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正しい「問い」を見つけてデザインする必要性

デザイン制作している際「これホントに意味ある?」って思うことないですか?多くは「問い」が正しくないことが原因。でもご安心を。「デザイン思考」で解決することがきっとできるはず。

先日、IDEOのティム・ブラウン氏の対談記事を拝見し「全くもって共感!」という感じだったので同業者のデザイナーさんに共有したい。
ついでに、参考になるかわからないけど僕なりに解釈した「デザイン思考」の正しい「問い」の見つけ方も最後にオマケ的に掲載する。

「IDEO ティム・ブラウンに問う。経営者は、「デザイン思考」を取り入れるべきか?」
http://www.hakuhodo.co.jp/marketing-executive/special03.html


「これホントに意味ある?」の正体

デザイン案件において、依頼される解決作(デザイン成果物)と、それによって解決されるはずの問い(課題)とが不整合を起こすことがある。
例えば、クライアントの販促課題を解決するべきはずのデザイン施策が思うような結果を得られないとか、企画を練る段階で「あれ?」と違和感を感じるとか。

「んー、、、言いたいことはわかるけど意味ないかも」みたいな。

何故こんな不整合が起こるのか。
そのヒントをティム・ブラウン氏は先の対談の中で次のように語っている。

デザイン思考に関して、多くの人が誤解しているのですが、デザイン思考とは解決策を探すためだけのものではありません。解決策を探すのと同じレベルで、正しい「問い」を見つけることがデザイン思考の真骨頂です。正しい「問い」を見つけること、それ自体がきわめてハイレベルなクリエイティビティを要するプロセスです。
——ティム・ブラウン

正しい「問い」を見つけること。

おそらくこの部分に多くの時間を割いていないのではないかと思う。
「これホントに意味ある?」の正体は解決策(デザイン成果物)と問い(課題)との不整合による違和感だ。


正しくない「問い」は何故起こるのか

何故この不整合が起きてしまうのか。要因の1つとして「顧客視点よりもクライアント視点を多く実装してしまう」ことが挙げられる。
この点についてもティム・ブラウン氏は次のように語っている。

優れた問いを効果的に見つける方法は、顧客の視点に立つことです。
——ティム・ブラウン

誤解を恐れずに言うと、クライアントの言うことは「間違いではないけど、多くの場合において正解でもないよ」だと思う。

これはサービスや商品を提供する側(クライアント)と、それを利用する提供される側(顧客)で注視するポイントが異なるために発生する必然の齟齬みたいなもので、それ自体は当たり前のことだと認識しておくくらいがちょうど良い。

ところが、デザインプロセスの中においてはどうしてもクライアントとのコミュニケーションばかりが密になりがち。そのやり取りの中で顧客視点がどんどんぼんやりしていくような感覚は皆さんも経験しているところかと。

では、正しくない「問い」正しい「問い」へと導くにはどうすれば良いか。ここはティム・ブラウン氏の言うとおり顧客の視点に立つというシンプルなアプローチがとても有効だと思う。


正しい「問い」へ導くファシリテートの必要性

顧客の視点に立つにはどうすれば良いのか。
ティム・ブラウン氏はこう語っている。

外へ出て顧客を観察したり、時にはリサーチをします。
——ティム・ブラウン

要はクライアントとのコミュニケーション分、顧客ともコミュニケーションを取りなさい、ということを示唆している。

ここでデザイナーが行うべきことは提供する側・提供される側双方とのコミュニケーション比率を均等にする作業だろう。何なら、提供される側(顧客)へ気持ち振るような感覚かもしれない。
このバランスを取りながら解決へとファシリテートするタスクこそがデザイナーの重要な仕事とも言えるし、ここ数年で自分の中で一番面白くやり甲斐を感じるデザインプロセスでもある(余談ですが)。

もう少し深く話しを進めると、ティム・ブラウン氏の著「デザイン思考が世界を変える」では顧客視点に立つための要素として3つを挙げている。

洞察、観察、共感

洞察は観察によって得られた生の声・行動から文字通りインサイトを発掘する作業。観察はデザインの対象を実際に見たり感じたりする作業。そして共感は観察対象になりきって周囲で起こることに想像を張り巡らせる作業だ。


観察に出られなくても大丈夫!

僕は残念ながら、直接クライアント先の顧客を観察できるような恵まれた環境にはないのでデザインの初期の段階では洞察、観察、共感プロセスの精度に不安を残すことが多い。とはいえ、この課題感は多くのデザイナーにも共通する部分だと思う。

なので、普段から提供される側(顧客)になりきって想像を張り巡らせたり、提供される側の情報を素直にクライアントへ尋ねるように努めている。

実際、「どれくらい売れてるんですか?」「原価率って幾らですか?」「顧客の課題感ってそこじゃないと思うんですけどー」など、営業さんだと訪ねるに躊躇する部分もデザイナーという免罪符を使ってズケズケと聞くようにしている。笑

ここがキモなのだけど、こうしてかき集めた顧客視点のインサイト情報を早い段階で一度クライアントに投げかけてみること。

この1クッションを置くことで多くの場合、クライアントがどしりと構える提供する側の意識を提供される側へとスライドさせることに成功する。少なくても「そういう側面もあるよね」、と何かしらの共通認識を得られるはずだ。
そうなれば結果的にデザイナー、クライアント双方が提供される側への共感ポイントを共有し、結果的に良いデザインアプローチへと導くことに繋がる
クライアントと直接お話できない環境であれば、営業さんがその代わりとなるはず。


まとめ

数年前、デザイン案件において依頼される成果物と、その成果物によって解決されるはずの課題(=問い)の多くに不整合が起こることで悩んでいた。
課題(=問い)を解決するため、クライアントの要求とは異なる成果物を考えたり、それをコミットするために多くの意識と労力を割いた。

それはとても頭を使うし難しい。つまり、解決策を見つけるより課題(=問い)そのものを見つけることのほうがはるかに頭を使うと常々思っていた。

そんな折り、IDEOの「デザイン思考」に出会った。

僕がIDEOの「デザイン思考」に共感するのはイノベーションを起こしたいからではなく、課題(=問い)そのものを見つける手がかりとなる助言が多く語られているからだ。なんなら正しい「問い」の発見ができればデザイン思考のフレームワークによって「答え」は比較的簡単に導くことができると感じている。

「デザイン思考」という言葉に全てを委ねるのは危険だ。

でも、このアプローチの有用性は多くのデザイナー仲間に知ってもらいたいと思う。

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