デイサービスを、幼稚園と思い込んでいたのは私だった
私はリハビリテーションを生業とする、
作業療法士。
体の機能回復から、
生活をより良くする助言、
おうちの中を過ごしやすく整える提案まで、
何でもござれの職業だ。
そんな私は主に、ご高齢の方に対する
リハビリを提供することが多い場所に
務めている。
主に介護保険制度を使った福祉業界の
サービスの一つとして、
『デイサービス』というものがある。
日中、又は半年だけ施設に行き、
趣味活動や運動を楽しまれる場所。
趣味活動と言っても、
折り紙や塗り絵、プリントや習字、
簡単な調理など、手作業が多い。
◎ ◎ ◎
とある利用者様が、こう言っていた。
『あそこは幼稚園だ』と。
正直、私も思う。
医療・福祉業界に務めておきながら
こんなことを言うのもどうかとは思うが、
『生命の終わり』を待つ人々が、
余白の時間を埋めるために行くだけの場所。
特に何か金銭を発生させるわけでもなく、
ただ、時間を持て余した人達の集まり。
そんな印象を抱いていた。
◎ ◎ ◎
「こういう機会を、うまく使わないとね」
目元を優しく細めながら笑うおばあちゃまに、
私の浅はかな思考は奪われた。
手元にあるのは、折り紙を重ねて作った傘。
古き良き日本家屋にありそうな、手作りの雑貨品。
デイサービスに通うようになってから、
おばあちゃまーーーーいや、彼女は
職員に教えを請い、自分で作れるようになったそうだ。
「言われるままやって終わりじゃ、もったいないものね」
彼女の家のリビングには、花や丸、
折り紙の形からは想像出来ないような作品が、
所狭しと並んでいる。
彼女の努力の結晶だ。
幼稚園と評するのは、簡単だ。
価値が無いと判断するのも、簡単だ。
でも、それは「無い」をただ確認しているだけ。
「有る」を探せば、いくらでも有るのだ。
彼女は色鮮やかな雑貨を、
今日も作っている。
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