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大手物流企業で働いた話②


積み込みの仕事はパズルゲームとチームスポーツが合わさったようなものだ。

形、重さ、箱の耐久力を勘で計算して、潰れも崩れもしないように台車に積んでいく。
時には持ち上がらないほど重く、時には何も上に乗せられないほど柔らかい。
どのような荷物がどのように流れてくるかは分からない。

どう積むかを素早く直感で判断し、どんどんと積み上げる。



コンベアの分岐の先はローラー付きのテーブルになっていて、それを囲むように台車が並べられる。
1〜3人でそれぞれの送り先を担当し、分岐に引き込まれた荷物はローラーの上を転がして担当者の手元に届けられる。

その作業も手作業でやるのだが、専属ではなく積み込みながらの作業になる。
また、積み込みが遅いとテーブルに荷物が溜まり、新たに流れ込む荷物の行き所がなくなる。
流れてくる荷物の量に対して積み込む速さが遅いとテーブルは荷物で溢れる。


ここがチームスポーツの要素になる。


流れてきた荷物を担当者が積み込みやすいように気を配ってパスしたり、メンバーの作業の遅さ影響で自分の作業がやりにくくなったりする。



ここでは多様な背景を持つ人々が非正規労働者として働く。

体格の良い男性だけではなく、女子高校生から、20〜30代男女、外国人の学生や労働者、おじいちゃん、主婦、軽度の知的障害を持つ人など様々。


これだけ多様な属性の人々が集まる理由はいくつか考えられる。

-時給が他より少し高い。
-働く日時をある程度自分で決められる。
-一定の知能と体力があれば未経験でも働ける。
-ゲームの要素が快感を生む。
-体を動かし続ける仕事が自分に合っている。

私自身が感じたり、話を聞いたりした答えはこんな感じだ。


皆がそれぞれの理由でここで働いている。


女性や年配の人は引き込み作業に回されることが多い。

ベルトコンベアを流れる荷物の中から、自分の分岐が担当する荷物を引き込む作業だ。
これは荷物を持ち上げたり動かしたりしないので力や体力がいらない。
瞬間的な判断力と集中力がある程度あればできる仕事だ。

これはまさに脳トレゲームのようだったが、何時間も続けて楽しめるものではなかった。

慣れてくると色々考え事をしてしまうので、集中力を保つのが難しかった。


あとは満載になった台車を所定の場所に移動させる作業もある。

日本全国の配送先が割り当てられた置き場は初心者にとっては分かりづらい。
右に行けばいいか、左に行けばいいかも分からない。

そして通路は混雑し、混乱していく。

満載の台車は時に軽自動車ほどの重さになり、指や身体を挟まれて怪我をすることもあるらしい。

他には、まれにコンベアに挟まれて怪我をすることもあるらしい。

関節を痛めるという肉体労働の宿命とも言える怪我は私も経験した。

よくこんな職場で素人が働いていて、それを続けられるものだと度々感心した。


トロトロと自転車を走らせる帰り道、この仕事の意味や意義や価値について何度も考えを巡らせた。

(続く)


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