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声を殺した慟哭が黒い霧となり

声を殺した慟哭が黒い霧となり
ビル群に低く垂れこめてゆく

漏れる嗚咽は涙雨となり
灯りも形もすべてを蔽い消す

手足を鉄鎖で縛られたものたちが
霞みから溢れでて河となる

河の流れに迷いはない
ただ低きを目指して流れるのみ

地を這い下る水際には鉄鎖の山が築かれた

河の先には木木も生えない失望の荒涼
昨日に続き葬送の列がすすむ

掘られた墓穴は死者の数より多い
棺を作り墓碑銘を記す木も石もここにはない

終わりない祈祷が続き時雨が驟雨となり
祈りを紡ぐ母の声がかき消される

強い北風に驟雨は凍雨となり、手が凍り
子は赤いドレスの微笑む人形を河に落とした

氷河は無数の人形を閉じこめ大地を削り海へ向かった

海の果てには、始まりの島がある
島を包む大樹が海の水を吸い上げる

鉄鎖が、微笑む人形が流れくれば
大樹は涙し黒い霧で世界を蓋う

躓き倒れ、地に手を突くものがあれば
その口にいのちの水をふくませる

空を仰ぐものがあれば、陽が眩しければ
葉を揺らし、光の道を仄かに浮かび上がらせる

分岐に戻ることはできないが、大樹はすべてを見ている

【AO0ZNB0】

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