不登校変化グラフ

不登校ってそもそも何? 不登校の定義論 1

 不登校が増えている。これは確かにそうですが、今も増え続けているわけではありません。
 この先のグラフで不登校の数を追ってみると分かりますが、実は不登校は九十年代後半に激増して九十年代前半には五万人以下だったのが十万人を突破。その後は増減を繰り返しつつ横這いという状態になっています。
 この本では、不登校が九十年代後半に激増した理由と、それをふまえてどう不登校に対策するべきかを書いていくのですが、その前にちょっと気になることがあります。
 不登校が十万人を越えたといいますが、そもそも不登校ってどんな人を指すのでしょうか。
 この章では不登校の定義を追っていきます。

不登校をウィキペディアで見てみると

 私は心理学、精神医学の分野で仕事をしてきた人間ですが、その中で身につけた習慣があります。それは、言葉の定義をちゃんと見てから考えるということです。そんなの面倒くさいと思う人も多いかもしれませんが(実際面と向かって言われたこともあります)、ちょっとおつきあいください。
 不登校の定義がパッと出てくる人は相当な事情通でしょう。
 今は便利な世の中になりました。だいたいのことはウィキペディアがちゃんと正しそうな答えを教えてくれます(ここからはウィキペディアのページを見ながら読むことをお勧めします)。


 ウィキペディアで「不登校」のところを見てみたら。。。
 あれ? 私の知ってる不登校の定義が書いてない! それどころか冒頭にわざわざこんなことが書いてあります。
「日本における「不登校」の語については、研究者、専門家、教育関係者らの間に全国的に統一した定義がなくきわめて多義的である」 
 なるほど。確かにそういわれてみればそうかもしれません。ウィキペディアの不登校の欄をつくった人達はわかってるなぁと感心します。不登校ってなんだろう?と問い続ける姿勢は大事です。ですが、ここでは置いておいて、もうちょっと先を読んでみましょう。
 よく見てみるとさっきの文のすぐ下に探してたものがありました。わざわざクリックするとそこまで飛ぶようになっています。

「日本政府の公式用語としての「不登校 (理由別長期欠席者数)」

 これです! これが私の知ってる不登校の定義です。ウィキペディアの不登校はさらに延々と説明が続いていて興味深いですが、ここからはこの「不登校 (理由別長期欠席者数)」について考えていきます。

 
不登校とその他の欠席の違い

 統計として数字が出される理由別長期欠席者数はかなり整理されています。この区分を見ると不登校とそれ以外の欠席を区別できそうです。まずは不登校以外の長期の欠席(長欠)を見ていきましょう。
 病気と経済的理由による欠席は別に項目が設けられています。これらは不登校になりません。病欠がいくら続いても不登校にはならないのです。
 経済的理由で学校に行けないというシチュエーションは少なくとも私の経験上では見たことがありません。もちろん経済的に困窮してる不登校生徒の家庭はたくさんあります。ただ、学校に行かないことが経済的な理由だけであるということが成り立つことはかなり難しそうです。家もなくなって学校に行くどころではないということもなくはないですが、虐待からの避難など、住む場所がないことが経済的な理由だけに限らないことが多いでしょう。実際、平成二十七年度の経済的な理由による欠席は日本全国で百人もいません。不登校が十万人以上ですから千倍の開きがあります。これだけ数値の開きがあるものをわざわざ別にカウントする必要があるのかと疑問に思うほどの開きです。おそらくですが、経済的な理由も一因であるケースを経済的な理由とカウントすると、この差はかなり縮まるのではないかと思います。
 病欠は分かりやすいですね、と言いたいところですが、こちらも複雑です。多くの不登校の生徒が腹痛などの体調不良を訴えます。確かに彼らの体調不良は朝に多く、学校を休んで昼くらいにはよくなってまた次の日は。。。ということを繰り返しますが、そういった欠席が心身の不調による病欠と認められることはありません。さらにいえば、うつ病などの診断が出れば大人であれば病気による休職になりますが、子ども達はそういった精神疾患でも病欠にならず不登校なることがほとんどです。これはかなり不思議なことです。精神的な疾患による欠席は病欠にならないとも書いてありません。にも関わらず、精神的な病気の診断が出ても、その長欠は病気によるものとならず、不登校になることがほとんどです。病欠の病気とは何を指すのかがはっきりしていないのです。なんだか腑に落ちない話です。
 さらに長欠にはその他という項目があります。私もウィキペディアを見て初めて知ったのですが、家の仕事を手伝わせるからといった親の意向による長欠は不登校ではなくその他になるんですね。
 あと、当然インフルエンザ等の出席停止や停学といった学校から出席を控えるようにいわれることも不登校にはなりません。

改めて不登校の項目を見てみる

 文科省の調査ではご丁寧にこういうのが不登校に定義されますよという例があがっています。それもちょっと見てみましょう。
 「学校生活上の影響」という項目はいじめなど学校生活で何かあって行けなくなったということらしいです。「意図的な拒否」は単に行かないということではなく、例えばミュージシャンになるから学校に行かずに音楽だけやるみたいなものを指すようです。そういえば、昔プロボクサーを目指して学校を休んでる親子とかテレビでいましたね。
 説明が必要なのはこれくらいで、あとは「あそび・非行」「無気力」「不安などの情緒混乱」というのは文字どおりの意味のようです。それと二つ以上の項目があてはまる「複合」というのもあるようです。
 現実的にはこれらの不登校の理由をスパッと分けるのは難しいでしょう。そもそも線引きが難しい項目もあります。やる気がなく学校に行かずゲームばかりしてるケースは「あそび・非行」か「無気力」どちらに分類されるのか。きっちり見てくと多くが「複合」に分類されてしまいそうです。

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