✳︎堕天使 ニース✳︎(13)
✳︎心が温かくなる堕天使と少年の物語です✳︎
13ページ✳︎
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病室に着くと、ルイは用意されていたパジャマに着替えベッドの上にすわった。
案内してくれた看護師が、簡単に入院の説明をして部屋を出ると、ニースはさっきから気になっていた事を聞いた。
「ルイ…、お前何だか嬉しそうに見えるけど…。入院が嬉しいのか?」
待合室で待っていた時の表情とは、まるで違う穏やかな笑みを浮かべる表情のルイが不思議に思えたのだ。
「そうじゃないよ、ニース。入院は不安さ、だけどキミが側にいてくれて何だかホッとしたんだ。きっと君がいなかったら…」
そう言いかけたルイは照れくさそうに笑って、ベッドの中にすぅと入り込み横になった。
ニースはその言葉で、胸の奥を締め付けられるような苦しさに占領され、また泣き出しそうになった。
そんな自分に気付かれないように、スッと窓際まで行き涙を堪える為に、目頭に力を入れて外を眺めた。
地上に堕ちたばかりで、何も分からない…。
自分自身が、どうなるのかさえ分からない堕天使なのに、ルイを救う方法なんて見つける事が出来るのだろうか…
そんな事を考えながら、昨日まで自分がいた青い空の向こうを覗くように見上げ、ギュッと瞼を閉じ、零れ落ちそうになった熱い涙を堪え切った事を確認すると、もう一度窓の外を見た。
(んっ!)
窓のすぐ側にある大きな木の陰で、不自然に動く枝に目がいった。
そして、繁った枝の後ろで動いた黒い影を見つけたニースは、目を凝らしてじっと見直すと、その影はゴソゴソと動き出し、木の影に隠れていた何者かが顔を出した。
(んっ!あいつは!!)
そこにいたのは、昨日の小悪魔だった。
(何をしに来た!)
ルイに気付かれては困ると思い、小悪魔をにらみつけ威嚇をすると、ニースに見つかった事に気が付いた小悪魔は、気まずそうにいったん木陰に隠れた。
(あいつー!)
ニースが、心の中で叫んだ時、
ぴょこんと小悪魔が顔を出し、ニースに手招きをした。
もちろん、ニースは呼ばれなくても小悪魔のところに行き、悪さを企んでここに来ているのだったら、ぶん殴るつもりだった。
ニースは窓から飛び出して行くことも出来るのだが、そんな事をしたら、小悪魔の事をルイに知られてしまう。
焦る思いを誤魔化しながら、反対側にあるドアに向かい病室を出ようとした。
「ニース、どこに行くの?」
ルイが声をかけた。
「あぁー、何か、面白いものでもないか、ちょっとぶらついてくるよ」
何事もないような口調で答えて病室を出ると、一目散に小悪魔のところに行き
「何をしに来た!」と荒い口調で怒鳴った。
小悪魔は、ヘラヘラとした顔で
「お前も付いてきたのか?」
と悪びれもなく聞き、ニースはさらに怒りが湧いた。
「当たり前さ!ルイはおいらが守る! お前、気が変わったとか言って、邪魔をしに来たんじゃないだろうな!」
真っ赤にした顔で、むき上がって言うニースに、
「馬鹿を言うな、退屈だったから様子を見に来ただけだ。で…、あの子…。ルイっていう子、お前の方を向いていたみたいだけど、眠りから覚めてもお前の事が見えていたのか?」
ずっと木陰から見ていた小悪魔は、興奮気味のニースに気を遣いながら静かな声で聞いてみた。
ニースは急に目が潤み、威嚇していた身体から、抜けて行く力と同時にコクンと首を下げた。
「お前の邪魔が入らなくても、ルイは…。だけどおいらは諦めない、ルイを守るって決めたんだ」
そうは言いながらも、急に力の無くなったニースの事が、小悪魔は可哀想に思えてきた。
「そうか、何かいい方法があったら教えてやるよ。こう見えてもおいら、いろいろ勉強もしてるからな、魔術も悪戯もけっこう出来るようになったんだ」
元気付けようとして言っている小悪魔の言葉は、不安な心を少し和らげて
くれた。
「ありがとう、でもお前の技は使えそうにないな」
「バーカ!今出来る技は使えないかもしれないけど、悪魔図書館には膨大な本があるんだ。その中に使えるものがあるかもしれないんだぞっ」
自慢気たっぷりに言った小悪魔の情報にニースは飛びついた。
「おいっ、その図書館、何処にあるんだ!?おいらを連れて行ってくれよ!」
前のめりで寄ってくるニースに、小悪魔は急に困り顔になって後退りした。
「だっ、駄目だぞ!そこは悪魔族しか入れないんだ。仲間じゃないお前なんか連れて行ったら大変な事になる」
つい口を滑らせた小悪魔の情報に希望が見えた気がしたニースの瞳は大きく輝いた。
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✳︎ここまでお読み頂きありがとうございます✳︎
堕天使ニースは、2014年頃に執筆をしたものです^^。
noteで読みやすいように、少しづつ校正を加えながら、
アップしていこうと思っています。
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