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NY観劇レポート"Soft Power" @Public Theater

ニューヨークで気になる舞台は見るようにしていたのですが、今まで記録してきませんでした。昨日見た舞台「Soft Power ソフト・パワー」はとても面白くて、考えることがたくさんあったので記録しておこうと思います。

基本情報

この"Musical-within-a-play"(劇中ミュージカル)はもともとロサンゼルスから始まり、ニューヨークのダウンタウン、Astor Placeにあるオフブロードウェイ劇場Public Theaterでニューヨークプレミアが10/15に始まりました。この劇場、オフブロードウェイ(座席数が100~499)ですが、NYの夏の風物詩”シェイクスピアインザパーク”を制作したり、人気のミュージカル、「ハミルトン」がニューヨークデビューした劇場で、話題の作品が多く、私はよく見に行きます。

脚本・作詞: David Henry Hwang (デービッド・ヘンリー・ファン)は中国系アメリカ人劇作家。主な作品は2002年のFlower Drum Songリバイバル、FOB, M.Butterfly, ディズニーのターザンなど。アメリカ生まれの中国系としての視点、アジア(特に中国)とアメリカの関係、政治的なテーマもあり、興味深いものが多いです。

作曲:Jeannine Tesori(ジェニーン・テソリ)はThoroughly Modern Millie, Fun Home, Violet, Shrekなどを手掛けた女性作曲家。来年公開予定、スピルバーグの映画West Side Storyではボーカルコーチをしたそう。

演出:Leigh Silverman(レイ・シルバーマン)はブロードウェイのViolet(トニー賞ノミネート)他、オフブロードウェイの演出が多く、若手で人気上昇中の女性演出家。David.H.HとはChinglishという作品も手掛けています。私もパブリックシアターで彼女演出の作品を見たことがあり印象に残っています。

このチームが揃う舞台、見逃せない!ということでなかなか取れないチケットを、Rushで狙い、なんとか手に入れました!(人との約束を変更させてもらいました…)しかも、俳優は一人をのぞいで全員アジア人。

タイトルのSoft Powerとは、Hard powerの対義語で、国が軍事的や経済的な強制力によらず、文化や政治的価値観、政策の魅力に対する支持や共感を得ることで国際社会からの信頼や発言力を獲得しえる力のこと。物理的に強制するのではなく、魅力で引き寄せる力のこと、だそう。

ストーリー(ネタバレあります)

脚本家のDavid Henry Hwang(以降DHH)に実際に起こった事件がきっかけで書かれた。2016年、大統領選挙の直前、DHHが上海からやってきた中国人プロデューサーXueに上海でのミュージカルづくりを提案される。ストーリーの結末(主人公の恋人二人が家族のために別れる)に異議があるものの、DHHは同意し、Xueをミュージカル「王様と私」に誘う。主人公の「私」は白人で、野蛮なアジア人を教育する物語は差別的だという語るDHH。そこへ大統領候補のヒラリークリントンに遭遇。皆がヒラリーが当選すると読んでいたが、結果は違った。この先の成り行きに不安を感じるDHH。その時、DHHの首に突き刺さる痛み、実は何者かによって首を切られ、大けがをする。(これが実際の作者に起こった事件)もうろうとする意識の中、ここからDHHが想像する新しいミュージカル(劇中ミュージカル)が始まり、オーケストラが登場、舞台は一気にミュージカルへ。これは言わば、「アジア人がつくる『王様と私』」。彼は逆バージョンの、中国人がアメリカに行って影響を与える、というストーリーを描く。初めに見た場面がフラッシュバックのように繰り返されるが、それはミュージカルで、主役のXueが心配する娘を置いて、NYへ去る場面から始まる。自由の国アメリカでヒラリーと恋に落ちるXue、そこで王様と私のパロディー(Shall We Dance?)や中国人がもつアメリカへの偏見や間違いも多々あり。ヒラリーが落選する筋は変わらず、最終的には新しい大統領が中国に宣戦布告、それを阻止するためにXueがホワイトハウスに駆け込み…

そこでXueが説得する内容がキーとなり、タイトルのSoft Powerと繋がります。ヒラリーとXueの関係の結末も重要。これが、初めにDHHがプロデューサーと議論していた物語の結末と関係しているからです。

感想

1.かなり政治的、今のアメリカの危機を感じた作者の強い思いが出ています。個人としても、自分の幸せとは何か考えさせられます。自分だけの幸せかを取るか、愛する人の幸せを願うか。アメリカでは自分の幸せが優先、中国ではFace(面目)を保つこと(中国だけではない、日本も)が優先。どっちを選ぶべきか。まだ答えは出ていない、それは観客が考えることなのかなと。

2.アメリカ系(生まれ)中国人としてのDHH自身の葛藤なども描かれ、そういう経験をしてる人は多いと思いました。私は日本生まれなので、アメリカでも「外国人」という気持ちですが、アメリカで生まれたけれど見た目で「外国人」と見なされ、でもルーツは両親の国にあり、一概に「何人」とは定義できない。アイデンティティーの

3.自由なアメリカ、民主主義は素晴らしいはず。でもなぜその民主主義で国民投票によって選ばれた大統領がとんでもなく、危険な状況(銃犯罪なども絶えない等)のアメリカが素晴らしいと言えるのか。(アメリカの選挙制度の曲もあり、これがわかりやすい&面白い、矛盾がわかります)だったら、中国のように政府が決めたリーダーが国を率いるほうが安全なのか。それでも、ラストに出演俳優とオーケストラが舞台に並び、フランシス・ジュエ演じるDHHは「こんな政情で、僕は命の危険にさらされても生き延びた。それはまだ可能性、希望があるということかもしれない」と訴えます。ここは作者だけではく、舞台の俳優からの本当の強い思いが観客に伝わりました。私が一番ぐっと来たところです。

4.パブリックシアターの舞台には毎回圧倒されます。今回は中国系、以前は韓国系やフィリピン、ベトナム系アメリカ人の話もありました。日系ももっと出てくるといいなと思います!映画ではCrazy Rich Asianが話題になりましたが、舞台でもアジア系俳優の活躍する場が広がっていることは何よりです。俳優のレベルも高く、ストレートでも、ミュージカルでも、上手すぎて尊敬します!私も頑張ろうと勇気が出ました!









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