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シドニー&メルボルンの旅(9)

帰国日は空港に行ってお昼の飛行機に乗るだけだから、特にネタもないだろうと思っていたのだけど、いくつか小さな出来事があったので記録として書いておく。

宿から眺めた朝日とオペラハウス

前夜23時過ぎに日記を書き終えて部屋に戻ると、李くんが荷物を整理していた。翌日の飛行機でゴールドコーストへ行くという。

「家族との間で、中村さんのことが話題になっていたんだよ。すごい人に会ったって」

以前韓国で掲載されたぼくの記事を見せてくれたらしい。

「明日の朝に日本へ帰るんだよね。どこかで朝食を食べる予定はある?」

「最後にどこかでおいしいコーヒーを飲みたいから、サーキュラーキーの近くの良さげなカフェに行って、それから早めに空港へ行ってレストランで朝食を取ろうと思っているよ」

「おお、それはいいですね。そしたら予定があるんですね」

「うん。でもどうして?」

「いや、もし何もなければここの宿での朝食券があるから、中村さんにプレゼントしようと思って」

「ええ!? なんて親切な!ぼくは大丈夫だから、それは李くんが使って。本当にありがとう」

という温かい交流があった。それなのにぼくは、情けないことをしてしまった。

その後スーツケースを片付けながら、抹茶のクッキーがひとつ余っているのを見つけた。これは現地でお世話になるオーストラリア人へのお土産と思って買っておいたものだ。

(そうだ、これを李くんにプレゼントしようかな)

と一瞬頭によぎったにもかかわらず、「でも、ぼくもひと口食べてみたいな」という欲求に負けて、結局あげられなかった。ぼくは日本でいくらでも買えるのに!そしてさらに悪いことに、「明日ゴールドコーストへ行くって言ってたし、箱が大きいからきっと邪魔だよな」という勝手な正当化までしようとしていた。なんということだろう。その後悔を今も引きずっている。

『自分の小さな「箱」から脱出する方法』という有名な自己啓発書がある。この本を読んだことのある方なら、まさにこれが「自分への裏切り」の話だとわかるだろう。

著者は、自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動を、「自分への裏切り」と呼ぶ。 そして人は、いったん自分の感情に背くと、周りの世界を「自分への裏切り」を正当化する視点から見るようになり、現実を見る目がゆがめられてしまうという。その結果、人は「箱」に入ってしまう。でも良い人間関係の構築のためには、「箱」から出ないといけない。そういうことが書かれた本だ。

小さなことだけど、目先の損得にとらわれてしまったことをすごく反省していて、一瞬でも「相手のためにこうしたい」と思ったら、次は何も考えずに実行したい。

朝7時半に起きて、8時にチェックアウト。最後に李くんと「また会おう」と約束して別れてきた。

李くん、また会おう!

サーキュラーキー駅近くにある「Bellaccino」や「Cabrito Coffee Traders」という良さそうなカフェを事前に調べていたので、重たいスーツケースを引きづりながら、そこを目指して歩いていた。

すると、オフィス街の一角で、とても良さげなカフェを偶然見つけた。

訪れたカフェ「Dutch Smuggler Coffee Brewers」

「Dutch Smuggler Coffee Brewers」というお店だ。Googleマップで調べると評価が高かったので、ここで飲むことにした。フラットホワイトのソイミルク変更。確か5ドルだったかな。とてもおいしかった。

テラス席でリラックスして飲みながら、ここでコーヒー豆を買いたくなった。店頭に3種類のコーヒー豆(250g)が置かれているけど、違いがわからない。ひとつはエチオピアのコーヒー豆、もうひとつは「Flores」と買いてあるけど、フローレスってどこだ? 残りのひとつは完全にどこの豆だかわからない。

