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"生まれた時から、自分以外の人生が始まる":映画「17歳のウィーン フロイト教授 人生のレッスン」より

映画「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」を観ました。

<あらすじ>
1937年、ナチ・ドイツとの併合に揺れるオーストリア。自然豊かなアッター湖のほとりに母親と暮らす17歳の青年フランツは、タバコ店の見習いとして働くためウィーンへやってきた。
常連のひとりで“頭の医者”として知られるフロイト教授と懇意になったフランツは、教授から人生を楽しみ恋をするよう勧めを受ける。
やがてボヘミア出身の女性アネシュカに一目惚れをし、はじめての恋に戸惑うフランツは、フロイトに助言を仰ぐ。
しかし、時代は国全体を巻き込んで、激動の時を迎えようとしていた。

17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスンウェブサイトより)


フロイト教授(ジークムント・フロイト)とは、ユング、アドラーと共に心理学の巨人と言われ、「精神分析の創始者」として知られている精神科医で、神経症や心的外傷(PTSD)の研究、さらに無意識の研究などを行いました。


また、「夢」を分析したことでも知られていて、劇中でも恋に悩む青年フランツに、朝起きた時に「夢」を書き留めるようアドバイスします。

この映画の魅力のひとつが映像美なのですが、フランツの夢の映像化のシーンの数々がとても美しいです。まるでシュルレアリスムの絵画のような、とても不思議で幻想的な世界。「夢」が持つ特有のあり得ない世界が、映像となってたくさん登場します。


人生の相談をしている中で、フロイトとフランツは年齢を超えた友情を深めていくのですが、時は第二次世界大戦前夜。抗えない時代の大きなうねりにのまれていきます。


副題に「フロイト教授 人生のレッスン」とあるように、フランツへのアドバイスに「なるほど!」と大きな気づきをもたらしてくれる名言も度々登場します。

中でも私が一番心に響いたのは、"生まれた時から、自分以外の人生が始まる"ということば。

この世界に生まれ落ちた時から世界との分離が始まり、外の世界からの影響を大きく受け、自我が育つにつれて「本当の自分」から大きく解離していく。そしてある日、「私とは何か?」という問いに気づき、本当の自分を生きるための人生が始まる...。

ここまでの内容を意図したセリフかは分かりませんが、私はこんな感じで解釈しました。


自分が意識している自分は10%で、残りの90%が無意識の自分。本当の自分がそこにあるとしたら...。そんな自分を知りたいし、体験したい!と私は思うので、こんな解釈になったんだと思いますが、みなさんはどう思いますか?


ちなみに、映画の原題(ドイツ語)は"Der Trafikant" で、英題は"The Tabacconist"。両方とも、たばこ屋という意味です。フランツがたばこ屋で働いていて、そこにフロイトがお客さんとしてやってきて交流が始まったこと、たばこ屋を訪れる人々もまた個性的な人で、たばこ屋を舞台にした映画だからです。

ドイツ語のビジュアル

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英語のビジュアル

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観るたびに気づきがありそうな映画。またじっくりと観たいな、と思いました。

※この作品が遺作となったヨーロッパ映画界の名優、ブルーノ・ガンツの存在もまた見所です!


17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン公式サイト



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