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教師が知っておきたい、教室における安心・安全の理解について。

 今回が教室における安心感や安全感について考えていきたいと思います。私はかねてから教室における心理的安全性について考えてきました。教室で子どもたちが心理的に安全だと感じることができれば、自然と仲間とつながり合っていくだろうと考えていたのです。しかし、そもそも「安心・安全とは何か」というような点をはっきりとさせないままに考えだけが進んでいき、安全や安心という言葉を軽く扱っていたように感じます。今回が学校教育における教室内での安全・安心について深く考えていこうと思います。

①学校での安全・安心

生徒指導提要に出てくる安全・安心という言葉を考えてみました。安全のワードが98語、安心のワードが61語、そして安全・安心という言葉のセットが22語出てくるのですが、その頻度の割には具体的方策が書かれていないというような問題が挙げられます。重要なのは言うまでもないのですが、実際にどうすればいいのかわからないというような現状です。特に物理的な安全面に関しては記載はあれど、心理的な安心面に関して深く書かれているわけではありません。


1つに安心といっても捉え方は様々です。今回紹介する論文では、安心を3つの要素から考えていました。1つめは物理的環境要因による安心です。例えばマズローの欲求段階説でいうところの安全の欲求が満たされているかどうかという面です。教室環境を整えることなどを学校現場では指すかもしれません。次に社会的環境要因です。これは社会的欲求の面を指します。自分は所属する学級から認められているのいか。そこに所属していてよい存在なのか。その感覚的なものが満たされていなければ安心を抱くことができません。そして最後に心的な環境要因が存在します。そもそもその人に不安症や強迫性障害など心理的な課題を抱えていれば、安心を感じることはできません。このように3つの要素を含んで安心と考えることができるわけです。これが安心を作る3要素と呼ぶことができます。そして、安心が成り立つには安全は必要不可欠ですが、必ずしもそれだけで良いと言えるかどうかは別の話です。むしろ、安全が整っていれば良いというわけではなく、それ以外の要因がとても大きいのです。

②どこにアプローチをするのがいいのか

では、どのようにして安心感を醸成していくべきなのでしょうか。私は社会的欲求に着目していくことが大切だと感じています。つまり、マズローで言うところの承認欲求を満たしていくように取り組んでいくということです。そして、その際に大きなキーワードとなるのが「つながり」です。子ども同士はつながることによって集団を形成していきます。その集団に所属感を感じ、承認されている・認められていると感じるようになります。つまり安心感をもつための1つの要素として「つながり」というような面が大きく関係するというわけです。安心感を導くつながる力を追い求めていくことが必要なわけです。

③子ども同士のつながる力

ここで子ども同士のつながる力について考えますが、重要なのは非認知能力の育成となってきます。

子どもの認知的な部分ではなく、非認知能力を育成することがこれからの子どもたちには必須だと考えています。そしてそれが子どもの安心感につながると信じています。その中でも他者とつながるような力を育成することができれば、これからの子どもたちが幸せな生活を送るきっかけとなると思うのです。その土台となるのがつながることで生まれる安心感を教室に生み出すということです。その安心感があれば、今まで不安でできなかっかことや、どうしようか迷っていたことにチャレンジするきっかけとなります。その安心感のもとで様々な取組を進めていくのです。そうすることで、子どもたちはより他者とつながりながら自分を高めていくことができるはずです。安心感を子ども同士がつながることで得ていくのです。

④グループ・アプローチ

 ではどうするのか。私はグループアプローチの考え方が必要だと感じています。特にソーシャルスキルトレーニングや構成的グループエンカウンターなどのエクササイズを通して、子どもたちが非認知能力を育成させていくようなきっかけをとることができればと考えています。仲間づくりの活動を取り込むことで、「つながれた」という経験を重ねていくわけです。学級経営の中でこのような考え方を取り入れていきましょう。

⑤終わりに

 今回は安心感をメインに書いていきました。確かに、安心といっても捉えようは多種多様で、様々な考え方があります。しかし、私のように「友達とつながる力」と捉えて実際にアプローチしていくことで、結果として安心感を抱ける子どもたちはたくさんいるはずです。そんな安心感を抱く取組に手を出すきっかけになればと思います。

引用
研究論文児童の学校生活における安心感の検討 ―教師や友人との経験・愛着に焦点をあてて―  貴 志 光加里  庄 司 一 子筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻共生教育学分野

子どもの非認知能力を育成する教師のためのソーシャル・スキル 河村 茂雄

藤井 聡(2009). 安全と安心の心理学, 日本建築 学会総合論文誌, 7, 29-32.

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