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読書にはタイミングがある

読むのは遅いが、毎日数時間、読書に励んでいる。今年に入ってからようやく10冊を読み終えた。以下にタイトルだけ載せるが、本当に素晴らしい本ばかりだった。

1. 「資本論」NHKテキスト 100de名著
2. 人新生の「資本論」
3. いますぐ書け、の文章法
4. 武器としての「資本論」 
5. ビジネスの未来
6. スマホ脳
7. 令和GALSの社会学 
8. 書くことについて 
9. 現代経済学の直観的方法 
10. Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔

溜まりに溜まった「積ん読」本の中から、「次なる11冊目には何を読もうかな」と考えていたとき、ふと途中で止まっていた塩野七生さんの『ローマ人の物語』はどうかと思い立った。

2年前、ローマ時代の興亡を描いた長編『ローマ人の物語』全43巻を購入し、「全部読むぞ〜」と意気込んでいたのだが、その6巻の途中で止まってしまっていたのだ。

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歴史に名高いハンニバルとの戦い(3〜5巻)を夢中で読み終え、あとは6・7巻さえ読み終えれば、いよいよ8巻から先は『ローマ人の物語』の中でも「最もおもしろい」と言われるカエサルの時代に移っていく。 

しかし、この6・7巻にあたる『ローマ人の物語 勝者の混迷 上・下』が鬼門だった。

時代でいえば、紀元前2〜1世紀。世界史を一切学んだことのなかったぼくには、「グラックス兄弟の改革」という今回のテーマが、よくわからなかった。

まず、「農地法」とか「ラティフンディア(大土地経営)」とかの説明がピンとこなかった。また、この時代のローマは領土が拡大していたにもかかわらず、ローマ軍がどんどん弱くなってきている問題が発生していたのだが、「なぜローマ軍が弱くなっていたのか」の理由がよく理解できず、それで興味が薄れ、ページをめくる手が止まってしまったのが一年前のことである。

だが今日、なんとなく「今ならわかるんじゃないか」という気がしてきて、6巻の最初から2時間ほど読んでいたら、前回は理解できなかった部分が、実にスムーズに理解できて感動した!

つまり、こういうことだ。以下は何も見ずに、自分の理解だけで書いてみたい。

なぜローマ軍は弱くなっていたのか

戦争になると編成される「ローマ軍」というのは、主にローマ市民から構成されていた。そのローマ市民は、普段は農業している人間も多い。戦いになると農作業をやめて戦地へ行き、戻ってきたらまた畑に戻る。そんな風に誇らしく生活していた。

ローマ軍は資産によっていくつかの階級に分けられ、逆に言うと、ある程度の資産を持っていないと、ローマ軍には入れてもらえない。

で、ハンニバルと戦っていた頃のローマ軍には、そこまで資産による格差は大きくなくて、ローマ軍の一番持っている層と持っていない層で、せいぜい10倍以内の格差で収まっていた。現代で言えば、年収200万円〜2000万の人たちがローマ軍になれますよ、というような。

ところが、どうも紀元前2世紀も中頃を過ぎると、その資産格差が500倍近くまで広がってしまったというのだ。それによって、これまでローマ軍に集められていた自作農たちも従軍どころではないし、そもそもローマ軍として認められる資産すら保有できない、ということになってしまった。

どうしてこれほどまでの「格差の拡大」が起きてしまったのか。

それは、経済の構図が変わってしまったからだった。戦争によって領土が拡大したローマは、属領に多くの国有地を手に入れた。それらの土地を、貴族が家族名義で大量に私有地化し、そこで大量の奴隷を安い賃金で働かせ、メチャクチャ安い小麦などの農産物をローマに流通させたのだ。

そしたらもともとローマにいた小麦の生産者たちは到底太刀打ちできず、小麦が全然売れなくなる。そして借金地獄にハマったりして、ローマの街には失業者が溢れたという。

こういう背景があったからこそ、護民官のティベリウス・グラックスは「農地法」というのを制定して、一定以上の領地を資産階級から取り戻して、もともとの農民たちに分配することで、格差の拡大を食い止めようとしたのである。

という一連のことが、今日ようやくわかった。頭の中の理解だけで書いたので大雑把な説明だが、かいつまんでいえばだいたいそういうことだと思う。

読書にはタイミングある

で、どうして今回はスムーズに理解できたかというと、おそらく年明けからマルクスの「資本論」や経済関連の本を読んでいたことが大きい。

格差の拡大の話とか、格差が生まれる構造などを読んで学んでいたから、このローマの時代に起きていたことの本質がすんなりと理解できるようになった。

読書にはタイミングがある。

子どもの頃はよくわからなかったけど、大人になってから読むと「こんなに素晴らしい本だったのか」と感じる本がある。もちろん、その逆のパターンもある。

また、知識の問題だけではなく、心の状況に影響を受けることもある。元気なときに響く本と、落ち込んでいるときに響く本は異なる。

たとえ今読んでいる本に気が向かなくなったとしても、「最後まで読めなかった」「根気がない」などと落ち込むことはない。「今は別の本を読むタイミングなのかも」と思えばいい。すぐ乗り移れるから、「積ん読」も悪くない。

その時は理解できなかったとしても、気楽に構え、また時間を置いて戻ってくればいい。その意味で、今回は良い読書体験になった。

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