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[#120] 生まれ変わりのエジプト旅⑧

エジプト旅の続き↓

熱狂的ガイドさんとお別れして、またゴミの街を走る。


“貧しさ”を考える

積みまくる

洞窟教会からの帰りも、当然ゴミの街を通って帰ることになる。

ゴミをこれでもかと積んだトラック、所狭しと走るトゥクトゥク、鳴りやまないクラクション。
喧噪と異臭の中を、平然と歩く住民。

一通り街の景色は見たはずだったが、やはり圧倒された。

そんな中で、街行く人々を観察していると、あることに気が付いた。

皆、身なりがきちんとしているのである。

服は決して“ボロ”ではないし、みすぼらしい印象は全く受けない。
髪だって、ボーボーというわけではなく、きちんと整えられている。

よく見れば、通り沿いには雑貨屋さんや床屋さんなど、生活に必要な一通りのお店も並んでいる。

“ゴミの街”と呼ばれる、スラム街のような場所だから、住んでいる人は貧困層なのだろうと無意識に思っていたが、見ている限り、決してそうではなかった。

彼らはゴミの街と呼ばれる地区で、ゴミで生計を立てて暮らしているらしい。
それなりに生活基盤が整えられているようだった。

「スラム街=貧困」
あまりに単純なその図式に、自分の中でその街や人々を当てはめていたことに気づいた。

私という外部の人間が、勝手に“貧しそうだ”と決めつけているだけで、当事者は貧しいだなんて思っていないのではないだろうか。
少なくとも、私が目にした人々の中には、困窮していそうな人はいなかった。

と言っても、今回目にしたのは街のほんの一部なので、全体像を見れば、また感じ方は変わるかもしれないが。

しかし、この体験が「貧しさとは何だろう?本当の豊かさとは何だろう?」と考えるきっかけになった。


これはエジプトに来てからずっと感じていたことだが、エジプト人は「今を生きている」という感じがする。
目の前のことに一生懸命なのだ。

果たして、今を着実に生きている人々を、“貧しい”と言えるだろうか?

一方で、モノに溢れ、食べ物にも困らない日本に住む我々は、本当に豊かだと言えるのだろうか?

物質的には豊かかもしれないが、必ずしも心は豊かとは言えない気がした。
皆日々何かに悩んでいる、不足を感じている、満たされなくて何かを求め続けている、そんな風に感じる。

過去の後悔や未来の心配ばかりをし、今に対する意識が散漫になっている気だってする。
私も決して例外ではなく。

自分の人生において本当に大切なことは何か、私は何を大事にしていきたいのか、考えさせられる機会となった。

Hanging Churchハンギング チャーチ

ゴミの街を抜け、次は“オールド・カイロ”と呼ばれるエリアに移動する。

オールド・カイロは、カイロ発祥の街でもあり、歴史地区として世界遺産に登録されている。

ローマ時代にバビロン城が築かれた要塞都市だった場所で、コプト正教会の教会が多く存在している。

“コプト教”とは、エジプトを中心とした原始キリスト教の一派なのだそうだ。
エジプトはイスラム教が主流だが、1割程度はコプト教徒らしい。


最初に向かったのは、通称ハンギング・チャーチと言われる教会。
正式名称は、“ムアッラカ教会”だそうだ。

ローマ時代の城門の一部が床に使われており、その上に建設されているため、「吊るされた」を意味する“Hanging”という名前がついているのだとか。

美しい

美しい門を通り抜けると、通路にはモザイク画が。

先ほどの教会で覚えたばかりの、“Faith Move The Mountain”の様子が描かれている。笑

“信仰が山を動かす”の絵

教会内部は、伝統のあるクラシックな印象だった。

観光客も多く、賑わっていた。

教会内部
懺悔室みたいな感じになってた

ここではボランティアのガイドさんが、丁寧にこの教会の歴史などを説明してくださった。

さっきの熱狂的なおじさんガイドとは対照的に、知的で落ち着いた印象のガイドさんだった。
なんと本職はお医者さんなんだって。

アブ・セルガ教会

続いて向かったのは、アブ・セルガ教会

この教会は、パレスチナからエジプトへ逃げてきた赤ん坊のイエス・キリスト、聖母マリア、夫のヨセフが、数週間滞在した洞窟の上に建てられたと伝わる。

静寂に包まれた教会内
赤いカーテンの中の様子

祭壇(?)の裏手には井戸があった。
イエスらが当時、ここから水を汲んで飲んでいたと伝わっているそうだ。

井戸も見学できる

ちょうど祭壇の真下辺りに、イエスらが隠れて過ごした洞窟があり、見学できるようになっている。

今は整備されているが、当時の岩盤を一部見学出来るようになっていた。

エジプトの夜

その日の夜は、エジプト人おすすめのケバブ(?)屋さんに行くことになった。

ケバブのように色んな種類のお肉を回転させながら焼いている。
それをロールタイプの生地か、細長いパンに挟んで提供してくれる。

地元では人気のチェーン店のようだ。

果たしてこれを何と呼んでいるのか、今でも分からないままだ。笑

我々のテーブルでは、ビーフとチキンを頼んで、シェアして食べることにした。
これに、つぶつぶのパスタが入っているスープも付けて。

ビーフ
ビーフ、チキン

どちらもおいしかったが、ビーフの方はなかなかワイルドな味がするなと思っていたら、なんとラム肉も混ざっていたようだ。笑

自動的についてくる酸味が強めのマヨネーズソースをつけて食べると、ワイルドさが中和されて、おいしくいただけた。

食べ進めると、肉っぽさに少々飽きてくるのだが、こちらも酸味強めの付け合わせのピクルスが、良い感じにリフレッシュしてくれる。

なるほど、ちゃんとバランスが考えられているのだな。

しかし、マヨネーズソースもピクルスも、味が濃いというか塩分は高めなので、日本人には疲れる。笑


ご飯を楽しんだ後、エジプト人の案内の元、ホテルに向けて夜道を歩くことになった。

繁華街などではなく、地元の道だ。

フルーツ屋、ペット屋、雑貨屋など、様々なお店が立ち並ぶ。
通りに、たむろする人々も珍しくない。
人々の日常の営みを目にした。

フルーツ屋さん

途中で、エジプト人の彼がバスを拾ってくれた。
バスと言ってもハイエースなのだが。

これにギュウギュウに乗り込むのが、エジプトスタイル。
街ではそんな光景をよく見かけた。

ドアが壊れていたり、ドアが開いたまま走っているワゴン車も珍しくなかった。
さすが「なんでもあり」のエジプトだ。

そしてそれは、我々にも問答無用で適用された。
総勢15名がハイエースに押し込まれたのだ。

シートの数を軽くオーバーする人数を詰め込み、なんとか皆乗り込めた。

この光景がおもしろくて、笑えてくる。

そうしてこの日も、愉快に1日を終えたのだった。

つづく。

長文、最後までお読みくださって、ありがとうございました。

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