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「ファミコンバカ」と呼ばれた5歳児は今でもゲームをしている (5)

前回はこちら ⇒ https://note.com/you1293/n/n86c499e150b3
まとめ ⇒ https://note.com/you1293/m/mf3a3e862c18b

突如家に現れた物体は、テレビをゲームセンターに変えてしまった。

「おとうさん、これぼくしってる!!やりたい!!」

「そうなんか?これはのぅ、ファミコンっていうんぞ。すごかろ。やっていいぞ。」

「うん!!!ハミコンする!!」

遠い記憶を探ってみるが、父と熊さんが話しているのを見たことがない。
おそらくそれほど面識はなかったのだろう。僕がゲーセンに連れて行ってもらっていたことも、知らなかったのかもしれない。

まだ小さかった僕の手はゲーセンでスティックーを操縦桿のようにガチャガチャと動かし、ボタンも手のひら全体でバンバンと押していたのだろう。

しかし、家に現れたゲームセンターでは、スティックではなく、コントローラーを使う。慣れないはずのコントローラーだが、僕には持ち方に苦労した覚えがない。箸や自転車のハンドル、野球のバットなんかは、持ち方に苦労した記憶が残っているのに、不思議なものだ。

大人になった今、色んなゲーム機のコントローラーを経て、改めて初代ファミコンのコントローラーを持ってみると、こんなに薄っぺらくて小さかったっけ?と感じる。

そんな薄くて、小さなコントローラーだからこそ、当時の小さかった僕でも違和感なく持てた。意図してのものなのか、そうでないのかは分からないが、さすが任天堂!とつい言いたくなる。

そのころの僕はドンキーコングが好きだったが、決してうまかったわけではない。
むしろ、小さかった僕には、1面の4段目くらいがやっとだった。

でも、あのマリオを動かしたときの「ペポペペポペポポ…」という気の抜けた音、タルをジャンプでかわしたときの「ピロロンロン」という音、そして何よりハンマーを持った時の「テッテレレッテ テッテッテッテッ テッテレレッテ テッテッテッテッ」がたまらなく好きだった。

一心不乱にハンマーを振り回し、タルを「ブロオォォン!」という音とともに叩き潰す。

もちろん当時のコントローラーに振動機能なんてものはついていない。
しかし、あの音は脳天をビリビリと直接振動させてくるのだ。
ああ、なんという快感だろう!ゲームって気持ちいい!

前にも書いたように、父は何でもできるスーパーマンだったが、コンピュータゲームを触るのはファミコンが初めてだった。

めちゃくちゃ高く、遠い存在だった父。
そんな父が、ファミコンをやるときだけは同じ高さにいる。

交互にマリオを動かし、タルをジャンプで越えるときには一緒に声を出す。
タイミングが合わず、クルクルと回るマリオを見て悔しがる声も一緒だ。

父マリオがハンマーを振り回している時には、僕もあのBGMに合わせて手をブンブン上下しながら、周りを回っていた。

スキーやアウトドア、色んなところに遊びに連れて行ってくれはしたが、その中でも一緒にファミコンをやっている時がたまらなく楽しかった。

それがこんなにも印象強く残っているのは、そんな遠い存在だった父を、いちばん身近に感じることができる時間だったからかもしれない。

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(つづきます)

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