見出し画像

東京で開催される二つのマティス展が気になっています

 フランスの画家アンリ・マティス、Henri MATISSE(1869-1954年)の展覧会が東京で二つ予定されています。一つが今年2023年4月27日から東京都美術館で開催されるマティス展、もう一つが来年2024年2月から国立新美術館で開催される「マティス 自由なフォルム」で、別々の企画になります。約一年の間隔があるものの、日本を代表する二つの美術館が同じ画家をテーマに展覧会を開くということで東京都美術館での開催が近づくにつれ、だんだんと気になってきました。


東京都美術館 マティス展 Henri MATISSE : The Path to Color

 東京都美術館のウェブサイトなどによると、今年のマティス展はパリの ポンピドゥー・センター にあるフランスの国立近代美術館の協力を得て開催されるもので、約20年ぶりの大規模な展覧会と謳っています。約150作品を借り受け、その中には日本で初めて展示されるという《豪奢、静寂、逸楽》もあります。南フランスのサン=トロぺの海岸で戯れる人たちを描いた作品です。ぱっと見、明るい赤、オレンジ、黄色を多用した点描画のようですが、よく見ると丸い点ではなく短い線であったり、人物や浜辺に置かれたカップなどは輪郭が細い線で描かれたりしています。
 その他に《赤の大きな室内》はタイトル通り赤が絵画の大半で使われていて、展覧会インスタグラムの小さい画面を見ただけでも私は強い印象を受けました。また青紫色を背景に踊っているような人が描かれている《イカロス(版画シリーズ<ジャズ>より》も日本にやってくるということで、会場に行くのがもう今から楽しみです。通常のチケットはオンラインチケット販売システム「ART PASS」を通じて4月13日から販売されるということです。


国立新美術館 マティス 自由なフォルム

 もう一つの、国立新美術館で来年2024年に開催されるのは、フランスのニース市にあるマティス美術館所蔵の作品が来日する「マティス 自由なフォルム」展です。マティスが後半生に取り組んだ「切り紙絵」による作品が中心ということです。これは色が塗られた紙をハサミで切り取り、それを紙に張り付ける技法とのこと。こちらも展覧会ウェブサイトに掲載されている《ブルー・ヌードⅣ》やマティス美術館のメインホールに飾られている大きな《花と果実》がやってきます。《花と果実》は日本に来るために大規模な修復が施されたということです。
 このマティス展は当初、2021年に予定され当時の国立新美術館の展覧会スケジュールにも載っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になり、いつの間にかスケジュール表から消えていたものです。私はもう無かったものとあきらめていたのですが、やっと再登場したので楽しみに待ちたいと思っています。余談ですが2021年の空いたスケジュールに開催されたのが「新世紀エヴァンゲリオン」などのアニメ映画監督としても有名な庵野秀明さんの展覧会だったと記憶しています。これもおもしろかった。


フランス・ヴァンスのロザリオ礼拝堂

 晩年のマティスはフランス・ニース郊外のヴァンスにあるロザリオ礼拝堂をデザインしました。ここでも切り紙絵の技法を応用しています。
 今年の東京都美術館の展覧会ではNHKがこの展覧会のために撮影した4K映像が上映されるということです。また、来年の国立新美術館では礼拝堂を体感できる空間を再現するということです。この二つの試み、約一年間の時間差はありますが、それぞれの会場でどのようにロザリオ礼拝堂を感じ取れるかが楽しみです。


余談 日本初公開ということで思い出すのが…

 マティスからは離れてしまいますが、日本で初めて公開された作品ということで覚えているものが二つあります。
 一つが昨年2022年2月から4月に、やはり東京都美術館の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」で紹介されたドイツのドレスデン国立古典絵画館が所蔵するフェルメールの《窓辺で手紙を読む女》です。背景の大きな壁の部分にキューピッドの画中画が塗りつぶされていることがX線調査などで以前からわかっていました。塗りつぶしたのが画家本人ではなかったことが確認され、上塗りされた絵具やニス、埃などの汚れを取り除いて修復された絵画が2021年に現地ドレスデンで公開されました。その後、ドイツ以外で修復後の絵画が一般公開された最初の場所が東京都美術館だったということです。

 もう一つが昨年2022年9月から今年2023年2月にかけて京都市京セラ美術館で開催された「アンディ・ウォーホル・キョウト」展です。アメリカのピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品で構成された展覧会で、約200点のうち100点以上が日本初公開。その中でも会場の最後の部屋に飾られた《最後の晩餐》は圧巻でした。非常に大きな作品で、撮影可でカメラを向けても正面からは入りきらない。私はレオナルド・ダ・ヴィンチの同名作品イメージにたどり着くことができませんでしたが、キリストとハーレーダビッドソンが描かれている不思議な絵画をじっくりと観てきました。


余談の続き アンディ・ウォーホルでさらに脱線してしまうのですが…

 東京都現代美術館で開催されている「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展でもスターたちが着用したドレスなどとともにアンディ・ウォーホルのマリリン・モンローが展示されていました。こちらは会場の東京都現代美術館が所蔵する作品で、私は定期的に開催されるコレクション展でも観たことがあります。ドレスとモダンアートは面白い組み合わせでした。


※参考文献
マティス展完全ガイドブック(朝日新聞出版)

(4月2日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?