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講演のための思考メモ(19)アメリカ留学に協賛がついた理由

※本連載「講演のための思考メモ」では、高校時代から現在までのキャリアを振り返り、フリーライターになった経緯や、様々な経験からの学びや気付きをまとめています。

フリーランスの罠

2017年1月に東海道五十三次の旅をやり終えて、2月からはいくつかインタビュー記事を書くお仕事をいただけた。しかし原稿料が安いうえ、修正のやりとりが多くてなかなか脱稿ができず、早くも精神的に参ってしまった。1ヶ月頑張って仕事をしても、10万円にすらならない。「フリーライターはなんて大変なんだ」と現実を思い知らされた。

働き方においても、「何かが違う」と感じていた。2月19日、ぼくはブログにこんなことを書いた。

【フリーランスの罠と、大切にしたいこと】

フリーランスは、とりあえず食っていかないといけないから、今持っているスキルで、仕事をする。ぼくであれば、文章を書くこと。でも、いつの間にか、それが「やりたかったこと」にすり替わっていることがある。

違う。それはできることであって、本当の意味でやりたいことではない。

できることをするためにフリーランスになったのではなく、できるかわからないけど、やりたいことをやるために、フリーランスになった。そこを忘れてはいけない。挑戦することを自らに課さないと、ズルズルと楽な方向にいってしまう。

収入が減る分、なるべくお金を使わないようにする。これも罠だと思った。リスクを取らないでいたら、大した成長はできない。

海外に行きたいなら、行くと決めてしまう。先に決めてから、その方策を考えて、行動を起こす。そうしないと、色々なことはできない。お金を一切かけないで自分を成長させることなんて、なかなかできない。本を買うのも、海外へ行くのも、人と会うのも、基本的にはどこかしらでお金がかかる。とにかく自分の成長ややりたいことのためには、お金を使う。あとで必ず回収できると信じて、無理してでも使う勇気を持った方がいい。

ブログ「フリーランスの罠と、大切にしたいこと」

せっかくフリーランスになったのだから、中途半端なことをやったらいけない。真面目でもバカでもいいから、とにかく振り幅を大きくした方がいい。東海道の旅のように、突き抜ける体験をした方が、おもしろい。未知のこと、わからないことに直面して、そこを突き破っていく。

何か大胆なチャレンジをしたい。「こういうことをするためにフリーランスになったんだ」と思えるような「何か」を。

そんなある日、「ライフガード」などで知られる飲料メーカー「チェリオコーポレーション」専務取締役(現社長)の菅大介さんに食事に誘われた。

「最近どうなの?」と聞かれたので、「せっかくフリーランスになって自由が生まれたのに、今はおとなしく原稿を書いているばかりで、全然やりたいことができていません」と正直に打ち明けた。

「どんなことがやりたいの?」

「海外に行きたいです。英語の勉強もしたいし、また現地で自転車旅とか、人がやらないチャレンジをしたいです」

このときはまだ、具体的にどこへ行きたいのかは漠然としていたが、菅さんから「洋太、お前は突き抜けろ」と言われたことで、ものすごく背中を押された。

チェリオコーポレーション現社長の菅大介さん

決意。サンディエゴ留学へ

ぼくは翌日から、水面下の行動を起こし始めた。そして数日後の2月23日、決意表明のブログを書いた。以下に全文を載せる。

【サンディエゴ留学へ】

今この気持ちを逃してしまったら、チャンスは二度とやってこないかもしれない。だから覚悟を決めるためにも書きます。この3日間で起きた出来事です。

もう何度も言っていますが、ぼくは英語が苦手です。最低限のコミュニケーションすらままならない。これまでの海外旅行も、添乗員の仕事も、なんとなくの英語で乗り切ってきました。

でもこの先、海外でも生きていきたい。あるいは、日本にやってくる外国人とコミュニケーションを取れるようになりたい。英語ができたら、大きな武器になる。外国人向けの都内のサイクリングツアーも、もっと自信を持ってできるようになる。

オンライン英会話にも興味があったけど、性格上、現地に行かないときっとモチベーションが保てない。セブ島など、フィリピンでの英語留学にも興味があったから、一昨日の夜、Facebookで、その関係者がいないか聞きました。

今はあまり貯金がない。3ヶ月間程度とはいえ、留学するには、資金的に厳しいし、フリーランスになったばかりで、収入も安定しない。

それでも、行きたい。だから、語学学校の体験レポートを書いて、集客に貢献する代わりに、授業料を割引してもらえないだろうか、という図々しい考えがありました。ダメもとで聞きました。

