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哺乳瓶で変わる!? 赤ちゃんのお口の育ち【授乳期】

赤ちゃんは生まれてしばらくの間は、母乳や育児用ミルクで育ちます。
母乳にはあらゆる面で利点があることが知られていますが、
ここでは「お口の育ちの視点から、いかに飲むか」をお伝えします。

母乳と哺乳瓶の出方の違い

母乳は「吸っても出ない」

母乳が出る仕組みを見てみましょう。

赤ちゃんの上あごには、おっぱいを飲むとき乳首がおさまる”くぼみ”があるのをご存じですか?
赤ちゃんがおっぱいを飲む際は、乳首をこのくぼみにセットするように深くくわえる必要があります。
その状態で、上あごと舌、頬で”ギュッ”と挟むようにすると飲める仕組みになっています。この動きは噛む動きに似ています。

哺乳瓶は「吸って出る」

一方で、哺乳瓶はどうでしょうか。

哺乳瓶は、形こそおっぱいに似せていますが、出る仕組みは母乳とは全く異なります
一般的な哺乳瓶の二プルは、先端に丸い穴やクロスの切り込みが入っています。
この二プルで母乳を飲むときと同じような口の動きをしても、中身が出ず、うまく飲めません。
なぜかというと、一般的な哺乳瓶の二プルは、母乳とは違って、文字通り「吸ったら出る」のです。
この飲み方が、実は大きな違いなのです。

飲み方が変われば お口も変わる

母乳を飲むときの口の動きは、舌や口の周りの筋肉をよく使うため、発達が促されます
一方、哺乳瓶の「吸う」飲み方は、舌や口の周りの筋肉の動きがほぼありません。

この図は、筋電図で見た咬筋(咀嚼に使う筋肉の一つ)の働きです。哺乳瓶と母乳とでは、咬筋の使い方が違うということが一目瞭然ですね。
吸うタイプの哺乳瓶を頻繁に使うことは、おっぱいであげるよりも咀嚼に関連する筋肉を使う機会を減らすことになります。

母乳の飲み方ができる哺乳瓶を選ぶ

育児用ミルクで育てる場合でも、お口を育てることは可能です。
それには、ニプルを選ぶ必要があります。
筆者が知る限り、母乳と同じような飲み方ができるとされている哺乳瓶二プルは、ビーンスターク社の「赤ちゃん思い」という商品だけです。
この二プルは内側に弁がついた特殊な構造をしており、一般的な哺乳瓶ニプルのように、単純に吸っても中身は出ませんが、母乳を飲むときのように押しつぶすようにすると出る仕組みになっています。

実際に使ってみた

実際に、水を入れた哺乳瓶で、一般的な哺乳瓶二プルと、「赤ちゃん思い」を使い比べてみました!
先述の通り、口の使い方は両者で全く違いました

筆者(大人)個人の感想としては・・・

●一般的な哺乳瓶ニプルの「口をすぼめて吸う」方が楽に感じた
●「赤ちゃん思い」では、舌を使って口蓋(上あご)にニプルの先を押し付けなければならず、顎全体を使うことが促されるようなイメージ。コツをつかめばテンポよく飲むことができる
●「赤ちゃん思い」で飲むのは、コップで飲むときと近い感覚(おそらく舌の動き)

赤ちゃんの立場になって使ってみることで、両者の明らかな違いを実感できました。大人になってから哺乳瓶を使ってみることはなかなかないと思いますが、パパママたちにも機会があればぜひ試していただきたい体験です😀

(画像はイメージで実際に飲み比べに使用したものとは異なります)

おっぱいやミルクから栄養をとっていた赤ちゃんも、次のステップでは離乳食が始まりますね。
歯の状態も体の発達状況も刻々と成長していく過程で、食べる経験を重ね、少しずつ大人と同じ食事が食べられるようになっていきます。

そのなかで、少し心配な「食べ方の癖」を残したまま大きくなるケースがあります。例えば「ため込み癖」「吸い食べ」「丸のみ」などです。

生涯の健康の基本になる「食べ方」は幼少期に確立します。正しい食べ方を身に着けるため、特に幼少期の頬や舌、唇の筋肉がしっかりと使い適切に発達させることや、正しい姿勢は大切です。

哺乳瓶選びに「口の発達」の視点を

母乳は離乳食前の”咬筋エクササイズ”!

「食べる」ステップのために必要な機能を練習できるという点では、母乳の飲み方には、一般的な哺乳瓶にはないメリットがあると言えそうです。

そのため、母乳育児ができるならよいですし、育児用ミルクで育てる場合には、ぜひ母乳同様にお口を育てる役割も果たせる二プルを選択肢に入れていただくことをお勧めします。哺乳時の”お口のエクササイズ”が、その後の離乳食の進みも助けてくれます!

種々の事情で母乳育児ができないケースはありますし、狙って混合にしようとした場合に母乳が出なくなったり、乳頭混乱(哺乳瓶を使った後赤ちゃんがおっぱいで飲むのを嫌がり始めること)が起こったりして、意図せず完全ミルク育児になるケースもあります。
それぞれのライフスタイルに合わせて、必要な支援を受けながら、納得のいく方法を選びたいですね✨」

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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今回の記事は管理栄養士の道盛が担当しました。

参考
・宋 政文, 田村 康夫, 高柳 英司, 吉田 定宏 「吸啜運動時における咀嚼筋活動 第2報 母乳と人工乳の比較」小児歯科学雑誌/30 巻 (1992) 3 号
・筋肉の働き/テーマパーク8020
https://www.jda.or.jp/park/function/index04.html
・科学的根拠に基づくミルク育児のポイント https://note.com/sho_x/n/nfca856b2e40b#LHYM6
・【助産師解説】赤ちゃんの乳頭混乱!予防法は?克服はできる?https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3526


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