部屋と振袖と私。愛する娘のため。
業界から足を洗い一年間。
過酷なブラック業界に何年もいたことにも理由がありました。
もちろん末期がんの母親を最後まで看とるため、働きながら自宅介護を両立。
母の栄養点滴を7時と19時に変えるルーティンと、契約したお嬢様を何事もなく成人当日をむかえることが私が役割でした。
その中でもの忘れられないお客様がいます。
業界から離れた今でも思い出します。
障害がある娘を振袖を着せて成人式に行かせたいというお母様からの相談
レンタルの振袖はサイズの規格が決まってるので、サイズが大きすぎる人、小さすぎる人はお客様の寸法にあわせて作りますので購入してくださいと対応されることがあります。
ある日、お父さん、お母さん、お嬢様、お祖母さんと来店があり、事前に障害があるの事と予算的にレンタルをしたいと、予約の備考に書いてありました。
どうやら他店を一件みたあとのようで、すでにお父さんは機嫌が宜しくない感じでした。
お母さんより、神奈川県相模原市では成人式の翌週土日に障害者の成人式があり、そこに振袖を着せて成人式に行かせたいとのこと。
お嬢様は126センチなので、振袖レンタルの規格だと大きいのでSサイズでも、振袖の袖が地面についておりました。
子供のサイズも考えましたが、スリーサイズは成人女性と同じでした。
ついに黙っていたお父さんが口を開き
前の店では、お嬢様は特殊サイズになるから、レンタルで作っても次にレンタルできる人がいないから買ってもらうしかないと言われた。
この店だってそうなんだろ‼️
お父さんが大きい気持ちを出したい気持ちもわかりますし、お母さんは障害があっても娘は娘なので振袖を着せたいもわかります。
またずっとニコニコしてるお嬢様を見つめるお祖母さんもまたうまく行くように願っていたと思います。
近年、振袖は袖の柄は大柄になり
袖をきるのは美しさを損なうので、きっとうちのブラック会社も絶対にやりたくないというと思いましたが
ブラック企業に散々痛い目にあっていた私は、会社の事など、どうでもよかったので
お父さん❗私はそこらの他社のマネージャーとは違います。他の店と同じにしないでください。振袖の袖を一枚切ったくらいで、私の店は動じません
とお父さんより大きい声で喋り、私は立ち上がりました。もちろんお父さんは唖然
課題は
予算が20万
レンタル希望
当日も着付けて欲しい
写真は三枚あれば充分
予算のこともあったので
私を含めた家族会議を開催
振袖は新しく作るより出来上がってるものを着る方が安くなること。
低身長なので物によっては袖の柄がなくなる可能性があるので、大柄を避けて小花柄の振袖をすすめた。
袖を着る料金を計算すると最安セットを選んでもらうと予算内。オプションではない無料小物の使ったコーディネートでも、華やかになるので安心して欲しいと見積書お渡し
お父さんから
袖なんか切ったら次にレンタル出来ないのは大丈夫なんですか?と聞かれ
相模原市では障害の方の成人式がある以上、私は需要あると確信しました。また同じように門前払いされたご家族が悲しい思いしないように袖を切る決意をしたと伝えました。
そのあとは一度話を持ち帰りになりましたが、三日後に再来店で契約。
当初は前撮りはするけど、無料三ポーズのみという内容でしたが追加アルバム購入とオールデータ購入。
振袖レンタル 20万
写真代 6万
成人式後はご家族様から菓子折りをもらったり、お友達を紹介してくださったりと、みんなが幸せになった成人式でした。
それから、障害のお子様をもつ
お母さんからの相談が私のもとに届きました。
娘の身体に障害があるから前撮りはしたくない!というお母さん
お嬢様に斜視があるので前撮りはしたくないというお母さんが来店。
どうやら、袖を切って成人式に行ってくださったご家族の紹介でした。私の名刺を握りしめて、腰を上げて相談にきたとのこと。
写真の良し悪しは目で決まるといっても過言ではありません。黒目が左右にふってしまい両目がまっすぐに来ることがありません。
ですがお嬢様は斜視というだけで、話せば至って普通の女の子。アイドルが好きな話、流行りのアニメの話と斜視があるから写真が苦手とは思えないくらいの女の子でした。
お母さんは振袖さえ着れれば良いので、写真はいらないとお嬢さんにも言い聞かせてました。
斜視の方の撮影は最難関です。
確かに仕上がりで傷つけるかもしれないと頭に横は切りましたが、プロとしてシャッターを切るのが使命だと立ち上がりました。
お母さん!
前撮りヘアメイク着付は無料、2ポーズはプレゼントなので、お気に召さなければ捨ててください
結婚式は何度も出来るけど、成人式は一回しかありません。障害があってもなくても、心身の病でも、今成人を迎えようしてるお嬢様はかげないのない娘さんです。
確かに斜視は誰がみてもわかる病気で驚く人もいます。
外的障害がある人の写真など娘を傷つけるだけと思う人もたくさんいると思います。
でも障害をもっていても、明るく元気に生活を送ってるお子さんは、親が心配していても、子供そんなに気にしてないんだと感じました。
撮影後
お嬢さんは自分の写真みて、これも欲しいあれも欲しいとお気に入りを絞りきれなかったようです。購入したのは私が撮影した100カットのオールデータです。
お母さんも娘が写真をみて喜んでいるのをみて泣いておられました。斜視だから写真はいらないといったことに罪悪感を感じたのかもしれません
斜視があるから写真をとるのは可哀想と判断することは、相手にとって最も残酷な行為であること。外的な障害があったとしても、健常者と同じように接することが大切なんだと気づかされ、またカメラマンとしても勉強になりました。
思い出の量は写真の量なんです。
写真はみないから、いらないって方もいます。
データは加工してSNSアップするお嬢様も増えてきました。
写真は今すぐは見返すことはないかもしれません。
毎年毎年、成人式の日ががきて、私はこうだったなと見返したり
結婚するときに写真やデータを使いたいなど、お祝い席にはまた写真をみるときがきます。
いつかお嬢さんが結婚をして子供が出来たとき
お母さんは成人式にどんな振袖をきたの?って必ず聞かれます。
その日がきたら…見せて上げてください
自分史上最高のお嬢様の写真を
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