40歳からのずぼら妊活ガイド〜IVF編④

限りなく白に近いグレー

もうすぐ7ヶ月になろうとしている我が愛娘は、41歳の時に凍結した3つの受精卵のうちのひとつ。「低モザイク胚」と診断された5日目胚盤胞でした。受精卵凍結までの経緯はこちらからどうぞ。↓

残り少ない卵子をなんとか搾り出し、やっと凍結まで至った3つの受精卵ですが、着床前遺伝子検査(PGT-A:着床前胚染色体異数性検査)で「正常胚」と診断されたのは、最初の1つだけ。後の2つは、モノソミー22やモザイクなどが複雑に混じった明らかな「染色体異常胚 COMPLEX ABNORMAL」と、のちの我が娘となる「低モザイク胚 LOW LEVEL MOSAIC」でした。

そもそも、「モザイク」って何?という話なんですが、ものすごくざっくり言うと、正常胚(白)と異常胚(黒)の中間のグレーゾーンみたいな領域なんですね。私の5日目胚盤胞を検査したラボの基準では、胚細胞の中に見られる染色体異常が20%以下ならば「正常」。20%〜40%までは「低モザイク」。40%〜80%までは「高モザイク」。そして80%以上は「異常」と言う診断基準になっていました。

かつて、「モザイク」と言うものが診断できるようになるまでは、おそらく異常細胞が20%を超えている場合は全て「異常」と見なされたのだろうと思います。当然、それは移植するに値しない胚と診断されていたわけですが、20%から80%という広い領域にわたるグレーゾーンが診断できるようになったことで、明らかな「異常」よりは少しでも移植可能性がある受精卵を見つけ出せるようになったと言うわけです。が、その一方で、どこからどこまでがセーフなグレーゾーンなのか、まだ100%見極める方法がないという、なんとも悩ましい技術でもあるようなのです。

そもそも私が気になったのは、染色体異常が20%以下ならば「正常」って、結構、正常胚にも異常細胞入ってますよね?っていうところ。

医学的に詳しいことは分かりませんが、受精してまだ5日目の細胞なわけですから発展途上なんですよね。そこを無理矢理、一部の細胞だけを引っ剥がして検査している。だから、その時点で20%程度の異常があっても、着床してからその異常部分をセルフコレクトして成長することができるから妊娠継続するのでは?と言う話もあるくらい。しかし、これもはっきりしたことは分かっていないようです。

そして、もう一つ大切なことは、着床前遺伝子検査は、あくまでも栄養外胚葉(胎盤になる部分)の一部のみを検査しているということ。だから、栄養外胚葉が正常だとしても内部細胞塊(赤ちゃんになる部分)には異常があるかもしれないし、その逆もまた然り。栄養外胚葉が異常であっても、内部細胞塊は正常かもしれない。そうなると、最終的には移植する以外にそれを知る余地はないのです。

じゃあ、着床前遺伝子検査あんまり意味ないんじゃ?と言う声も聞こえてきそうですが、やはり、検査の結果に準じて移植する胚を選ぶことによって、妊娠の確率が倍近く上がるというのは事実。たとえモザイクだったとしても、正常(白)と異常(黒)の間のどこら辺のグレーであるかによって、正常胚と同じように妊娠継続できる可能性があるかもしれないと言う希望も生まれます。

40歳を過ぎて2度も流産した私のようなタイプは、もう流産を繰り返す時間もないので、着床前遺伝子検査を行なって移植成功率を少しでも上げることは大いに役立ったと思います。

とはいえ、やはり悩ましいのは私の5日目胚盤胞3号が受けた「低モザイク」がどこまで白に近いグレーなのか、と言うことがはっきり分からないと言うこと。低モザイクでも、異常細胞の割合に20%から40%までの幅があると言うことは、もしかしたら、21%くらいの異常かもしれないし、あるいは39%かもしれないし。しかし、そこまでは検査結果からは分かりませんでした。

そこで、Dr.Changから紹介されたラボの遺伝子カウンセラーと話をすると、モザイクが認められた染色体の部位サイズを見た感じ、「残念ながらあまりおすすめしないレベルの低モザイク」とのこと。「妊娠できる可能性はないわけではないが、移植するかしないかはあなた次第」と、なんともスッキリしない回答なのです。ああ、これは専門家にもまだはっきりわからない領域なんだな、と言うことはよく分かりました。

さらにそのカウンセラーからは、「少しでも異常の可能性がある細胞を移植すると、妊娠してからも度重なる検査のたびに心配が続くかもしれません」などと気になる発言も。それは確かにあるなあ、とちょっと先が思いやられてしまった私たち。どんなに限りなく白に近くても、やはりグレーはグレーなのです。

それでも、クリスマス休暇に訪れていたマウイの澄み切った青空の下、少々重い気持ちでカウンセラーとの電話を切った後も、私はすぐに「低モザイク」の3号ちゃんを諦める気にはなれませんでした。

42歳になるまでにあと1ヶ月。幸いにも「正常」と診断された受精卵が1個だけ凍結できたとはいえ、それが妊娠出産を100%保証するものではありません。なんとかもう1つだけ、「正常」なPerfect Eggを凍結できるまで、IVFを続けるべきか。それとも、まずは今ある正常胚の移植を優先するべきか。難しい選択に迫られながら、私たちはその年の年末を迎えました。

(次回に続く)

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