そしたら、昨日の朝、多摩川をランニングしていると、アメリカの友人からメッセージが届きました。

2014年3月、ぼくは長期休暇を利用して、カリフォルニアへ行きました。ロサンゼルスからサンディエゴまで、200kmを自転車で旅しました。

そのとき、サンディエゴで偶然知り合ったKaoriさんからのメッセージでした。要約すると、以下のような内容でした。

「今サンディエゴの語学学校に勤めていて、中村さんがうちへ来て、この学校やサンディエゴの魅力などを発信してくれるということであれば、授業料を割引してもらえないか、学校側に打診してみます」

という非常にありがたい提案でした。「ぜひお願いします」と言ったところ、かなり好条件のオファーを出してくれ、少し気持ちが揺れました。

「少し」なのは、まだまだ大きな生活費がかかるからです。サンディエゴの物価は高く、家賃や食費などを含めれば、3ヶ月間で結構な額がかかります。

だから、次の手を考えました。なんのツテもないサンディエゴ観光局に今日、連絡をしました。

「元海外添乗員としての経験、ライターとしての能力を生かして、サンディエゴの魅力をPRしたいです。そういう仕事をいただけないでしょうか」

という内容のメールを送りました。

しかし、結果はダメでした。「残念ですが予算が限られているため・・・」と、断られてしまいました。

だけど、これでいい。やりたいことのために戦っている。前に進んでいる。目標に向かって頑張っている人間を、ぼくは応援したい。だからまだ、諦めてはいけない。頑張っている自分を見捨ててはいけない。

当たれるだけ当たってみようと思っていたそのとき、またKaoriさんからメッセージがきました。

「知り合いが経営している語学学校に中村さんのことを話したら、PRの仕事を手伝ってもらうことにはなるけど、3ヶ月間でこの金額にしてくれるって」

ぼくのために動いてくれる人がいたことが、嬉しかった。こんなチャンス、今逃したら、二度と来ないかもしれない。お金がないとか、言ってる場合じゃない。

「できるか、できないか」じゃなくて、「やるのか、やらないのか」

先にそれを決めよう。お金ができたら。時間ができたら。自分への言い訳はいくらでもできるけど、そんなこと言ってたら、いつまで経っても行けない。

お金よりも大事なのは、覚悟だ。覚悟を決めれば、あとは浅知恵でも小知恵でも、きっとなんとかなる。腹をくくろう。

大きな決断をするのは久しぶりだから、今もドキドキしています。だから、ここに書いてしまって、あとに引けない状態にするしかない。自分を追い詰めるしかない。男に二言はない。

サンディエゴへ行く。言ったぞ。
今年4月から6月頃。

そして、もうひとつ決めたのは、「カリフォルニア縦断自転車旅 ツール・ド・カリフォルニア」

ロサンゼルスからサンフランシスコまで、約750kmを自転車で走破したい。
カリフォルニアを疾走したい。やるしかない。

だから、やると決めて、仕事を取りに行く。ちゃんとお金も稼ぐ。

自転車旅の記事を書かせてもらえないか。雑誌やメディアに営業する。

サンディエゴの魅力を紹介するから、航空券を出してくれないか。サンディエゴ直行便を飛ばしている、日本航空やデルタ航空に営業する。

カリフォルニアの自転車事情、バイクシェアリング事情などをレポートして、自転車関連会社に応援していただけないか。

宿泊費を少しでも浮かせられないか、Airbnb社へ。

そのほか、やれることは、何でもやってみる。当たって砕ける。

サンディエゴで、ぼくにできることがあれば、仕事をください!
新しい挑戦、新しい旅へ。

やっぱり怖い。今すぐこのブログ消したい。泣きそう。

でもサンディエゴに行きたいから、諦めない!

ブログ「サンディエゴ留学へ」

このブログを恐る恐るFacebookに投稿すると、すぐにベルリン在住のフリーランスの大先輩、高田ゲンキさんからコメントをいただいた。ありがたいことに、ゲンキさんはのちに、この旅の協賛者になってくださった。

そしてその後、驚きのメッセージが届いた。チェリオの菅さんからだった。

「ツール・ド・カリフォルニア、ライフガードのジャージ着て走らない? 生活費サポートするから、何かライフガードとコラボ企画的な発信を洋太のカリフォルニア紀行の中でできれば」

(生活費を、サポート・・・? え・・・?)

