境界が崩れ去り 姿をあらわす空白 薄く染めぬいた笛 磨いた牙 閉じた耳 風の内側で充満する沈黙に 彼は細く澄んだ声で応じた

(詩) 「淀川 五月 (叙景)」

鉄橋に断続する唸りが 耳につきまとう 薄い膜になり 屈んで流れる 川の表面を小刻みに 振動さ…

臨  機清
1年前
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