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下校中の天気雨

 下校のチャイムが鳴り、夕陽が眩しくて目を細めながら自転車を漕ぐ。信号待ちをしていたら地面がぽつぽつと色が変わっていった。空を見上げるとメガネのレンズに大粒の水滴がつき、それを制服の袖でぬぐった。肌には冬の冷たい雨が当たり出した。

いつもなら自転車のカゴに入れてあるカッパをすぐに着るだろう。しかし私はその滝にように降り頻る雨と1つ1つの水滴を照らす橙色の夕日があまりにも美しくて立ち尽くしていた。雨が激しくて目を開けていると水滴が入ってくる。それでもその瞬間を1秒でも長く見ていたいと思った。いつも通っている通学路が世界で一番美しく見えた。

部活がキツくて泣きながら帰った道。

自粛期間が終わって久々に学校に行けることが嬉しくて立ち漕ぎをして通った道。

修学旅行が中止になって落ち込んでいつもよりもゆっくり帰った道。

たくさんの思い出が蘇る。そして私はカバンに入れてあるフィルムカメラ を取り出してシャッターを切った。

私は急いで自転車に乗り、家のある高台へと自転車を漕いだ。私は間違いなく「あれ」が見えると思った。家に着くとカバン置いて急いでより高いところに向かった。その途中、雨でできた大きな水たまりに「あれ」が映っていた。空を見上げると今まで見たこともないような大きな「虹」が二つ。私はカバンから取り出しておいたフィルムカメラ を構え、またシャッターを切った。


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