【エッセー】『殺生』

家にねずみ(以下、チュー)が出た。見つけるとぎょっとはするが、実は「京都あるある」だったりする。


僕が住んでる京町屋なんてまさにそうなんですが、京都の木造の家は『築不明』な物件が多い。つまりいつ建てたかよくわからない。(笑)

そのたいていは築70年?80年?とか平気で経ってたりする。もちろんもっと長い物件もごろごろある。リノベーションしてあったりするので一見新しそうに見えるんですが、基礎工事はなかなかいじれない(密集してるし重機が入れなかったりもする)ので、たいていは『穴だらけの家』といっても過言ではない。だから隙間風がスースー吹いて京都の家は”換気がとってもよろしい”のである。

今はレストランや民泊になっているような町屋も、元はそうした建物が多い。


不思議なことにこうして”チュー”が出るとゴキ(以下、G)が出なかったりする。食べてはんのやろか?蜘蛛が出ると、蚊が出なかったりもする。

生き物は生き物を食べて生きているんだなと思う。


ということで、とりあえず業者さんを呼んで”チュー”の相談をした。


『どうします?毒まきます?』

と聞かれた。


確かに食べ物をかじられたりするのは被害ではあるけど、それはタッパーとか金物の箱に入れておけば防げるし、”チュー”との関係は僕も京都に来てからあちこちで見かける仲なので、ウチが食べ物の宝庫だと思われなければ自然とご近所さんへ引っ越しはるやろなーとは思ってた。「最近みぃひんなあ」と。


神戸なんかでも川沿いに猪が山から人里へ下りてくるニュースをときどき見るけど(神戸あるある?笑)、猪はんらも山にたまたま食べ物がなくなったから下りてきただけで、別に人間に悪さする意思はないはず。そもそも人間なんか”食べれもしない”し、彼らからしたら微塵のキョーミもないのかも?


僕も京都に来た頃はチューを見るとギョっとしまくって「殺してしまえ!」と思ってたけど、そんな殺したところで”換気抜群の家”の構造を変えない限りは食べにきはる状況は変わらないということは、今となってはもう理解できた。たまにドラえもんみたいに寝てる間に耳をかじられたらどうしようと心配になるけど、それはさすがに漫画の世界だけかな?と心を落ち着かせようとする。(笑)


「いや、殺さんくてもいいんです。こっちでたべもんの管理はしっかりしますんで、あの子らがうちにゴハン食べにきはらへんかったらいいんです」

と僕が言うと、その業者さんが

『そうですか。ご理解あってよかったです。私もできれば殺生はしたくないもので・・・仕事なんで「殺せ」と言われたらそうしますけど、京都の方はそういった不殺生にご理解ある方が多くて助かってます』と。


うちの近所の商店街のオバちゃんらと喋ってても、どこそこの店が潰れたから”チュー”がまたようさん出てきはるかもなあ、みたいな会話を、まるでご近所さんが引っ越したかのようにしはる。


ということでウチは、チューにかじられて空けられた穴を塞ぐ工事と、チューが嫌がる匂いが出るしかけだけ置いて、今回の工事は終わった。ちなみに今回の発見は僕の”青汁”をチューがかじってはったこと。あらまあ、おチューはんも最近は健康志向なんやろか?と(笑)昔はコメとか鰹節とか好きやったのに。しっかり固い入れもんに入れせてもらいました。



こんな生活をしていると、たまにコンクリートバッキバキのマンションに遊びに行くと、扉がちゃんと閉まるし、空調がしっかりしているし、全て隙間なくピチッと建て付けが成っているのですごいなあと思ってしまう。(当たり前のことですが。笑)

でもやっぱり少しすると息苦しくなって「窓開けていい?」と友人に聞くと、『そこの窓なんて久々に開ける』とか言う友達もいたりしてびっくりする。そっか、窓よりエアコンか。普通そっか。そうか?



どうでもいいけど「猪」に「鼠」に、なんか干支っぽいね。次はインドみたいに「牛」が出るかな?(笑)

さあ殺す?殺さない?


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クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。