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乳酸菌とワンチームになった日

私は乳酸菌を信頼している。

同僚も乳酸菌と同盟を結んでいるらしく、職場のデスクにでかいビオフェルミンの瓶を常備している。

先日、なにやら悪い顔でビオフェルミンを手に取ると、「本当は1回3錠なんだけどね……私は4錠飲むよ。オーバードーズ」と言っていた。
平和な職場だと思う。

ちなみに私も、ビオフェルミンとロイテリ菌を愛用している。
ロイテリ菌は口内などに定着して、歯周病や虫歯リスクを減らしてくれるらしい。
なので私はそのタブレットを毎日食べている。

ただ食べながらぼんやり出勤するのもなんとなく退屈なので、今朝は口の中のロイテリ菌と意思疎通を試みた。

「ロイテリ菌、聞こえますか……あなた方の宿主です」
「人間が話しかけてくるなんて珍しい」
「日々お世話になっているご挨拶です。それと、ひとつ聞いていただきたいお話がございます」
「なんでしょう」

「私はあなた方乳酸菌の力を借りて健康になりたい。願わくば歯周病や虫歯リスクを下げ、快適に暮らしたい。しかし、それではまるで私が一方的にあなた方の力を利用するかのようで居心地が悪い。なので同盟を結びたいと思うのですがいかがでしょうか」
「おっしゃっている意味が分かりません」

「互いに利益を生む存在となりましょう。私はあなた方にこの体を提供し、あなた方の住み心地のよい環境を維持する。あなた方はのびのびとコロニーを築き、繫栄していただきたい」
「もとよりそのつもりですが」

「いいえ、これはただの共存ではありません。ないものとして扱うのではなく、私は常にあなた方の活躍に対する感謝を忘れず、栄養と愛情をもって接しましょう。我々はワンチームです」
「……ワンチーム……」
「そうです。互いの繁栄を喜び、住みよい世界を作りましょう。私たちは仲間だ!!ワンチーム!!」

…………

……

少々強引だったせいか返答は得られなかった。
でも互いに住み心地のよい世界を形成するという点ではおおむね同意を得られたと思う。

ちなみに乳酸菌にも栄養が必要なので、ワンチームとなるには乳酸菌のえさとなるもの(オリゴ糖、水溶性食物繊維)を食べる必要があるそうだ。

急に「私の体は私だけのものじゃない」みたいな気がしてきた。

こいつは忙しくなってきやがった。

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