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ちょっとだけ、読んだ気になるプルーストセレクション【失われた時を求めて】PART1

プルーストセレクションと題して、個人的にお気に入りのラインを集めてみました。味わい深い・細かすぎる・至極の例えを自分好みにセレクション。

紅茶とマドレーヌなど有名な挿話は、代名詞でもありますが長すぎる(7ページある)ため含まれません

全14巻、7974ページの一部を覗き見したい方へのおすすめです。お気に入りましたらご自身でプルーストの世界へ足を踏み入れてみてください。

★1〜8巻までの内容ですが、3巻以降100円★(9巻〜14巻はPART2にて)

(補足)
本編感想で記した以外のお気に入りセレクションです(岩波文庫)
・( )内は、補足のため加筆
・人物名は省略している場合があります


第1巻(コンブレー)

人間と言うものは、誰が見ても完全に同一と言うわけでもなく、契約書や遺言書のように全員から同じように理解されるわけでもない。我々の社会的人格なるものは、他人の思考の産物なのである。

私(スワン)が新聞に批判的なのは、毎日くだらないことに我々の注意を向けるからで、それに引き換え生涯にせいぜい3、4度しか読まない本には大事なことが詰まっています。

(昔の思い出が)改めて聞こえてくるのは、今や私の周りの生活がいっそう静まり返ったからに他ならない。

私が毎晩どれほど辛い思いをしていたか、母や祖母はそれがわかっていたが、苦痛を免除するのには同意せず、私に苦痛を制御し、神経質な感受性を薄め意思を硬くする術を教えようとした。

(中略あり)

私が勝利を収めた(母にお休みのキスをもらえる)としても、それは母の意思に反してであり、だからこそ私はこんな事態になるべきではなかったと言う気がした。子供の時に味わったことのない母のこの新たな優しさよりも、母に怒られる方がまだしも悲しくはなかっただろう。目には見えない親不孝な手で、母の心に最初のシワを刻み付け、最初の白髪を生じさせた気がしたのである。

(中略あり)

祖母がこれらを選んで買ったのは、そのような古い事物は、時間を遡る不可能な旅への郷愁をかき立て、精神にありがたい影響を及ぼしてくれるからである。

(中略あり)

叔母が必要としていたのは、己の療法に賛成し、己の苦痛に同情し、なおかつ予後について安心させてくれる人だった。

自分の外にある対象を見つめる時、それを見ていると言う意識が、私と対象の間に残り、それが対象に薄い精神の縁飾りをかぶせるため、決して対象の素材に直に触れることができない。その素材は、いわば触れる前に蒸発してしまう。灼熱した物体を湿った対象に近づけると、その手前に必ず気化ゾーンが生じ、対象の湿り気そのものに触れることができないのと同じである。

才能がある、そう言わなかったのは、才能があるかどうかわからなかったからである。新しい作家の特別な風貌を見て、それが一般概念の集合体の中で、大変な才能と言う名に値する典型だと認識するには、実に長い時を必要とする。

父親にスワンの奥さんとお嬢さんとは付き合ってはいけないと言われていたために、返って2人と私たち家族の間に存在する大きな隔たりが想像され、2人に威光を授ける結果となった。

今も旅に出て、野原でサンザシやりんごの木に出会うことがあると、ただちに私の心と通じ合うものがあるのは、いずれも私の過去と言う深い次元に位置するからである。

第2巻(スワンの恋)

恋なくしては、楽しみもなく、恋とともに終焉を迎える楽しみの中に、恋心はおのが根拠と持続の保証を求めるものだ。

賽は投げられたのさ。僕は心の広い人だけを愛し、広い心の中だけで生きて行く決心をした。

〜なんで描いたものなのか、わかりゃしません。糊なのか、ルビーなのか、石鹸なのか、ブロンズなのか、それとも太陽なのか、いや、ウ◯チなのか!
画家が「ウ◯チでできている」と言ったとき、フォルシュヴィルは食卓をぐるりと見渡してこんな発言が受け入れられるのかどうかを確かめ、しかるのちに口元にとり澄ました協調的微笑みを浮かべた

(中途略あり)

夫人は押し黙っているのは同意のしるしではなく、無生命の無関心な沈黙なのだとわかるように、突然顔からあらゆる生命と動きと拭い去った。これはもう鋳造用のロストワックスであり、石膏の仮面であり、記念碑のための模型であり、産業館に飾る胸像であると言うほかなかった。

本物の断片になるものの四隅がぴったり合わさるのは、恣意的にそれを取り出した本物の事実と隣接する他の断片だけであり、いかにその断片を嘘で固めた他の断片にはめ込もうとしても、常にはみ出す部分や足りない部分が残り、その断片が取り出されたのはそこからではないことがばれてしまう。

オデット(スワンの恋の相手)が、フォルシュヴィル(恋敵)との関係を隠そうとすればするほど、真実が漏れ聞こえてくる箇所。上の表現も素晴らしいけれど、この真実の断片を「神聖なベール」(ゴルゴダの丘へ向かうキリストに、ヴェロニカが差し出したハンカチ)に例えたところで、昇天。

どれほど己に自信のある人でも、新たな環境の雰囲気の中に投げ込まれると、気後れからか、人の真似をしようとする気持ちが昴じる。

人間は2つの種族に分かれ、一方に自分の知らない人たちに好奇心を抱く種族がいるのに対して、夫人(ヴェルデュラン夫人)が所属するもう一方の種族は、自分の知っている人たちに興味を抱く。

スワンは、その片メガネを煩わしいもの想い自体であるかのように脇によけ、その曇った表面から心配事をハンカチで拭い去ろうとした。

人は自分の幸福がわからない。決して自分で思うほどには不幸ではない。すると今度は人は自分の不幸がわからない。決して自分で思い込んでいるほど幸福では無いのだと考える。

誰にも嫌疑をかけられないとなると、全員を疑うほかなかった。

意味があるのは行為だけで、決して我々が口にしたり考えたりすることではない。

悪徳に染まった人は、その悪徳を疑われないよう、人前ではいつも変わらぬ品行方正を装っているせいで、自分の悪徳がどんどん増大するのに気づかず、自分が正常な暮らしから少しずつ逸脱しているのを感じ取れない。

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