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実力以上の『報酬』は人を保守的にしていく。

誰でも自分の年収を上げたり、しかるべきポジションを与えられたいものですよね。でも自分の実力よりも報酬の方が高い場合はそれを守るために人は保守的になってしまいがちです。そして一度保守的になってその環境に慣れてしまうとその場から奮起して立ち上がる気力も失ってしまいます。

なぜ保守的になるのか?というと、それはいま自分がいるその場所以外に同じような環境(報酬)が得られるという自信がないからでしょう。要するに『自分の市場価値』に対して自信がないから、ということです。そうなると人はいまのポジションを失わないように意識が傾きます。
「挑戦をしなくなる」「責任をとらないポジションに就く」「自分の成果をアピールをする」・・等々。意識は内向きになっていき、「評価を得る」もしくは「評価を損なわない」ことだけに注力しだします。

代わって実力と同等、もしくは実力よりも低い報酬の人は逆にいつ辞めてもかまわない(転職先はいくらでもある)と思っているので強いですね。
しかし、そういった人も自分への報酬は上げたいのですから、初めは強気な態度で果敢に攻めて結果を残して報酬を上げていきますが、自らの実力を報酬が超えだすと急に保守的に変わったりする人もいます。この場合ヘタに強気で伸し上がってきた分、その強気な発言は変わらずに自らは危険が及ばない場所にひっこんで保守的になるという一番厄介な存在になってしまう場合もあります(苦笑)。

こうならないためにも『自分の相対的な市場価値』というのはある程度把握しておく必要があると思います。ただ、これがけっこう難しい。
年収や役職は会社ごとに基準が異なりますので単純にスキルが高ければ高い報酬が得られるというものではありません。A社に勤める年収400万の人がB社に勤める年収600万の人よりもスキルが高いなんてことはよくある話ですし、それは同じ会社の中にいても起こりえる事象。
会社の規模によってはそもそも役職自体が存在していないこともあるので、純粋に相対的に自分の実力を判断するのは難しいのです。

僕も自分の『市場価値』を知りたくて、エージェントの方と(転職する気もないのに)面接をして自らの価値を確認したことがありますが、そのときは自己評価とエージェントからの評価に大きなズレがなかったので、なんとなく納得したという経験があります(苦笑)。こういうことで適宜自分の価値を知るというのもひとつの手かと思います。やはり転職するしないに限らず『選択肢』が自分の中にあるかどうかというのは心の支え(保険)にもなりますしね。
※・・とはいえ、安心してその会社で適切な報酬を得ながら勤め上げられるのが一番良いとは思います。


これに関連して『抜擢人事』と呼ばれるものについても良い面と悪い面があると思います。世の中では若手を『抜擢人事』する会社を奨励する傾向にありますが、僕は必ずしもそれが良いとは思いません。『抜擢人事』は人の人生を狂わせてしまう可能性もあるのです。

秘められた実力がある人に適切に実力以上のポジションを与えると、それをきっかけに『化ける』ことがあります。しかし実力がない人が一度そのポジションを得てしまうと、なかなか手離したくないと思ってしまうもの。頑張ってそのポジションに見合うように実力を上げていこうと思えるならまだしも、その努力もせずに保守的になるだけの人もしばしば見かけます。そうなると本人のみならず一緒に働く人たちにとっても不幸となるので『抜擢人事』をする際には指名する側の目利き力が重要になってきます。誤って保守的になってしまうような人を選ばないようにしましょう。


つらつらと書いてきた『保守的になってしまう人』という本人が悪いのはもちろんなのですが、それよりも悪いのは『人選をした人』ですし、そういう人を放置している『上の人(評価者)たち』です。
人選を見誤ることは誰でもあるのである程度は仕方ないところはあるでしょう。ただ、その人選をするためにしっかり考え抜いた結果なのかは振り返る必要があるでしょう。そして、仮にその人選が誤っていたのであれば一定の改善指導を行い、それでも改善されない際はしかるべき対処をすべきです。ここが曖昧になって放置してしまうと組織として正しいヒエラルキーを創りあげることができなくなりますので、上司としての責任を果たすためにもしっかりとやるべきでしょう。


僕も以前、自分が思っている実力以上の報酬を得られる機会があったことが何度かあります。飛躍をするために受けた場合もありますし、現時点の自分にとってマイナスになると判断した際にはお断りをした場合もあります。

報酬については、それを受けることで自分にどのような影響が起きるか想定したうえで自らも納得できる判断をしていけると良いと思います。長期的な視点をもてば、報酬が高ければいいというものでもないと思うので。

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