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「妄想する頭思考する手」を雑に読み解く

xR界隈で著名な暦本氏の著作を読んでみた。
ざっくりいうと現代におけるイノベーションの作り方のてにをは(但し、実現できている人は一桁%もいなさそう)の本であり、サクッと読めるので一読をお勧めする。

AIの時代、VUCAの時代を生き抜く所作として大事になってくる内容だと思う。

ここでは個人的に気になった点をざっくり書いていく。
※本の内容そのままというより個人所感なので書いてあること連想したことなど雑多である

前提(時代背景)

タイトルからして「妄想」とか「手」とかこれまでの一般的なイノベーション論とは少し異なる表現が使われている。

そうしたものが重要となっている時代背景は以下のようなものだろう。

・VUCAの時代
・モノにあふれていて分かりやすい課題は概ね解決されている

前者はテクノロジーと呼応した現代社会の趨勢を表しており、後者は日本含む先進国において特に顕著だろう。

上記に類する本書内での表現としては、例えば以下が挙げられる。

未来に何が起こるかすべて予測することはできない(P21)
「選択と集中」だけでは未来に対応できない(P216)

読んでいないのではっきりとは分からないが両利きの経営などとも前提を共にしているのではないかと想像する。

ちなみにリベラルアーツのニーズが高まっている理由はかの有名な(?)コテン深井氏によると以下。

アイディアが形になるまでの流れ

本題に入る。
暦本氏が言ってるいるアイディア創出の流れは概ね以下キャプチャの流れと理解したためそれに沿ってまとめる。

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妄想から始まる
タイトルにもある「妄想」について。
関連しそうな記載内容を抜粋すると以下辺り。

・妄想は自分の「やりたいこと」(P52)
・「やりたいこと」を聞かれてジャンルしか思いつかない人は、そもそも自分がなぜその領域に興味を持ったのかを掘り下げてみるといい。そこにはきっと「こういうことができたらいいのに」という妄想の種があるはず(P66)

・他人が考えない自分らしいアイデアの源泉にするなら、好きなものが三つぐらいあるといい。(P85)
・アイディアは掛け合わせ→好き×好き×好き、既知×誰かの既知(P101)

・悪魔度は仕事をしているうちに自然に鍛えられるが、天使度のほうは自覚的に磨かないと高まらない。そのための基本戦略が、「既知×既知」の組み合わせを増やすことだ。(P104)
・「天使度」を鍛えるのは、未知のものに対する好奇心(P104)
・自分の「やりたいこと」が見つからないという人は、今の自分が何に手を動かしているかを考えてみるといい(P125)
・人間、やりたいことはすでにやっているものだ。(P126)
・妄想は、現時点での最先端から始まるわけではない。むしろ、現実の世界に対して違和感を抱くところから始まる。(P192)

やりたいこととか好きの掛け合わせとか未知に対する好奇心とかシンプルワードで一見簡単そうだけどぐぬぬとなる。

やりたいこととか好きに立脚するのは以下の点で重要と思われる。

・自分にとって当たり前だけど世の中的にはそうじゃない偏愛的なものからイノベーティブなものが生まれる(前提に記載の通り、分かりやすい課題は解決され済みなので)
・ストーリーやコンテキストの一貫性が保たれやすい、薄っぺらくないので共感を得やすい
・逆にそうでないと、この後触れる「手を動かす」フェーズに耐え切れない(途中で諦めてしまう)

クレームを作る
ここからは何かしらアイディア思いついた後に形にしていくステップについて。前提としてイノベーティブな創発は成功の打率が低いため、いかに打数を増やすかが重要という論調になっている。

打率の低いスタイルだから、結果を出すためにはできるだけ打数を増やす必要がある。(P80)

そのためにまず行うのが一行のクレームを作る作業である。
クレームとは「WHAT(何をしたいのか)」や「WHY(なぜやりたいのか)」を言語化したもので、妄想を自分にも他者にも分かるように整理したものとのことだ。

