講演のための思考メモ(19)アメリカ留学に協賛がついた理由
フリーランスの罠
2017年1月に東海道五十三次の旅をやり終えて、2月からはいくつかインタビュー記事を書くお仕事をいただけた。しかし原稿料が安いうえ、修正のやりとりが多くてなかなか脱稿ができず、早くも精神的に参ってしまった。1ヶ月頑張って仕事をしても、10万円にすらならない。「フリーライターはなんて大変なんだ」と現実を思い知らされた。
働き方においても、「何かが違う」と感じていた。2月19日、ぼくはブログにこんなことを書いた。
せっかくフリーランスになったのだから、中途半端なことをやったらいけない。真面目でもバカでもいいから、とにかく振り幅を大きくした方がいい。東海道の旅のように、突き抜ける体験をした方が、おもしろい。未知のこと、わからないことに直面して、そこを突き破っていく。
何か大胆なチャレンジをしたい。「こういうことをするためにフリーランスになったんだ」と思えるような「何か」を。
そんなある日、「ライフガード」などで知られる飲料メーカー「チェリオコーポレーション」専務取締役(現社長)の菅大介さんに食事に誘われた。
「最近どうなの?」と聞かれたので、「せっかくフリーランスになって自由が生まれたのに、今はおとなしく原稿を書いているばかりで、全然やりたいことができていません」と正直に打ち明けた。
「どんなことがやりたいの?」
「海外に行きたいです。英語の勉強もしたいし、また現地で自転車旅とか、人がやらないチャレンジをしたいです」
このときはまだ、具体的にどこへ行きたいのかは漠然としていたが、菅さんから「洋太、お前は突き抜けろ」と言われたことで、ものすごく背中を押された。
決意。サンディエゴ留学へ
ぼくは翌日から、水面下の行動を起こし始めた。そして数日後の2月23日、決意表明のブログを書いた。以下に全文を載せる。
このブログを恐る恐るFacebookに投稿すると、すぐにベルリン在住のフリーランスの大先輩、高田ゲンキさんからコメントをいただいた。ありがたいことに、ゲンキさんはのちに、この旅の協賛者になってくださった。
そしてその後、驚きのメッセージが届いた。チェリオの菅さんからだった。
「ツール・ド・カリフォルニア、ライフガードのジャージ着て走らない? 生活費サポートするから、何かライフガードとコラボ企画的な発信を洋太のカリフォルニア紀行の中でできれば」
(生活費を、サポート・・・? え・・・?)
覚悟を決めたら、一瞬でアメリカ行きが決まった。夢を応援してくれる方が現れ、資金の問題までクリアできた。信じられない。本当に、夢でも見ているようだった。
観光ビザでアメリカへ行くと、最長90日間まで滞在できる。ぼくは2ヶ月間語学学校へ通い、残りの1ヶ月間で自転車旅をすることにした。この自転車旅を、学んだ英語の成果を実践する場にしたかった。
当初はサンディエゴからサンフランシスコまで行って戻ってくる、カリフォルニア周遊の旅と考えていたのだが、どうせならアメリカを縦断したいと思い、サンディエゴからオレゴン州・ポートランドまで走ることに決めた。最終的に約2500km(日本でいえば札幌〜鹿児島くらいの距離)を走破する旅となった。
改めてチェリオの菅さんや社員の方と打ち合わせをしたのち、特注のライフガードジャージを作ってくださった。ぼくはこれを着て、アメリカを縦断する。
飛び込み営業から、DJIの映像機材をゲット
「アメリカで自転車旅の映像を撮って、日本のみんなにシェアしたい」
そういう想いがあり、映像機材をネットで調べていた。一目惚れしたのが、世界トップシェアのドローンメーカー「DJI」が製造している「Osmo Mobile」という機材だった。
「今度旅行をするときは、これを持っていきたい」
ぼくは勢いで、品川のDJIオフィスを訪ねた。
しかしフロアが巨大で、来訪者用の受付を見つけられない状況だった。だけど、ここまで来たら行くしかない。社員が出入りする小さな扉があったので、思い切ってノックした。
コンコン・・・
・・・
・・・
・・・
ガチャ。
女性のスタッフが出てきた。
「どなたにアポイントでしょうか?」
「大変申し訳ございません。アポイントを取らずに来てしまったのですが、マーケティング担当の方にご相談があり、、、」
必死に説明する。企画書も用意していなかったので、名刺をお渡しし、その場で簡潔に企画の趣旨を話した。
「・・・アメリカで使用する機材のご相談ということですね。かしこまりました。あいにく本日担当者が不在なのですが、こちらの件は伝えさせていただきますので、後日のご連絡をお待ちください」
おそらく難しいだろうが、とにかく、やれるだけのことはやった。
その夜、ぼくは「DJIに飛び込み営業をしてきました」ということをFacebookに書いた。そしたら夜、大学のサークルの後輩からメッセージが届いた。
「DJIに知り合いの方がいて、飛び込み営業の話をしたら興味を持ったみたいで以下のメッセージをもらいました。良かったら連絡してみてください」
なんと、思わぬところから社員さんと繋がることができた。
すぐに連絡を取ると、翌日オフィスで直接お会いできることになり、ぼくはまた品川へ向かった。急展開だ。
お会いした福田さんは、ぼくのやりたいことを気に入ってくださり、「早速このあと、マーケティング担当者に話をしてみます」と言ってくださった。帰り道、福田さんからすぐにメッセージが届いた。
「マーケティング担当者がお会いして話を伺いたい、とのことです」
そういうわけで、ぼくはまた翌日にオフィスへ向かった。飛び込み営業した日から、3日連続で訪問することになったのだ。
3日目は、福田さんのほか、アソシエイトマーケティングディレクターの柿野さん、ソーシャルメディアマネージャーの川中さんが同席した。
「中村さんのことについて、お話いただけますか?」
スライドなどは用いず、5分ほどで自分のこれまでのことと、これからやりたいことについて話した。その結果、その場で協賛していただけることが決まった。
ついに、念願の「Osmo Mobile」を手にすることができた。機材レンタルという形ではあったが、立派な企業協賛である。
「アメリカでキャンピングカーに乗りませんか?」
また出発直前には、友人のみずきちゃんが広報担当を務めていたご縁で、キャンピングカーのレンタル事業を取り扱う「エルモンテRVジャパン」に協賛していただけることになった。
決め手となったのは、ぼくが以前Facebookに投稿した「サンディエゴ滞在中にやってみたいこと」という写真だった。
この中に、
・セドナへ行く(車で)
となんとなく書いていた。
世界的なパワースポットとして知られるセドナは、一度尋ねてみたい憧れの場所だった。しかしサンディエゴから700km以上離れているので、車じゃないと行けない。実際には叶わないかもしれないけど、願望として一応書いておいた。
すると、みずきちゃんはこの一文を見て、「洋太さんにうちのキャンピングカーでロサンゼルスからセドナへ旅してもらって、PRをしてもらおう」と考えてくれたそうで、社内で提案してくれ、「承認が下りました」と連絡をくれた。
アメリカをキャンピングカーで旅できるなんて、これもまた夢のようだった。やりたいことを人に伝えると、何かが起こる。
このような奇跡が立て続けにあり、2017年4月16日、ぼくは渡米した。
(つづく)
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