『問はず語り』を和歌から読み解く5
和歌9 院→著者
かくまでは思ひおこせじ人しれず見せばや袖にかかる涙を
(こんなにあなたのことを恋しく思っていても、あなたは気づかないでしょう。ああ、こっそりとあなただけに見せたいよ。涙で濡らした私の袖を。)
前回、初夜のあと著者は後深草院に御所へ連れてこられました。それから10日ほどが経ち、院は毎晩著者を抱くためにやってきました。
著者は「煙の末」などの言葉を贈った恋人の実兼のことを思いつつも、院に抱かれている優柔不断な自分に対して自己嫌悪になってしまいました。
そして、著者は家に帰りました。すると院から手紙や和歌9の歌が届き、喜んで気合を入れて返事を書き次の歌を添えます。
和歌10 著者→院
我ゆゑの思ひならねど小夜衣なみだの聞けば濡るる袖かな
(私のことを思って泣いてくださっているんじゃないんでしょうけど、そんなこと聞いてしまったら私の袖も濡れてしまいますよ。)
著者は院から手紙が届くのを待ち遠しく思うようになり、心がかなり院に傾いてしまっています。
その数日後、著者はまた御所に入り、奥での生活が始まります。
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