見出し画像

誰かの人生に巻き込まれる感覚 映画『オーファンズ・ブルース』

知らない人の人生に途中から絡んでしまった、巻き込まれてしまった、そんな体験ができる映画を見ました。途中から巻き込まれるので、わからないことだらけです。でもわかったときには…

今回ご紹介する映画『オーファンズ・ブルース』は、ロードムービーが好きな人はもちろん、ロードムービーってどんなの?って方にはもっとおすすめの作品です。

永遠に続きそうな夏が舞台。何かが起きているんだろうけど、何も起きない。このまま何も起きないのかな、と思ったタイミングで、油断しているところ、今かよってときに何かが起きる映画。

かろうじて主人公のエマは記憶障害で、誰かに会おうとしていることだけはわかります。しかし、逆に言えばわからないことだらけなので、好き勝手な解釈をしながら見進めることができるとも言えます。

記憶障害を持ち、徐々にいろんなことを忘れてしまう少女・エマ。彼女はまだ自分の記憶に頼れるうちに、どうしても会いたい人・ヤンを探す旅にでます。自分の記憶障害が進行していることへの恐怖と焦りを感じながら、少しずつ前に進むエマ。

前述したとおり、見ている僕たちは途中からエマの人生に巻き込まれるので、助けてあげようにも何をしてあげられるかもわかりません。見守ることしかできません。

彼女が探しているヤンとはどんな人物なのか。それを知る前に、エマの旅に絡んでくる人物たち。それらはけっして多くはないけれど、エマにとっては「いないよりも、いたほうがいい人」として存在します。

ある程度の信用はしているが、信頼はしていない。まるで新学期のクラスのような、ただ偶然となりに座っていた人のような、目に見えない壁をお互いに張っているような空気が流れます。この距離感が見事で、個人的には下手なホラーよりも怖く、居心地の悪さを感じてハラハラするほどでした。

ヤンはなぜ見つからないのか。ヤンを知る人物は何かを隠しているのか。それともエマが忘れてしまっただけなのか。

大事な思い出が消えていく中で、彼女がたどり着くのは真実か、それとも願望か。

記憶障害に苦しみつつも、毎日を楽しく過ごすエマを見ていると、このまま同じ日々が続く方が、永遠の夏が本当になったらいいのに、と思ってしまいそうになります。

この記事を書いているのは9月頭。まだ夏が少し残っています。できれば今のうちに見てほしい。そして来年の夏、まためちゃくちゃ暑い日に、また見てください。

それではまた。ご存じ、ゆうせいでした。

---

『オーファンズ・ブルース』の公式サイトはこちら

DVDレンタルが始まってます。ネットではDOKUSO映画館で配信中です。9月中なら無料会員に登録するだけで本編ぜんぶ見れます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?