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【観劇レポート】2018/08/02『同棲時間〜The Brotherhood〜』@新宿シアターモリエール

初のシアターモリエール。当日券、U-25で¥3500。本当にお金がないのでギリギリまで悩んでたけど、行かなかったら後悔するだろうなと思って頑張りました。

詳細はこちら。

結論から言うと、行って良かった。ほんとに。

登場人物三人の関係が複雑に展開する物語。

性別とか、国籍とか、血縁とか、人をカテゴライズしてしまうと特殊なことを描いているように思えるけど、それぞれにアイデンティティや理想があって、異なる個人がいて、その中で愛が生まれるのは普遍的なこと。自分の価値観にそぐわないものを異常と見做すのは自分の無知や愚鈍さを露呈してるように見える。ある尺度に照らして生産性があるとかないとか言ってる人とかね。

生理学的な性(身体的特徴)と性自認(自分の性はどれだと思っているか)と性指向(恋愛対象がどの性なのか)、掛け合わせたらジェンダーはあまりにも多様。普通とかいうものは幻想なんだっていうことを感じさせられる。

争いも愛も、激しさと静けさという潮の満ち引きのように舞台上に現れていて、彼らの姿が切なくて愛しい。

性愛、ましてや恋愛だけが愛じゃないことが分かってる彼らだからこそ、多様な形を信じることができるんだろう。

中国語学習者なら誰でも知ってるけど「愛」の発音は、中国語でも「ài」(アイ)。音がそのままこっちにやって来たってことだけで、分かり合えたような気がして嬉しい。

場面と場面の間に挟まれる映像もすごく良い。余白を埋めきらないで、世界を広げてる。

でも、舞台上の世界が良かっただけに、こちら側の観客の無神経が余計気になった。

私が劇場に赴くとかなりの割合でここで笑う?というお客さんがいる。

単に私の捻くれた性格のせいで、発された台詞をそのまま受け取らずに深読みして、ネガティブに捉えようとする傾向があるからかもしれないけど。

 登場人物の自嘲的な台詞や、あえて発する悪態は、笑わせるものではないと思う。その台詞を発した登場人物の気持ちを考えたら笑えない。むしろそう思ってるところに、笑いが起きると自分まで傷つく。他の観客と空間を共にするという、劇場の醍醐味であり本質を素直に楽しめない私にも難があるのは承知ですが。

ただ、自分は言葉や事情が分かってますという風に振舞うためにむやみに笑っているのであればやめてほしい、という話。観客も舞台空間をつくる要素です。

何はともあれ上演自体は、十分な爪痕を残し得る作品だったと思います。多少の粗もありましたが初ステだったのでご愛敬。

久々に人におすすめした演劇でした。人におすすめすることって、責任が生じることを意識してから避けてたけど、今回は衝動的に人に教えたくなりました。ほんとにお金ないのに戯曲も買ってしまったし…。著者の林孟寰さんにサインまでしてもらって、大満足でした。多谢!!

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以下、ネタバレありです。




トランスジェンダーのサルサ、めっちゃ美脚~~!!衣装も可愛いし、他很漂亮♡終演後ご本人に伝えたかったけど私の下手くそな中国語じゃ無理かと思って声かけられなかったのが残念。

兄弟の愛を一番感じたシーンは二人が部屋でスイカ割りをするシーン。二人がはしゃぐ姿、可愛すぎる。彼らのお互いを見る優しい眼差しを愛と呼ばずして何と呼ぶ、と思った。

あと、スイカも含めて消え物がめっちゃ多い!!一応製作側でもあるのでこれ長期間の公演は無理だわとか余計な心配をしてしまった…笑 小道具すごく大変だと思いますが楽ステまで恙なく進行することを祈ります。

記憶が不確かだけど、「偏るほどに寂しいほどに満たされるんだ」という台詞があった気がする。兄かな。美しいパラドックス。この言葉を噛み締めていたかったけど、待ってくれない舞台。この刹那性が苦しくて尊い。

兄と弟はさることながら、弟とサルサのラブシーンにも心の触れ合いを感じた。弟が「今のあんたかっこいいよ」と言って、自己の性の在り方に迷えるサルサを認める。そりゃ心が動きますよね!!弟ずるいよ~~罪な男~~!!この二人の関係はワンナイトなんだろうけど、単なる肉欲だけじゃないし、この夜生まれた心の温もりは残り続けるんだと思う。

だから、何回か出てくるラブシーンは濃厚だったけど、過激だとは全く思わなかった。だって当然の願望だと思うから。肉体で繋がるということを獲得し(てしまっ)たら、その結びつきの強さに頼りたい。肉体関係と心とを切り離して考える人は確かにいるけれど、私はどうしてもそうは思えないし、少なくとも舞台上では愛が満ちていた。「愛を作る」と書いて做爱。この言葉、私は好きです。

むしろ過激なのは兄弟の喧嘩。どこもすごい迫力。カッターのところはほんとに緊迫した。戯曲読むと流血沙汰になっているくらい。怒りにしても、愛情にしても、激情をぶつけ合う彼らの生命力に圧倒されます。










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