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凪とテルテールとブートストラップ

うーん、起き上がることができません。
動き出すことができません。
走り出すことができません。

なぎ

今、ちょうど凪なのかもしれません。
プールで仰向けに浮かんで天井から吊り下げられている水銀灯をぼーっと眺めている。
耳が水中に沈んで何も音が聞こえない。
今、そんな世界にいるような気がします。

何かを待っている。

そんな気がするのですが、一体それが何なのかわかりません。

風が吹かず波が穏やかな状態。次の風が吹くのを待っている状態?

高校時代、少しだけヨットに乗ったことがあります。
ヨットはすごい。
向かい風(逆風)でもジグザグとくねりながら前に進むことができるんです。
そのヨット、風の流れを知るのに意外な方法を使っています。

テルテール

毛糸なんです。

セール(帆)の裏表に毛糸を垂らして、これが風の流れに乗ってセールの表面をうまく泳ぐようにセールを調整するんです。
ちなみにテルテールには「密告者」という意味もあるそうです。

もちろん、私自身のほおや身体にも風を受けているわけで、当然、自分自身の身体全体で風の流れを感知しているのですが、ある時ふと思ったんです。

この風って、

元から吹いている風にヨットが進むことによってできた風が合わさってるんだって。

走っている時に頬に風が当たるのを感じますよね。あの風のことです。

ヨットは風を受けて走るけど、ヨットも風を作ってる。

なら、

凪の時は、自分で風を起こせばいい。

でも、風を起こすにはどうすればいいのでしょう。

物理学的には、気圧の差、気温差がきっかけになってるそうです。

なら、自分で風を起こすにも、きっかけが必要なのでは。

そこで、

ブートストラップ

コンピューターの電源を入れると、何も言わないでも最初に小さな小さなプログラムが動き出して、その小さな小さなプログラムがもう少し大きなプログラムを呼び出して、そのもう少し大きなプログラムが・・・、といった具合に最終的にはwindowsやiosを呼び出す、その一連の流れのことをブートストラップと言うそうです。

ブートストラップの語源は、「ほら吹き男爵の冒険」でほら吹き男爵が自分のブーツをつまみ上げて自分自身を持ち上げ、沼を渡ったというお話に求められるそうですが、真偽のほどはわかりません。

どうやら電源を入れてブートストラップを起動さえすれば、後は、なんとかなりそうです。

なので、電源を探し求めて、走り出すところから、ブートストラップを逆回転で辿ってみます。

走り出す。

歩く。

玄関を出る。

靴ひもを結ぶ。

靴を履く。

ランニングウエアに着替える。

起き上がる。

片手をつく。

仰向けから姿勢を変える。

このに何が入るのか、今の私にはわからないのです。

やはり、ことばでしょうか。

それなら仕方がない、もう少し寝転んで耳を澄まし続けましょう。

最後に、万葉集、額田王です。

熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

(おわり)

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