40歳からのずぼら妊活ガイド〜IVF編①

やっぱり大事なお金の話

40歳の春に自然妊娠したことが分かった時、「やった〜これで不妊治療しなくて済む!ラッキー!」と能天気なことを考えていました。40歳を過ぎたら不妊治療の中でもIVF(体外受精)にまっすぐ向かうのが当たり前のようになっているアメリカで、まず二の足を踏んでしまうのが高額な費用のこと。自然妊娠なら当然タダなわけですから、まさに「子宝」を授かった!と有頂天になっていたのです。

ところが、この妊娠は6週も継続せずに終わってしまい、半年後にまた自然妊娠をして心拍確認まで行ったものの、やはり10週まで育たず。どちらも染色体異常による流産となりました。ただ、そんな中でも希望を持てたのは、結果はどうであれ2度も妊娠できたという事実。夫(当時婚約中)の精子は異常がなかったので、質の良い卵子さえ育てばいけるはずだ!との確信を持ちました。(実はそこが一番の課題なんだけど…)

そんな経緯を経て、ハネムーン先のハワイから戻ってすぐに1度目の採卵を行いました。お世話になったクリニックは、サンディエゴにあるHanabusa IVF。神戸にある英ウィメンズクリニックの海外連携クリニックにあたります。ここを選んだ1番の理由は、心から信頼するIVF先輩ママから当院を率いるDr.Changを強く推薦してもらったこと。Dr.ChangはもともとNew YorkにあるNew Hopeという不妊治療クリニックにおられた頃から、日本では有名な新宿の加藤レディスクリニックなどでも行われている自然IVFや、クロミッドを使った低刺激IVFの、アメリカにおけるパイオニアと言われる先生です。

初回の電話カウンセリングで私の各種検査データを見たDr.Changからは、
「君ならうちに来なくても、そのうち自然妊娠するかもしれないし、あるいはどこのクリニックでやっても上手くいくと思うよ!」
とのありがたいお言葉をいただきました。彼のところに来る患者さんは、高齢というだけでなく、様々な婦人科系の問題を抱えている方が多いため、彼らにとってのLast Resort(最後の頼み綱)となっているようでした。しかし「来なくてもいいよ」と言われると行きたくなるのが人の心というもの笑。

何しろ、その前に受けた別の地元のクリニック「P」での初回カウンセリングでは、「あなたの年齢と卵子残数から考えると、IVFをやっても正常妊娠できる確率は高くて20%程度と思ってください。」と言われていました。おそらくそれはかなり現実に近い数字だったとは思うのですが、「20%」という数字が頭に刻み込まれてしまい、「それじゃあもう一度自然妊娠トライする確率とそんなに変わんないかもなあ。でも時間ないしなあ」などとIVFへの希望を少し失いつつ逡巡していたのです。(ちなみに40代の自然妊娠で無事出産まで行ける可能性は5%くらいだそうですが。)

また、価格面でもHanabusa IVFは気持ち良いくらいの明朗会計。多くのクリニックにありがちなパッケージ価格はなく、患者の状態に合わせてメニューや薬剤を選ぶので、採卵できなかった場合や、受精卵が5日目胚盤胞(blastocyst)まで進まなかった場合には、不要な費用がかからないように配慮されていました。薬剤も、モニタリングに合わせて量を調節するので、最初から一定量を買わなくてはならないこともありませんでした。

実は前述した地元のクリニック「P」では、強腰のセールスパッケージ(採卵・IVF・薬剤・着床前遺伝子検査などなど、全てトータルで一回5万ドル=500-600万円、保険無しの自己診療の場合)の見積りが来て、面喰らっていました。特にこのクリニックは、見晴らしの良い一等地に事務所を構えており、受付へ入った瞬間に「ここの家賃が価格に乗っかってるんだろうなー」と思ったことを覚えています笑。多くの患者が、雇用主の提供する不妊治療に特化した保険を使って利用するクリニックだったので、とりわけ高額だったのでしょう。その他の地元のクリニックでも、やはり保険無しでは一回2万ドルから3万ドルくらいが相場という感じでした。

一方のHanabusa IVFは、保険は一切受け付けないにも関わらず、一度のIVFにかかった費用が採卵、IVF、薬剤や遺伝子検査なども入れて1万ドル程度。5日目胚盤胞(blastocyst)が取れなかった時は、もっと安く済んでいました。医療費の異常に高いアメリカで、保険なしの自己診療で行う不妊治療クリニックとしては奇跡的に良心的な価格だと思いました。バイオサイエンス分野が盛んなサンディエゴという土地柄、それなりに市場競争があるのかもしれません。(他のサンディエゴのクリニックは行っていないので情報は持っていませんが。)アジア人専門の卵子バンクも併設されていて、日本を含めアジアからの患者さんも訪れているということでした。

もちろん、安かろう悪かろう、ということはなく、むしろ逆。こぢんまりとしたクリニックだったので、レセプショニストたちからナースたちまで優しい愛想の良い人ばかりで、すぐに私の名前を覚えて友人のように接してくれました。ほぼ毎日の施術を一人でこなしているDr.Changは大変お忙しい方なので、診察時間もチャッチャと手短で余計な会話は一切しません。でも、質問にはなんでも答えてくれるし、機械的な対応と感じたことはありません。

そしてどことなく、愛嬌があるんですよね、Dr.Chang。人間、愛嬌って大事だな。同じことをしてても、愛嬌あるとないとでは、印象がまるで正反対。結果がうまくいっても行かなくても、受け入れられる誠実さを感じました。とにかく経験豊富で、腕は確かでしたので、安心して任せられたことは大きかったと思います。カリフォルニア、あるいはアメリカ国内で、IVFによる高齢妊娠出産を希望している方には是非オススメしたいクリニックです。

…と、Hanabusa IVFの宣伝はこのくらいにして(回し者ではありません)。次回は、IVFの薬剤について少し触れてみようと思います。

次回に続く)

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