【コラム】元代理店マンが思う~広告代理店とは保険屋でもある~

もう辞めて10年経ったし、内部告発みたいな話を。(笑)

~今回の電通問題とは一切関係ございません。私のただの「呟き」でございます~

まず「中抜きビジネス」とか揶揄されてのは、今も昔も変わりまへん。それが『代理店』っちゅーもんです。中抜きされるのが嫌なら発注主さまは直接全部やったらよろしいですやん。実際そうしてはる企業さんもようさんいはります。それだけの話。

広告代理店は広告の全ての企画を発注主さまから委託されてやってるし、旅行代理店は旅行に関する全ての企画を発注主さまから委託されてやってる。「JTB高いわ~」と思うなら、航空券もホテルも料理もバスも、全部自分で手配したらよろしいですやん。私なら旅慣れしてるし、いつもそうさせてもろてます~。

私もその昔、代理店とやらに分類される業種にいた時、ようさん世間様のいう”中抜き”をさせてもらいましたわ~。100万円で頂いた案件を50万円で委託したり、1億円の案件を8千万円で委託したり。

でもその”中抜き”と世間さんが言わはる中身、実は利益だけじゃなく『保険代』も入ってますねん。例えば・・・・・・

【CM制作の際の保険】~薬物タレントとほうれん草の虫のケーススタディ~

最近も何件かありましたなぁ。芸能人さんの薬物問題。

例えば1億円で洗剤のCM作りまひょ~ってなって、スポンサー様から制作費として責任持って1億円お預かりしたとします。そのうち8千万円を使って、タレントさんのキャスティングやいろんな制作委託したりして無事完成したとします~。

さぁ、いざCM放送!ってなった途端、まさかのタレントさんの不祥事ですわ。もちろん、スポンサー様大憤慨!!!おーまいがー。。。

そしたらどうなるかって?そう、たいがいの場合は代理店が全責任とってもういっぺん別のタレントさんのキャスティングから制作までするんどすわ。タレント替えての第二弾CM制作。仮に5千万円でできたとしまひょ。

■スポンサーさんからは1億円のお預かり(売上)

▶出費①:一回目の制作費8千万円(原価)

ここまでやったら【利益2千万円】確保できてたのに・・・

▶出費②:2回目の制作費5千万円(原価)

となったら、【利益-3千万円】の大赤字ですわ。とほほ~。

そんなもん、「代理店さん悪くないんやからスポンサーさんにいくらか肩代わり(再度請求)してもろたらよろしいですやん?」と思わはるかもしれへんけど、もし飲食店に行って、ほうれん草のおひたしにちっちゃいちっちゃい虫入ってて、お客さんに「えらいすんまへんでした。もいっぺん作るんで、再度、おひたし代500円頂戴させてもろてよろしいですやろか?」って言うたら「はぁぁ~??」ってなりますやん。

野菜を育てたのは八百屋でも、それを責任もって出したのは料理人。料理人が「うちは、ほうれん草湯がいて味付けることが仕事ですねん」とか言い出したら、いやいや、料理人さん、最終的な虫のチェックもあんたの仕事やろ?と言われるのが常。

お客さんに再度の請求なんて、できやしまへん。

※広告屋の場合、こういうのも契約次第だと思いますけどね~。訴訟大国の西洋さんなんかは明確にこうしたケースを想定した契約書を取り交わすんでしょうけど、日本のビジネスは案件大きくなっても基本は”性善説”みたいなとこありますからね。失敗したときのケースを書くなんてネガティブ!と思われるのか、そうしたケースを想定しない商談が多い気がしましたね。当時は。

ということで、おひたしの原価と手間賃(人件費)は全て、料理人さんで肩代わりですわ。「もしその八百屋が気に入らんかったら、あとは料理人さんと八百屋さんで好きに揉めて。とにかく今すぐ!おひたし出してな!タ!ダ!で!!!」(場合によってはむしろ慰謝料請求されるパタン)と言われて、詫びて詫びての心臓止まりそうなくらいのトホホ~ですわ。

ということで、広告の世界なんてタレントさんの不祥事だけやなく、制作側で文字の誤植が一個でもあってもそれは命とり。代理店に求められるのは、結局は人の仕事やから間違いは起こりうるけど、それを人数総動員してでも絶対起こさないというアナログな努力と共に、予測不能な事態に対しての”保険”として、スポンサー様には火事やら台風やらが急に発生しても一円も追加請求しませんので、その代わりすんまへんけどようさん予算お預かりさせてもらいます~。という保険的な役割。

ということで『代理店は保険屋でもある』という本題に戻ると、スポンサーさんは2千万円”中抜き”されるのが嫌なら、8千万円で自社の管理の下、CM制作しはったらよろしいですやん?ということ。その代わり、タレントさんが不倫してブランド傷ついても自己責任。それでえぇと腹くくれればそんでえぇおもいます。

広告の全作業・全行程やなくても、資生堂さんとか自社でコピーライターさん抱えてはったりします。ハウスエージェンシーってのもありますね。中には”お抱えのタレントさん”がいはったりもします。その代わり勿論、全て自己責任。

中抜き2千万円の価値、それは保険。

■ぬしさま「なんかあっても、泥ぜんぶ被ってくれはりますよね?代理店さん?」

■代理店「嗚呼、ぬしさま。答えは勿論『イエス』でございます。そうならないように死ぬ気で働かせてもらいます~。」

ということで実際に死ぬ人も出てますよね。代理店ってそういうところ。

ということで、僕が思う、ちゃんと仕事ができる代理店マン。※個人の感想です。

■絶対に失敗しない(利益を確保する)という結果。<ただの”中抜きメッセンジャー”にならない。あらゆることを想定し、せめて”人災”はしっかり防げよ、という話。>
■下請け(制作)さんを人として扱う。<きちんと対価を払う>

二つ目はね~、けっこうありましたよ~。当時。追加分の作業が発生しても身銭を切ろうとしない大人達。今はどうか知らんけど。僕が当時「ああ、この上司はちゃんと仕事してるな」と思ったのは下請けさんにちゃんとお金を落とせる人。代理店マン(営業)なんて所詮は手足なんも動かせないハッタリ集団ですから。自分もそうでした。だからこそ下請けさん含めみんなが気持ちよく手足を動かしてるようにチームを導く(下支えする)のは最重要。

あー、懐かしい。懐かしい。

今はそんなこととは一切関りもせず、ただひたすら「仕事で死ななくてよかった~」と胸を撫でおろしつつ、たまについてるちっちゃいちっちゃい虫ちゃんをはじかせてもらう仕事をさせてもろてます~。ちゃんとせな人の激昂に触れたらかなんから。こわやこわや。

#広告代理店 #広告 #中抜き #コラム #吉本悠佑 #イケ麺バー #イケ麺デリ #イケ麺ちゃんねる #電通

クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。