『可愛い』の、一人称と二人称
自分の好きな服。色。アクセサリー。
自分を表現するアイテムのはずなのに、
ときめいているはずなのに、
実際に着てみるとなんだかピンと来ない。
◎◎◎
私はピンクや、オレンジが好きだ。
パステルカラーも大好き。
でも、いざ身に着けてみると、なんだか違う。
私はヒラヒラのお洋服が好きだ。
女子大でピアノが趣味って言っていそうな
大和なでしこが着るワンピースを身に着けて、
颯爽と歩きたい。
そして素敵な友人や大好きな人に、
褒めてもらうのだ。
なんて、思っていても。
実際に着てみると、着せられてる感。
洋服も泣いているような気がする。ちぐはぐ感。
鏡の向こうの私は、何故か首を傾げて、眉間にしわを寄せている。
◎◎◎
そんな『持ち物難民』だったある日のこと。
外は快晴。お出かけ日和。
ふと立ち寄ったデパートで。
食器や洋服、贈り物のお菓子が陳列している間を通っていくと、
ふと目に入る、水色のパーカー。
カラーは、好き。
でも、私はあんまりパーカーが好きじゃなかった。
なんでって?
だって、可愛いって褒められないでしょう。
だって、私が着ると、かっこいい、ってなるんだもの。
私は、だれもが認める女の子になりたかった。
だから学生の頃までのお洋服には目をつむって、
何年もたったから、なんて理由を錯覚させて、手放したのに。
そんな言葉の羅列が脳みそを駆け巡っていくけれど、
私の視線は水色のパーカーのまま。
体は素直なもので、布地に手を這わせてみれば、
あぁ、なめらかな心地。
流れゆくまま、試着室へ。
◎◎◎
鏡に映る私は、最高だった。
誰かが言っていた「女の子はヒラヒラがいい」
誰かが言っていた「女の子はカジュアルよりも清楚系で」
そんなもんぶっ飛ぶくらい、可愛かった。
「私、可愛いじゃん」
ぽろりとこぼれた言葉は、私自身に染み渡った。
誰かの「可愛い」よりも、私の「可愛い」を。
私の人生の主役は、私なんだから。
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