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内地の沖縄料理屋に心開けない問題

 さまよう蟹(94年生まれ 西原町出身)

 内地に出てきて早10年ほどになる。沖縄が恋しくて、これまで何軒か内地にある沖縄料理屋を訪れてきたが、店を選ぶ際に最も気にしていたことは「いかに沖縄色を押しつけてこないか」である。

 むやみやたらと沖縄を押しつけてこない、自然な感じ。例えるなら、店中にむやみに沖縄の写真や「ハイサイ!」「なんくるないさ〜」といった沖縄の言葉、ハイビスカスやゴーヤーなどの装飾品が飾られていない、そんな感じ。入店した際に、エイサーの衣装を着た店員が「ハイサイ!」「めんそーれ」とか言ってこない、そんな感じ。沖縄料理屋なんだから沖縄色は出すだろうが、そこにむやみやたら感が加わるとなんだか心が開けない。そして、そのような空間を避けてきたものの、長らくこれら特徴を一言で表せずにいて、時々説明に難儀することがあった。


 先日、飯田橋にある「沖縄料理 島」を訪れた。入り口はサッシで、営業時間など書いてあるがあまり装飾されていない。店内はフードメニューや泡盛を紹介する手製のポスターのほかに、なんと瀬長亀次郎氏の色紙が飾ってあった。これまで行った内地の沖縄料理屋で瀬長氏のポスターや色紙といった類のものを見たことがなかった。「そう、これこれ。こういうのでいいんだよ。」むつみ橋にある昔からやっている沖縄そば屋のような、沖縄料理屋である。

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沖縄そばとさんぴん茶を頼んで店内を見回していると、壁に貼られた新聞の切り抜きを見つけた。某社のコラムでこの店が紹介されたらしく、ラミネートして数カ所に貼られていた。そのコラムで書いてあった言葉に衝撃を受けた。

 「沖縄色の過剰演出」。感動して思わず声が出た。この店はその沖縄色の過剰演出とは無縁、という内容のコラムだったが、この一言によって私が抱いていた内地の沖縄料理屋に対するモヤモヤが見事に表現されていた。

 この言葉を得てモヤモヤの正体がわかった今、むやみやたらに沖縄色を出してくる、心が開けない部類の内地の沖縄料理屋があっても、「沖縄色の過剰演出」がされていると考えれば少しは受け入れられる気がしている。自分が求めるかたちとは違うが、過剰演出がされている店もまた、沖縄を愛しているに変わりはないだろうから。

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