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市内RPG ①回覧板と魔王

ざっくり言うと
「魔王を倒してください」
という回覧板が、ぼくの家に届いた。

ぼくは福井丘県子郡市に住む16歳。性別は男。職業は高校生。教員の父と専業主婦の母、それに中学生の妹と暮らしている。

子郡市は、今はさびれた来目市のベッドタウン。人口6万人。田んぼと小麦畑と住宅地、そして築五川と華立山しかない平な町。何の特徴もない退屈な町。ただのんびりしたところが魅力?かな。

回覧板は月1回。
いつもは読まない回覧板だが、何故か目に止まったのだ。

「母さん、魔王だってよ」

「あら、そう」
洗濯物を干しながら、母はそっけなく答えた。

「困ってるみたいよ」
「あら、そう。助けてあげれば」
「そうだねー」
そんな軽いやりとりだったのに、まさか、旅立つことになるなんて、このときは少しも考えてなかった。

夕食のとき、またこの話題を振ってみた。
「魔王を倒してほしいって回覧板にあったよ」
「魔王には市長も困ってるんだろ」と珍しく早く帰ってきた父が言った。
「魔王ってどこにいるの?」
「それがわかれば苦労しないわよ。」母は、サラダをつぎ分けながら言った。
「警察が逮捕しないの?」
「バカだなー。警察は人の犯罪で手一杯で、魔物までには手が回らないよ。魔物は魔物ハンターが倒すさ」
「魔物ハンターって?」
「勇者や戦士って職業あるだろ、あれだよ。市役所で登録したらいいらしいよ」
「ふーーん」
「ところで、夏休みの補習、明日まででしょ。夏休みのバイト、自分で探しなさいよ」
話の風向きが悪い方に向いてきたので、ぼくは自分の部屋に逃げ出した。

ベッドに寝転びながら、魔王のことを考えてみた。
魔王とは何者か?
きっと恐ろしい呪文を使ったり魔物を引き連れて悪いことしたりするのだろう。ねらいはやはり世界の滅亡か?
そんなに悪そうなヤツなのに、警察は手が出せない。人の犯罪が多いから?手が回らない?意外とのんきだな。
誰か倒してくれるのかな、、、まずは、魔王の居場所を探さないと、、、ああ、バイトも探そう、、、

そんなこと考えてるうちに、寝落ちしてしまったようだ。

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