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夫とのなれそめ

男性嫌悪こじらせまくりの私が、まさか25歳で結婚するとは思っていなかった。

そもそもが、大学まで女子としか付き合ったことがなかった。バイセクシャルを自称して生きてきたものの、結婚前まではほとんど女が恋愛対象で、男性のことは敵視しているくらいだった。

夫と出会ったのは新卒で入った会社のパーティーだった。その当時、バラエティ番組のADだった私は、番組の関係者がわんさか来るパーティーでせっせと下働きをしていた。すると、プロデューサーが「紹介したい人がいる」と言うので出逢ったのが今の夫であった。

なんかツヤっとした人だなというのが第一印象であった。健康そうだ。話し方もハキハキしている。ディレクターらしい。バラエティのディレクターで、こんなに明るそうで、なんかツヤツヤしてて筋肉質。ウェイ系に違いないと思った。

一生関わらないし関わりたくない部類の人間だと即座に思った。向こうだって私みたいなのと仲良くなりたくないだろう。忙しいフリをしてすぐにその場を離れた。

それから彼のことはすっかり忘れて忙殺されていた。ドラマ制作会社の窓際で主に活動しているバラエティチームで私は病んでいた。ドラマを作りたくてドラマの会社に入社したのに、なぜバラエティ部門に配属されたのかと。今思うと失礼な話だが、本当にそれで悩んでいた。

しかもバラエティ班の「面白いこと言えなきゃダメ」みたいな空気に馴染めなかった。それで仕事もよくわからずに毎日深夜まで働いて大変すぎた。そんなとき、一人で窓際に座っていた私に声をかける人がいた。

「大丈夫?顔色が悪いけど……」
もちろんのちの夫である。
私は病んでいたところに優しく声をかけられて泣いた。
「か、書き出しがなんかエラー出ちゃって……もう2時間これしかしてなくて……」
「だ、大丈夫?ちょっと休みなよ」
「仕事中に休むなんて」
「とりあえずパソコン見せて」

なんかもうめちゃくちゃ泣いてしまって、私は彼と共に会社の地下にある作業スペースに行って書き出しを教わることにした。

彼は書き出しを教えてくれ、終わるのを待っている間話を聞いてくれた。

ドラマがやりたいのにバラエティなのがつらいというのをふむふむと聞いた後、彼は言った。
「バラエティやってると取材とかでいろんな人に会うでしょ?普通に生活してても会えないような人に。そういう経験はドラマ作るときにもきっと活きるから、貴田さんは今ちゃんと夢に向かって進んでると思うよ」
より泣いた。
「ありがとうございます、でも仕事中にこんなに泣いて仕事サボっててほんとクズです……」
「何言ってるの。書き出しかけてるんだから立派に仕事してるでしょ」

それがきっかけで少し話すようになった。

彼は明るく見せているだけで実際には真面目すぎるほど真面目な人間だった。バラエティのディレクターというだけでめちゃくちゃ忙しいのに、たまの休みにはドローンを飛ばしに車を走らせる映像オタクであった。

私はなんの気無しに「私もドローン飛ばせるようになりたい」と言った。彼が教えてくれることになり、一緒に栃木まで行ってドローンを飛ばすことになった。

ドローンを飛ばす私

栃木まで行く車の中で、RADWIMPSが好きだとか、映画は何が好きとか色々話した。なんかのちのち聞くとその時に向こうは「すごく話しやすいな」と思ったらしい。私はまだ猫をかぶっていたが。

まあそんななりゆきで仲良くなったが、一年半くらいは彼を振り続けた時期があった。その話は追い追い。

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