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誰かに薦めたい謎だらけ小説【ねじの回転】岩波文庫チャレンジ63/100冊目

科学の本だと勘違いしていたが、ちゃんと小説。であるならば、タイトルの意味は!?って気になりますよね。

内容には直接関係ないので、最初に触れてしまうと「一捻り、二捻り」あるから、と言うのが大方の見方で解説にもそのようにある。

議論百出の書」と言われるだけあって、読んだ人それぞれがそれぞれの感想を持ちうる内容だった。

あらすじには触れない様に、自分の見解(と言うほどのものでもないけど)をここに残そう。そして「ひねる」は、どうもしっくり来ないんだ。

物語の設定は「お屋敷に幽霊が出る?」と言う簡単なものだが、常に不穏な空気が付き纏い、終始ああではないか、こうではないか、と楽しめる

読む人によって違う見方になる要素は、書き方が曖昧な部分。結局こうなった、と言う確定要素がない。結局幽霊がいたのかいなかったのかもよく分からない。幽霊いた説、いない説。これだけで二分される。


自分の読み方(ネタバレなし)

ホラーが苦手な中で数少なく見てきた映画も多少影響されていると感じる。ニコール・キッドマンの顔しか記憶にないけれど、映画「アザーズ」は解説にも載っていた。元ネタではないが「ねじの回転」ありきの映画の一つとの事。

正解は・・たぶんないので、堂々と発表しておこう!

①結託して家庭教師を追い出そうとしている説
②家庭教師が幽霊説
③家庭教師以外が全員幽霊説
④子供は幽霊の生まれ変わり説
⑤子供は家庭教師の心の鏡
⑥マイルズ=ダグラス説
⑦単純幽霊譚

理由とか
①全員が怪しいので、読み始めの頃はこうだろ!と思っていたが、結局追い出す意味が見つからないので、たぶん違う
②映画の見過ぎ
③一瞬よぎっただけ
④結構そう思っている。子供と幽霊は何かしら関係がある!と思ってしまう
⑤子供が天使だったり悪魔だったり、家庭教師の心を映している気がする
⑥1番議論される所だと思う。自分はこう信じたい(家族構成や年上好みが類似)。
⑦思わせぶりなだけで、結局は幽霊譚、あるいはまぼろし〜☝️

読んでいる箇所によって、①〜⑦が出たり出なかったり。総合して思っているのは、子供は実在。幽霊、というより幽霊のような実体のない何かは存在。家庭教師の心模様が反映されていて、恐怖を覚える時は見える。子供は純真だから?何かがいるのを感じる。そして実体のない何か、は純真な子供を通して時々実体化する。ただそれは家庭教師の心の内に過ぎない。

あ〜何言っているか分からなくなってきた。

と、
色々想像できるのが作者の仕掛で、結局⑦ただの幽霊譚に落ち着いたりもする。

タイトルの意味

タイトルの意味、解説にあった「捻り」とは一体・・??

読者的には「曖昧性」作者的には「捻った」という事なのだろうか?内容もともかくだが、タイトルの意味についても話題豊富に思える。

それとも、実際の出来事としては⑦幽霊譚であって、内容は手紙に残した事として語られるから、手紙を残した人がわざわざ「捻った」、ねじを回転させた、というのだろうか?うーむ。

色々な読み方

色々な読み方に加えて、タイトルの意味する所もモヤモヤモヤモヤしたので、他にはどんなのが?って色々見ました(笑)。

こちら自分的お気に入り。

①松岡正剛の千夜千冊さん
https://1000ya.isis.ne.jp/0429.html

タイトルの意味を「ねじのように食い込む」と解釈されていて、「捻る」よりもしっくり

②卍丸の本棚さん
Turn of the Screwが登場する原典を抜粋してくれている✨
加えて、⑥マイルズ=ダグラスは作者のトリックとしているのも興味深い✨

そしてさらに考えさせられる。終わらないお話ですね、これ。

③②で紹介されている原文
https://www.gutenberg.org/files/209/209-h/209-h.htm


本作を評価★2とした理由
色んな読み方ができる点、読者にその読みをさせる作者の技巧という点で面白い本だと思う。人に勧めたい、読書会の課題本に最適!とも思う。が、曖昧性が勝ってしまって、読後感だけで評価すると2かな〜(相対評価のため、それだけ岩波古典が面白い証拠でもある😁)。

もう一つの収録作、デイジー・ミラー

岩波文庫には「ねじの回転」と「デイジー・ミラー」の2中編が収録。

作者50代の作「ねじの回転」が強烈すぎて、30代の「デイジー・ミラー」がやや霞んでしまったのが正直な所だが、アメリカ中編小説で5指に入るとされている。

作者自身がアメリカに生まれ、長年ヨーロッパ滞在後にイギリスに帰化した事もあり、自由奔放なアメリカと、歴史と伝統・行儀作法に厳しいヨーロッパの差異、特に風俗習慣の差異が描かれている。

無邪気で自由奔放、美人のデイジー・ミラーはキャラが一人立ちする人気を誇ったよう。一読の価値あり。

ところで本作は「当時上流のアメリカ娘は花嫁修行の仕上げにヨーロッパ旅行をするのが流行」とあり、スイスやローマに滞在する優雅な様子も描かれている。

作中に登場するスイスとフランスにまたがる青い湖、レマン湖と中央シヨン城。周辺には高級ホテルが立並ぶ。

レマン湖とシヨン城(GoogleMapより)

2作を読み終えて、
身分違いの交際は至極下品、という当時の社会通念が、読む上での一つ大事な認識だと感じた。共通して出てくるこの概念を理解していないと、ロミ&ジュリ的なロマンスが働いて、悪なことをしている感じがしないので。


岩波文庫100冊チャレンジ、残り37冊🌟

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