覚悟を決めたら、一瞬でアメリカ行きが決まった。夢を応援してくれる方が現れ、資金の問題までクリアできた。信じられない。本当に、夢でも見ているようだった。

チェリオの協賛が決まった

観光ビザでアメリカへ行くと、最長90日間まで滞在できる。ぼくは2ヶ月間語学学校へ通い、残りの1ヶ月間で自転車旅をすることにした。この自転車旅を、学んだ英語の成果を実践する場にしたかった。

当初はサンディエゴからサンフランシスコまで行って戻ってくる、カリフォルニア周遊の旅と考えていたのだが、どうせならアメリカを縦断したいと思い、サンディエゴからオレゴン州・ポートランドまで走ることに決めた。最終的に約2500km(日本でいえば札幌〜鹿児島くらいの距離)を走破する旅となった。

改めてチェリオの菅さんや社員の方と打ち合わせをしたのち、特注のライフガードジャージを作ってくださった。ぼくはこれを着て、アメリカを縦断する。

ライフガードジャージ

飛び込み営業から、DJIの映像機材をゲット

「アメリカで自転車旅の映像を撮って、日本のみんなにシェアしたい」

そういう想いがあり、映像機材をネットで調べていた。一目惚れしたのが、世界トップシェアのドローンメーカー「DJI」が製造している「Osmo Mobile」という機材だった。

DJIの「Osmo Mobile」

「今度旅行をするときは、これを持っていきたい」

ぼくは勢いで、品川のDJIオフィスを訪ねた。

しかしフロアが巨大で、来訪者用の受付を見つけられない状況だった。だけど、ここまで来たら行くしかない。社員が出入りする小さな扉があったので、思い切ってノックした。

コンコン・・・

・・・

・・・

・・・

ガチャ。

女性のスタッフが出てきた。

「どなたにアポイントでしょうか?」

「大変申し訳ございません。アポイントを取らずに来てしまったのですが、マーケティング担当の方にご相談があり、、、」

必死に説明する。企画書も用意していなかったので、名刺をお渡しし、その場で簡潔に企画の趣旨を話した。

「・・・アメリカで使用する機材のご相談ということですね。かしこまりました。あいにく本日担当者が不在なのですが、こちらの件は伝えさせていただきますので、後日のご連絡をお待ちください」

おそらく難しいだろうが、とにかく、やれるだけのことはやった。

その夜、ぼくは「DJIに飛び込み営業をしてきました」ということをFacebookに書いた。そしたら夜、大学のサークルの後輩からメッセージが届いた。

「DJIに知り合いの方がいて、飛び込み営業の話をしたら興味を持ったみたいで以下のメッセージをもらいました。良かったら連絡してみてください」

なんと、思わぬところから社員さんと繋がることができた。

すぐに連絡を取ると、翌日オフィスで直接お会いできることになり、ぼくはまた品川へ向かった。急展開だ。

お会いした福田さんは、ぼくのやりたいことを気に入ってくださり、「早速このあと、マーケティング担当者に話をしてみます」と言ってくださった。帰り道、福田さんからすぐにメッセージが届いた。

「マーケティング担当者がお会いして話を伺いたい、とのことです」

そういうわけで、ぼくはまた翌日にオフィスへ向かった。飛び込み営業した日から、3日連続で訪問することになったのだ。

3日目は、福田さんのほか、アソシエイトマーケティングディレクターの柿野さん、ソーシャルメディアマネージャーの川中さんが同席した。

「中村さんのことについて、お話いただけますか?」

スライドなどは用いず、5分ほどで自分のこれまでのことと、これからやりたいことについて話した。その結果、その場で協賛していただけることが決まった。

ついに、念願の「Osmo Mobile」を手にすることができた。機材レンタルという形ではあったが、立派な企業協賛である。

飛び込み営業から3日後、DJIからの協賛が決まった

「アメリカでキャンピングカーに乗りませんか?」

また出発直前には、友人のみずきちゃんが広報担当を務めていたご縁で、キャンピングカーのレンタル事業を取り扱う「エルモンテRVジャパン」に協賛していただけることになった。

決め手となったのは、ぼくが以前Facebookに投稿した「サンディエゴ滞在中にやってみたいこと」という写真だった。

アメリカでやりたいことリスト

この中に、

・セドナへ行く(車で)

となんとなく書いていた。

世界的なパワースポットとして知られるセドナは、一度尋ねてみたい憧れの場所だった。しかしサンディエゴから700km以上離れているので、車じゃないと行けない。実際には叶わないかもしれないけど、願望として一応書いておいた。

すると、みずきちゃんはこの一文を見て、「洋太さんにうちのキャンピングカーでロサンゼルスからセドナへ旅してもらって、PRをしてもらおう」と考えてくれたそうで、社内で提案してくれ、「承認が下りました」と連絡をくれた。

アメリカをキャンピングカーで旅できるなんて、これもまた夢のようだった。やりたいことを人に伝えると、何かが起こる。

みずきちゃんとの打ち合わせ時

このような奇跡が立て続けにあり、2017年4月16日、ぼくは渡米した。

(つづく)

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