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24.無駄の味は。

このご時世のこともあり、勤務校が休校になった。
タブレットでのやり取りを基本にして、日に3回のzoomでのオンラインでのコミュニケーションを実施。
先生によって幅あるけれど、基本的にzoomでの一斉授業のようなことはしない。
1・2学期にちょくちょくzoomを使っていたこともあって、子どもたちは慣れたもので、多少のトラブルにも慌てず、冷静に対処する様を見ていて、「おおー、やるなあ」と感心していた。

朝にチェックインと健康観察をして、1日の課題を説明。
そのご、午前に一回、zoomをつないで、課題で直接聞きたいことなどがあれば、という条件で30分開放。
参加は自由。
ちょこちょこ参加する子はいたが、課題がわからないというより、おしゃべりに来たという感じだった。
でも、まあろくすっぽ外にも出られず、家にいるんだから、それぐらいの時間おしゃべりして楽しんだってバチは当たらないだろう、とぼくも一緒になっておしゃべりを楽しんだ。

午後からもzoomを一回つなぐ。
こちらは、基本的に全員参加。
今日1日の課題の進み具合を確認したり、明日のことを伝えたり、1日のことをブレイクアウトルームで少人数で振り返ったりした。

子どもたちに休校期間中に出していた課題は一覧メモと合わせて、ビンゴシートを作って渡していた。
課題(ミッション)が一つ終わると、ビンゴのマスをチェックする。
その日出した課題をすべて終えて、ビンゴシートのマスにすべてチェックがついた子には、お祝い動画をプレゼント。
そんな感じで課題に取り組んでもらっていた。

お祝い動画といっても、ぼくが自分で自撮りしたもので、まあ、鼻で笑われる感じのうっすい仕上がりだ。
けれど、そんなうっすい動画といえど、毎回小ネタを挟み込むことを信条としていた。
1回目の動画では、手の込んだものを用意する時間も体力もなかったので、エスカレーターを下る人、をやった。
ビンゴを達成したある男子から、動画を見た後、コメントが送られてきた。

「誰が興味あんねん!!」

素晴らしいツッコミだと思う。
「誰が興味あんねん!」の最高の使い方だ。
君の成長が嬉しい。

2日目の動画は、ちょっと編集して、瞬間移動する動画を作った。
瞬間移動はスムーズなもので(結婚式の余興ビデオなどでいっとき死ぬほど作った)、きれいに消えたり出たりするように編集できた。
けれど、この動画のミソはそこじゃない。
この動画は、ぼくが放課後1人で教室で大きな声で演技して、それを撮っているということだ。
その裏側を知ると、この動画の味わいは変わってくる。
苦味が増す。
大人の味だ。

翌日、子どもたちとzoomで雑談をしていると、「動画いらんからビンゴ完成させんとくわ。」とサラッと言われた。
1年近くも一緒にいると、ぼくのいじり方も堂に入ったものだ。
涙が頬を伝う。

お気づきかと思うが、動画は、少しずつ手の込んだものになっていく。
クオリティは変わらず低空飛行なのに、手の込みようだけはどんどん大きくなっていく。
費用対効果は最悪で、合理性のごの字もない。
無駄 of 無駄。
けれど、なぜだろう。
無駄であればあるほど、燃えてしまうのは。

3日目の動画、これで動画は終わりだ。
休校が明けるからだ。
最後の動画をどんなものにするか悩んだ。
これまで無駄に上げてきたハードルがぼくの前に高い壁となって立ち塞がっていた。

放課後、そんな無駄なお悩みを同僚に話している時、ふと降りてきた。
「そうだ、アテレコはどうだろう?」
思いついたら、ワクワクしてきた。
YouTubeで、有名人のインタビュー動画を調べまくって、手頃にできそうな動画を二つ見つけた。
それを画面収録し、i Movieにブチ込み、音声を合わせていった。
デジタルなのに、めっちゃアナログな感じで、録音しては重ねて修正し、撮り直し…を繰り返した。
そして、2時間後、一本のアテレコ動画が完成した。
うれしくてうれしくて、完成した動画を同僚に見てもらった。
同僚は、手を叩いて爆笑してくれた。
即席で作った割には、良い感じにヘタウマ感が出ていたみたいだ。

夕方、課題を完成させた子どもたちから一つ、また一つと、ビンゴシートが送られてきた。
送られてきたビンゴシートを確認して、一人一人に動画を送った。
反応は、まだ、ない。
全員、白目剥いて呆れているのかもしれない。
それはそれでおもろいけど。
明日、久々に学校で会った子どもたちはどんなリアクションでぼくを迎えてくれるのだろう。
想像すると、ドキドキとワクワクが半々といった心持ちだ。

どんな時でも、どんな場所でも、楽しめる余白はきっとどこかにある。
ぼくにとってそれは今回たまたまお祝い動画で、アテレコだっただけ。
さてさて、明日は、どんな面白いことが待っているのか。
心を開いて、フラットに、自分というフィルターを通して入ってくる世界をまるっと楽しめたらいいな、と思う。

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