一例として「視線の向いたところの情報に反応するウェアラブルコンピュータ」のクレームは以下のようなものだ。

・知らない言語の文字を見ると、翻訳された情報が目の前に現れる
・注視している先の映像だけを集めれば、その人の行動を理解することができる
・注視している先の物体に関連する操作コマンドだけを認識するようにすれば、音声認識の精度を向上させることができる

クレームは頭の中のモヤモヤをできるだけ短い言葉で抜き出すことを目的としているので1行で書ききるのがベストとのことだ。上記例のように具体性が高く検証ポイントが明確なクレームができていればそれは筋の良い仮説なのかもしれない。

更にクレームの発展形として"素材の良し悪しを知るには、実験や試作などの本格的な研究作業に入る前に、論文のあらすじを書いてみるといい(P72)"というTipsも載っていた。

・課題は何か?それは誰にとって必要なものか?
・その課題はなぜ難しいのか?あるいはなぜ面白いのか?
・その課題をどう解決するのか?
・その手法で解決できることをどう立証するのか?どう決着をつけるか?
・その解決手法のもたらす効果、さらなる発展の可能性

いわゆるなエレベーターピッチとかにも近いものだろう。抜け漏れを確認するのには良さそうだ。

ちょうどtwitterでも拡散されていたFoundX馬田氏の「解像度を高める」というスライドでも以下のようなフレームワークが紹介されている。

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眼高手低

元々は中国の故事成語のようだが、ここでは妄想の天使度やアイディアの理想は高く、併せてアイディアを手を動かして実行していることを意味している。

・「このアイデアは面白そうだけど、本当にうまくいくだろうか」などと、じっと熟考するものではない。ダメ元でもいいのでまず手を動かしてみる。(P116)
・「思いついたらとにかく手を動かす」(P117)

とにかく手を動かせということらしい。アイディアは生みだせても手を動かせ続ける人はそうはいないのではないか?(自戒も込めて)

よく「新しいサービスのアイディアを思いついたと思っても世界で数十人は同じことを思いついていると思った方が良い」と言われることが多いが、裏返せば実行こそが重要になっているという表れだろう。

天使度が高く悪魔度も高いアウトプットの完成

ここまで「天使度」「悪魔度」について特に説明せずに進めてきたが本書では以下のようなマトリクスで説明されている。

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慣れてくれば最初から両方のレベルが高いアイディアを思いつける確率も高まってくるだろうが最初はとにかく数こなすしかないのだろうというのが個人的所感。

ここまでのステップをまとめると、

STEP1:前述した流れで「自分のやりたいこと」や「既知×既知の情報」からアイディアを生み出す
 ↓
STEP2:そのまま放置せずに1行のクレームを書く
(&論文のあらすじを書いてみる)
 ↓
STEP3:ある程度具体的なクレームが出来上がったらダメ元でも手を動かして形にしてみる


※クレーム書いて以降は他者のフィードバックも参考にする

こんなところだろうか。
個人的にはシャワーのように情報を浴びたまま放置していたり、アイディアを自分の中だけに留めていて自分でもいつの間にか忘れていることが大半なのでSTEP2以降の癖付けを行っていきたい所存である。

もちろん妄想の源泉である「やりたいこと」ってなんだっけ?も悩みの種ではあるのだが。

そういう人に溢れた社会の作り方

最後に上記のような取り組みをやる人を如何に増やしていくかについて本書をヒントに触れたいと思う。

「スカブラ」の許容

スカブラとはかつて炭鉱にいた「スカッとしてブラブラしている人」のことらしい。平時はさぼっているけど緊急対応は得意なタイプな人のようだ。こうした妄想型の人間も評価される世の中でないとイノベーションが排除されてしまうと本書では述べられている。更に人単位ではなく、個々人の中にもスカブラ的な余白を抱えることの重要性も合わせて語られている。

小文字のfutureから始める

Futureは政府が主導していたり大きな予算がついているもの、futureはそれぞれの研究者や技術者の個人的な好奇心や興味から始まるもの。

またどこかで取り扱いたいがTakram渡邉康太郎氏の「弱い文脈」や東浩紀氏の「観光客」「誤配」にも通じる内容だと感じた。


以上、3000字超と思いのほか長くなってしまった。
今後も定期的に雑なアウトプットをしていきたい。

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