ネットで調べつつ凝視していたら、店員さんが「エチオピアのドリップコーヒーがあるから、飲んでみる?」と言ってくれた。スッキリしていておいしい!これは有名なエチオピアのイルガチェフェだった。まずそれを買うことに。「もうひとつ買いたいんだけど、残りの2つはどう違うの?」と聞いたら、「2つともインドネシア産で、こっちはスマトラ島、こっちはフローレス島のもの。フローレス島のはダークでよりストロング。エスプレッソにより向いているわ。でもプレミアだから25ドルするの。スマトラのはスパイスやワインのような風味で、個人的にはこれが好きかしら。スマトラとエチオピアの豆は18ドルよ」ということでスマトラをチョイス。どんな味か楽しみだけど、店員さんが親切だったからぼくはそれだけで満足だった。

親切な店員さんとお土産のコーヒー豆

その後も駅に向かう途中、「Kingswood Coffee」や「Juveniles Coffee」など、様子を見るからに絶対おいしいのだろうなというカフェをたくさん見つけた。もともと行こうとしていた「Bellaccino」や「Cabrito Coffee Traders」も賑わっていて、特に後者はイタリアのような雰囲気があり素敵なお店だった。

イタリアのカフェのような「Cabrito Coffee Traders」

サーキュラーキー駅から電車で空港へ向かうだけど、気がかりだったのはOpalカードの残高だった。空港駅までは20ドルかかり、確か10ドルくらいチャージしないと足りなかったはず。改札内にチャージする(現地では「top upする」と言う)ための機械があるのだけど、損をしないためには、「最低いくらからチャージできるか」が問題になる。だから念のため、改札外の「みどりの窓口」的なところで相談してみることにしてみた。なぜそこまで慎重になっていたかというと、日本であれば、Suicaの残高が余ってしまったら、空港の売店でもどこでもSuicaが使えるから、お菓子やお土産代にでもすればいい。でも、シドニーのOpalカードが使えるのは純粋に「公共交通機関のみ」。そのため、なるべくピッタリ使い切りたかったのだ。

窓口の男性は、ピアスをしていて見た目がちょっと怖かった。

「空港まで行きたいんですけど、ここからいくらですか?」

「20.45ドルだよ」

「ぼくのOpalカードはあといくら残高が残ってますか?」

「あと12ドル」

やっぱりあと10ドルくらいチャージが必要だ。

「改札内の機械では、最低いくらからチャージできますか?」

「20ドルからだね」

わお、それだと10ドル(1000円近く)が余ってしまいもったいない。

「10ドルだけチャージする方法はないですか?」

「あるよ」

あるの!?

「アプリなら、10ドルからチャージできる。君は急いでる?」

「いや、時間はあります。アプリをトライしたいです」

「オッケー。じゃあまず、iPhoneでOpal Travelというアプリをダウンロードして」

「これですね?」

「それだ。そしてここにオパルカードの裏側の番号、そしてクレジットカード番号を入力して」

「しました」

「そしてtop upで10ドルを選んで確定」

できた。2〜3分で終わった。

「ただし、チャージが反映されるまでに30分〜1時間くらいかかる」

「OK。けど、もう乗ってしまってもいい?」

「空港まで20分かかるから、おそらく着く頃にはチャージされてるんじゃないかな」

「パーフェクト。サンキューソーマッチ。ハブアグッドデイ!」

彼に聞いて良かった。すごく親切だった。

サーキュラーキー駅の「みどりの窓口」

ただ、いざ空港駅に着いて、アプリで確認すると、まだチャージ額が反映されていなかった。駅員さんに尋ねて「残高が足りないからチャージする必要がある」「いや、さっきチャージしたから足りてるはずなんです」みたいに面倒になってもやだなあと思い、改札の手前で10分くらい待ってみた。けど、まるで反映されないので、痺れを切らして駅員さんに話しかける。

「すみません。ぼくはサーキュラーキーから来ました。Opalカードは、チャージが完了すれば22ドルになツア。問題ないですよね? でもまだチャージが反映されないから、通れないんです。ここで待ってるしかないですか?」

