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組織は大きくなるほどに『個性』を潰す方向に傾きやすい。

『会社』の規模は個社それぞれで、数名で事業を行っている会社もあれば数百人で事業を行っている会社もあります。数名では意思疎通が図れていた組織でも数百名にもなるとそうもいきません。トップの言葉は全員に行き渡らなくなるし、人によって会社に求めることも異なってくるので、アグレッシブな企業文化だった会社もいつのまにか保守的な人が増えてきたりします。

これはそれ自体が良い/悪いというよりは規模によって会社の存在価値が変化したことによる現象なので、ある意味必然的なものだと思います。
よって、会社の規模に応じて企業文化や組織構造を柔軟に変える必要もでてくるでしょうし、経営者としてはなにを今後大事にしていくかという取捨選択をしながら進めていくことが大事なミッションになります。


会社の規模が大きくなっていくと、その資本力を活かしてこれまでできなかったような大きな仕事ができるようになっていきます。大規模な案件を動かすのが規模の大きな企業の仕事の醍醐味だと思いますが、その反面社員の『個性』『個人力』を排除する方向に傾きがちです。
それは大人数を動かすためには全体を効率的にする必要があるし、そのために統一されたルールを設けて管理していく必要がでてくるからですね。また、誰がいなくなっても大丈夫なクオリティを保つためにも個人依存を減らして業務の標準化を図っていく傾向にもあります。

ただ、この思想がいきすぎてしまうとひとりひとりの裁量権や特別感は薄まり、抜きんでた才能を持つ人からすると働きづらい会社になっていきます。有能な人はその他大勢の人と同じルールで活動するには満足がいかなくなるし、管理側も扱いにくくなります。そして、そういう人たちが会社に合わなくなって抜けていってしまうと結果として飛びぬけてダメな人も優秀な人もいない『普通の会社』になっていってしまうという事例が散見されます。

飛びぬけて優秀な人は働きづらい企業から離れて独立したり、裁量権がもてそうな小さな会社で働くことが多い。しかしこれではせっかくの才能を限定された場(領域)で使うことになってしまい、もったいないと思うのです。


僕がD2Cdotを経営していたときはこの点に注意して『規模が大きくなっても個性を潰さない会社にするにはどうすればいいか?』をひとつのテーマにしていました。僕らのようなクリエイティブ領域の仕事をやるためにはひとりひとりの『個性』を大事にしていかなければいけないからです。
D2Cdotは僕の在任時に50名程度から150名程度にまで拡大しましたが、効率化や管理を中心に全員が標準化された『つまらない会社』にはしたくなかったので、いろいろと模索しながら運営していました。

個人への裁量権は最大限に渡すことを前提として、組織としてはさらに数名~十数名程度の小さなパッケージの部やチームを複数つくり、それらごとにさらに裁量権をもたせるようにしました。これによって小回りが利くし、自ら意思決定して迅速に活動することができるようになります。
チームや部ごとの『色』は別々でもかまいません。同じ『色』の組織が大量生産されてもつまらないですから。なんだったらチームや部ごとにビジョンを立てて独自の活動をしてくれてもかまわないって伝えていました。

また、それをスムーズに実現するためにも「上に対してのご機嫌伺いや根回し」みたいなものは極力存在させたくなく、ちょっとした相談や報告くらいの感じで伝える程度で実行できる雰囲気をつくりたいと思っていました。自由に安心して挑戦できる空気をつくりたかったんですね。
このため、基本的にメンバーからの提案はよっぽどなことでなければほぼすべて受け入れていました(苦笑)。そのおかげか、比較的みんなノビノビとやっていたように思いますし、退任時に社員たちから自分が心がけていた通りの空気づくりができていたことを知り、安心しました。

半面、業務は非効率な部分はでてくるし、管理側は大変になっていきます。ただ、なにを大事とするかの優先順位付けが大事で、そこはある程度犠牲になってもしょうがないとはじめから割り切りました。
もっとも大事なのは現場の働きやすさです。効率化や管理負荷の軽減が最優先になって現場が働きづらくなるのは本末転倒。そうなるくらいなら、非効率な部分や管理負荷が増えるのは致し方ない、と思うことでやることやらないことの明確化もできました。
※マネージャーたちに対しては「現場のみんなのために苦労を受け入れてくれ」とお願いしていました(苦笑)

結論としてはこの取り組みはけっこう上手くいったんじゃないかなって思います。なにかを得るためにはなにかを捨てる必要があります。マネージャーやコーポレートのメンバーは大変だったと思いますが、現場のメンバーが楽しそうに働いてくれることが彼らの成果や喜びにもつながると思うので、総論全体的に良かったといえる状況にできたのではないかなと(笑)。


自らやりたいことを裁量権をもって実現するためにあえて規模の小さい会社に所属することを選ぶ人がいます。逆に大規模な案件に関わるために規模の大きな会社に所属することを選ぶ人もいます。どちらの選択も間違ってはいません。でも、中~大規模の企業でも強烈な個性をもっている人を活かせる環境がさらに増えていけば、世の中にインパクトを与えられることがもっと増えていくんじゃないかなと思うのです。

『多様性』の重要性が叫ばれていく昨今、もっと『優秀な個人』と『資本力のある企業』がうまくマッチングできていければ面白い世の中になるだろうなぁと思う今日この頃であります。

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