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一番金ピカなことは何?〜『宇宙兄弟』名シーン解説vol.1〜

私の人生の中で、おそらく何度も読み返すくらい好きな漫画の1つが、
小山宙哉『宇宙兄弟』です。その中でも時々無性に読み返したくなる名シーンを、勝手に不定期で語りたいと思います。ちゃんと続くかしら。笑

『宇宙兄弟』あらすじ

ドーハの悲劇の年に生まれた兄・六太(ムッタ)と、野茂英雄がメジャーでノーヒットノーランを達成した年に生まれた弟・日々人(ヒビト)。少年時代のある日、2人はUFOのような物体が月に向かって飛んでいくのを目撃し、兄弟で宇宙へ行こうと誓い合う。

数年後、ヒビトはNASAの宇宙飛行士になり、日本人として初の月面ミッションに任命されていた。その頃ムッタは、あることから会社の上司に腹を立て、怒りに任せて頭突きをしてしまったがために会社をクビに。栄光の階段を着々と歩み続けた弟を尻目に毎日を送っていたが、ヒビトが独断で宇宙飛行士選抜試験にムッタの願書を出したことをきっかけに、ムッタの宇宙飛行士への挑戦が始まるー。

#2 『俺の金ピカ』

さてさて、あらすじはほぼ#1の内容なのですが、続く#2から名シーンがバンバン生まれていきます。

書類選考を通過したムッタだったが、1次試験を受けることにあまり気乗りがしないでいた。ある日、小さい頃から遊びに兄弟で行っていた、天文学者の”シャロンおばさん”を訪ねる。ムッタは「俺程度の人間はふるい落とされるってわかってる。315人が試験を受けるけど、宇宙飛行士になれるのなんか2人か3人だよ」と弱音を吐く。二の足を踏んでいる様子を見たシャロンは、「久しぶりにセッションしようか」と提案する。
兄弟は小さい頃、シャロンと3人でそれぞれの楽器でセッションをしていたのだが、「もう忘れちゃったよ」とやはり気乗りのしないムッタ。

そこでシャロンは、昔のムッタの様子を語る。

シャロン「ここにトランペットがあります。ピアノもあります。ギターも太鼓も、ハーモニカもあります。どれをやってみたい?」
ムッタ少年「全部!」「だって全部やってみなきゃ決められない」
シャロン「ーそれであなた、その中でなぜかトランペットを選んだのよ。どうしてって訊いたら…」
ムッタ少年「この中で一番…音が出にくい」
シャロン「昔のあなたってそんな子だったよ。なんにでもどんどん挑戦して、難しいことを選んだ」

シャロンは優しく、昔のムッタを懐かしみながら語ります。
ムッタは言い訳するように「トランペットを選んだのは、単に一番金ピカだったからじゃないかなぁ」と返します。

シャロン「それならそれで良いのよ。今のあなたにとって…一番の金ピカは何?」「上手くいかなくてもいいし、間違ってもいいのよムッタ。まずは音を出して。音を出さなきゃ、音楽は始まらないのよ


夢を思い出すということ

大人になって、今更子ども頃の夢を叶えようと思うことは皆無になりました。というか、あんまり夢を持ったこともありませんでした。でも、大人になって、勉強し始めて、「こう生きたい」「これは死ぬまでにやってみたい」と思うことが少しずつ増えてきたように思います。

シャロンの言葉は「俺の金ピカってなんだったんだっけ?」といつも自分の心に振り向かせてくれます。バタバタと過ぎていく毎日の中で、自分の進む方向の確認作業ができると、また1日を新しい気持ちで過ごすことができると思うのです。

「今のあなたにとって、一番の金ピカはなに?」

ふとした瞬間に聴きたくなる名言の一つです。

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