「通ってみなよ、行けるかもしれない」

え、そんなことある?と半信半疑でタッチしたら、なんと通れた。アプリ画面の反映は遅れているけど、チャージ自体は完了してたみたいだ。最初からトライしてみたら良かった。でも何にせよ聞いて助かったよ。「サンキュー!」

9時45分くらいに空港到着。12時の便だからまだ時間がある。最後にプライオリティパスで食事を楽しもうと意気込んでいた。スーツケースを預け、まずはフードコート内の「mach2」へ。

シドニー空港の「mach2」

「エッグベネディクトwithスモークサーモン」(21ドル)と、「フレッシュフルーツサラダ」(16ドル)を注文。範囲内の36ドルを超えた分は、自腹になる。「お会計は、1ドルです」。これが1ドルで食べられるならまったく言うことなし。特にスモークサーモンの乗ったエッグベネディクトは絶品だった。

エッグベネディクトとフルーツサラダ

もう一軒、搭乗ゲート付近の「Peroni Bar」というお店でハンバーガーを食べようと思っていたけど、時間がギリギリだったのとお腹もいっぱいだったので諦め、代わりに包装されたポテトチップスとクッキーと水をテイクアウトしてきた。ポテチ3袋と小さなクッキー2つと水600mlで34ドルというのもなかなか恐ろしかったけど、もらえて何より。プライオリティパスの破壊力を思い知る旅だった。空港のレストランで5回、計150ドル分は使ったはず。これがなかったら食費はもっとかかっていただろう。

10分だけラウンジに入り、チーズとロングブラックをいただいてから羽田行きの全日空890便に搭乗。

まず飛び立ってすぐ、シドニー五輪のメインスタジアムが上空から見えた。

上空から眺めたオリンピックスタジアム

そして数時間後、ふと窓の外を見ると、海の一部が恐ろしく青く輝いていた。フライト情報の地図で確認すると、そこは世界遺産のグレートバリアリーフ一帯の海域だった。こんなに綺麗なのかと驚いた。いつかこの海に潜れたらいいな。

グレートバリアリーフあたりの海

機内では、レシートを整理しながら、今回の旅行にかかったお金を計算した。出発までにわかっていた分で20万円。おそらく現地であと10万以上はかかって30万円を超えるだろうと思っていた。しかし、現地での節約や、あとは何度かご馳走になったおかげもあって、食費が浮いた分、予定よりも安く済んだ。

レシートがもらえなかった店が2〜3件あったけど、その抜け漏れを含めても、計27万円くらいに収まったはず。

航空機代(羽田〜シドニー往復):11万7580円
航空機代(シドニー〜メルボルン往復):1万8019円
宿代(ゲストハウスのドミトリー8泊分):3万6634円
観光費:2万4120円
シドニーの公共交通機関の交通費:1万340円
食費(カフェ代含む):約4万5000円
郵便代:3500円
レンタサイクル:2500円
お土産代:約1万円
その他雑費(洗濯やポストカード):約2000円

合計約27万円

まだまだ次の旅の資金は足りないので、余った分はそちらに回します。

機内では『運転者』という本を一気読み。日頃から上機嫌でいることの大切さを教えてくれる、とても良い本だった。その中に「運をたくさん貯めるには、誰かの幸せのために自分の時間を使う」という一節があり、李くんのことを思い出して改めて悔やんだ。

21時前、無事羽田空港に到着。10日ぶりに湯船に浸かり、10日ぶりに部屋にひとりきりで寝た。当たり前の日常が、こんなに幸せなことだったなんて。長旅の疲労から、溶ろけるように眠りについた。

*****

というわけで、オーストラリアの旅行記はこれにて終了。最後までお読みいただきありがとうございました!そして各地でお世話になった皆様、日本から応援してくださった皆様、ありがとうございました!とても楽しい滞在になりました。現地の魅力が少しでも伝わっていると嬉しいです。

後日、ソフトバンクニュースでも記事が掲載される予定です。そちらもぜひお楽しみに!

次は東北一周の自転車旅で、こちらはもう来週にはスタートする予定です。引き続き応援よろしくお願いいたします!

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