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Neil Young "Harvest" -来たる秋のためのカントリー・ロック③-

   こんにちは。

 今回も好きなカントリー・ロックの紹介。今回は私のめちゃくちゃ大好きなアーティストの一人、ニール・ヤングの「ハーヴェスト」です。

 「ハーヴェスト」は彼の最高傑作との呼び声高い1972年のアルバム、『ハーヴェスト』(今回紹介する曲の名前と同一)の二曲目に収録されている。
 このアルバムには他に「アウト・オン・ザ・ウィークエンド」や「ハート・オブ・ゴールド」、「オールド・マン」など、カントリー・ロックの名曲がベスト盤並みに収録されている。

・アルバムのオープニングを飾るナンバー「アウト・オン・ザ・ウィークエンド」のパフォーマンス映像。

 音の面では、彼の強めに弾くアコースティック・ギターの音が、バンド・サウンドの中でもかなり粒立って聴こえてきて、アコギフェチな私にはたまらないサウンドの宝庫となっている。

 また、先述の通りカントリー調の曲が多く、全体的にアコースティック・テイストが強い。そのため、彼の作品の中でも特に暖かみを感じるし、雰囲気や曲それぞれのテーマなどを見た際、リスナーとの距離が近い作品になっているのではないか、と思う。
 
 中でも、今回選んだ楽曲「ハーヴェスト」はかなりゆったりとしたカントリー・ナンバー。まるでホリデー・アルバムとかに収録されていそうな程のどかで、包み込むようなメローなサウンドが展開されている。聴いていると、まるでニールが暖炉の前に腰掛け、自分に向けて弾き語りをしてくれているような感覚にすらなってくる。
 これらの要素から、私はこの曲を聴くとこの上ないくらい穏やかな気持ちになれるし、高い丘から夕日に染まっていく町を見下ろしているような、美しい情景も脳裏に浮かべることができる。そのため、この作品には他にも名曲が多いにも関わらず、この曲を選ぶに至った。

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   ・ANAのロサンゼルス観光案内のページからの写真。この曲を聴くとこのような情景が脳裏に浮かんでくる。

Did I see you down in a young girl’s town
With your mother in so much pain?
I was almost there at the top of the stairs
With her screamin’ in the rain

君がお母さんと一緒に 若い娘で溢れかえる街で
悲しみに暮れていたのを 僕は見たかな…①
そのとき僕は 階段のほぼ一番上で
彼女が叫ぶのを 雨の中に聞いたんだ

Did she wake you up to tell you that
It was only a change of plan?
Dream up, dream up, let me fill your cup
With the promise of a man

彼女は君に「予定が変わっただけ」と
伝えるために 君を起こしてくれたのかな…②
どうとでも 思ってくれればいいさ…③
僕が君の盃を 男の約束で満たしてあげよう

Did I see you walking with the boys?
Though it was not hand in hand?
And was some black face in a lonely place
When you could understand?

君が男たちと一緒に歩いているのを 僕は見たかな
手は繋いでいなかったと 思うけれど
寂しい空間の中 全てを理解したそのとき
君は 落ち込んだ顔をしていたよね

彼女は君に「予定が変わっただけ」と
伝えるために 君を起こしてくれたのかな
どうとでも 思ってくれればいいさ
僕が君の盃を 男の約束で満たしてあげよう

Will I see you give more than I can take?
Will I only harvest some?
As the days fly past will we lose our grasp
Or fuse in the sun?

僕は 本来受け入れることのできるもの以上のものを
与えてくれる君の姿を 見ることはできるのかな
それともそのごく一部を ただ収穫するのみなのか…④
過ぎ去っていった日々は 僕たちのつながりを
どんどん希薄にしてしまうのか それとも
太陽の光によって溶かされてしまうのだろうか

彼女は君に「予定が変わっただけ」と
伝えるために 君を起こしてくれたのかな
どうとでも 思ってくれればいいさ
僕が君の盃を 男の約束で満たしてあげよう

①…自分のことなのに「見たかな」って、疑問形になっているのが面白い。自分が見たものをどうしても認めたくない、という感じがうまく出ているというか。男の女々しさを表現する歌詞はこれまでにもたくさんあっただろうけど、自分のことを疑問形にすることで女々しさを表現することはなかなかなかったんじゃないかな、と勝手に思う。

②…この曲の中で「君(You)」と「彼女(She)」はどうやら別人扱いになるっぽい。最初はイコールだと思っていたけど、それだと辻褄が合わない箇所がいくつかあり、恐らく「君」が主人公が恋心を抱いている相手で、「彼女」は共通の友人みたいな存在なのかな。

③…原文の「dream up」はイディオムで、意味は「創造」「アイディアを産む」となるらしい。それを二回繰り返しているのが少し投げやりな印象を受けたので(「はい、はい」とか「わかった、わかった」的な)、「dream up, dream up」をただ二回「考えて、考えて」的な感じで訳すよりも「どうとでも思ってくれれば良いさ」とした方が直感的に受けた印象のニュアンスに近い気がした。ので、そうしました。

④…この曲のタイトルになった言葉、「Harvest(日本語で収穫の意味)」が唯一登場する箇所。「Harvest」を訳す際、「収穫」以外にもこの歌詞に合った言い換え(「掴み取る」や「手に入れる」など)はあったと思うけれど、このアルバムを聴いたときに湧き上がる「秋」や「黄金の麦畑」のイメージを大切にしたい、と考え、畑っぽい「収穫」という言い方を採用した。アルバム・ジャケットも麦のパッケージっぽいし。

 今回ニール・ヤングの詩を訳してみて、彼の適度に抽象的な言葉選びは素敵だなあ、と感じた。固定の解釈しかできないというわけでもなく、ミステリアスすぎて何のことを歌っているのかわからないというわけでもない。ちょうどその中間というか。
 どんなことを歌っているのかは割とはっきりとしているけど、そのテーマに行き着くまでに想像される過程や、聴いて浮かんでくる細かな情景は人それぞれで違ってくる歌詞が彼には多いと思うのだ。


 今回で言うと、主人公と君との間に何がったのか、そもそも二人はどんな関係なのか。君は母となぜ街中で悲しみに暮れていたのか。他にも具体的に描かれていない箇所はいくつかあって、謎は残るものの、多くの人はこの歌詞の種類を「恋愛」とカテゴライズするだろう。
   そういった抽象さがありつつ、触れた者に共通認識を持たせる歌詞は読んでいて飽きないし、聴く時々で感じ方が変わってくる。そういった種類の歌詞が私は一番好きだ。もちろん、私が個人的にニールが好きだからのえこひいきも少なからずあるけれど。

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  「ハーヴェスト」に映画「フォレスト・ガンプ」の映像をフューチャーした動画。楽曲とガンプの素朴さがマッチしていて、公式のMVっぽくなっているのが凄い。

かしこ

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