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うん、これでいい

思いがけない休日の朝
予定はまだない

だらりと伸びた身体は
水飴のようだけど
そんなに甘くはない

学生の頃
炉端焼き屋でバイトしていて
経営者が醤油ダレを作るのを
見せてくれた

大釜に沸かしたお湯に
大量のカツオ節を放り込み
すぐに引き上げて
一升瓶に入った醤油を何本か入れ
一斗缶に入った水飴を注ぎ入れる

そして人差し指を突っ込み
ぺろりと舐めて

「うん、これでいい」

その豪快さと素早さに
18歳の僕は大人の世界を見たような
そして僕なら水飴に指だなと

あの頃の僕は確かに若かったと
懐かしんでいるともう
昼の12時を過ぎていた

撮り貯めたテレビ番組を観ると
午後4時を過ぎていた

ピアノの練習をしていると
もう晩ご飯の時間だという

なんてない一日だったけど
少し若返ったような気がした

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